硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

逮捕者。

2022-10-21 17:20:30 | 日記
その人は、子供のように嘘をつく人であった。自分のついた嘘を嘘で固める事の出来ない人であった。しかも、その事に気が付かない人であった。
誰にでも話しかける事が出来る人で、柔和で愉快な印象なので、話は聞きやすく理解しやすいが、話のつながりに矛盾が生じる事と、情報量とワードが乏しいので、2,3質問をすると返答に窮してしまいがちであった。

そのような違和感を抱いていたが、同じ職場で働く人であり、年金受給者の年齢に達している人なので、気を悪くさせてはいけないと、出かかった言葉はすべて飲み込んでいた。

ある日、その人から、身体の治療のため長期休暇しますと職場へ電話があった。
しかし、次の日、警察から当人の身元確認の電話が入った。

その人は、取り調べでも、柔和で愉快に話していると思われるが、話している相手は警察官であり、疑う事が仕事の人であるので、子供のように嘘をつくその人は、冷たい拘留所で、ここでは嘘が通らないと、気づいたのではないだろうか。

大人だから、人生の先輩だからと言葉を飲み込み続け、その結果、失望させられた僕は、冷静に考えられるようになるまでの期間を経て、今ようやく、その人の言動を振り返って改めて考えてみて、その人は、物心ついた時から、自身を弱さを露呈させないために、出会うすべての人に嘘をついて生きてきたのではと思った。