「朱蒙」第41話より クムワ王とテソの会話。
漢が長安へ人質を送れと要求してきたと、そう聞いた。事実なのか?
はい。
いかに摂政とて、かような重大事は、まず私に相談すべきであろう。
よく考えたうえで、申し上げるつもりでした。
それで、よく考えたのか。
はい。
どうするつもりだ。
人質を出すことにします。
お前には、自尊心がないのか。
自尊心ならば、むろん、私にとてあります。
ならば、なぜ、人質など送るのだ。それは、プヨが、漢の属国であると、自ら認めることだぞ。
王様。自尊心にこだわっているときではありません。
漢の軍はいま、先の戦の報復に出る機会を、虎視眈々と伺っているのです。
私は戦を避けるために、政略結婚さえも受け入れました。
もし、人質一人で数千、数万の命が救われるのなら、ためらう理由はありませぬ。
王様。自尊心で戦が防げるでしょうか。
形のない、曖昧なものより、私は実利を取ります。
戦を避けるためにお前がひとつ何かを渡せば、漢はきっと二つ目を要求してくる。
そのときも、お前は平和を口実にまた引き下がるだろう。一歩、また一歩。
そして気がつけば、もはや引くに引けぬ、断崖に立たされているのだ。
最後は、いったい何を渡す?
プヨをよこせと言われたら、従うのか。
命をよこせと言われたら、差し出すのか?
実利という甘い言葉の影に潜む刃は、テソ、お前の、その目にはなぜ見えない?
漢が長安へ人質を送れと要求してきたと、そう聞いた。事実なのか?
はい。
いかに摂政とて、かような重大事は、まず私に相談すべきであろう。
よく考えたうえで、申し上げるつもりでした。
それで、よく考えたのか。
はい。
どうするつもりだ。
人質を出すことにします。
お前には、自尊心がないのか。
自尊心ならば、むろん、私にとてあります。
ならば、なぜ、人質など送るのだ。それは、プヨが、漢の属国であると、自ら認めることだぞ。
王様。自尊心にこだわっているときではありません。
漢の軍はいま、先の戦の報復に出る機会を、虎視眈々と伺っているのです。
私は戦を避けるために、政略結婚さえも受け入れました。
もし、人質一人で数千、数万の命が救われるのなら、ためらう理由はありませぬ。
王様。自尊心で戦が防げるでしょうか。
形のない、曖昧なものより、私は実利を取ります。
戦を避けるためにお前がひとつ何かを渡せば、漢はきっと二つ目を要求してくる。
そのときも、お前は平和を口実にまた引き下がるだろう。一歩、また一歩。
そして気がつけば、もはや引くに引けぬ、断崖に立たされているのだ。
最後は、いったい何を渡す?
プヨをよこせと言われたら、従うのか。
命をよこせと言われたら、差し出すのか?
実利という甘い言葉の影に潜む刃は、テソ、お前の、その目にはなぜ見えない?