
無月かな佐助のごときひとが欲し 津森延世
さまざまな「佐助」がいると思うけど、僕など佐助といえば猿飛佐助しか浮かばない。無月の夜に甲賀忍者佐助を思うのはよくわかる。なんとなく巻物を咥えて出てきそうな雰囲気があるから。しかし、作者がどうして佐助のようなひとが欲しいと思うのかが謎であり、この句の魅力なのだ。作者は女性だから、女として佐助のような男がいたらいいなと思っている。友人としてなんてつまらないから、恋人として。神出鬼没で身がかろやかで、手品どころか忍術を使える男。今でいうとおもしろくて飽きない男を作者はお望みなのだ。佐助より佐助が仕えた真田幸村の方が男としては上ではないかなどと思うが幸村の恋人だといざというとき自刃せねばならない。やっぱり佐助くらいでいい。美人の超人気女優が漫才タレントとくっつくのもその伝かもしれない。『新日本大歳時記』(1999)所収。(今井 聖)
【無月】 むげつ
十五夜に、雲のために名月を見ることができないこと。雨月を含めていうこともある。見えないとはいえ、
心にはくっきりと月が浮んでいる。
例句 作者
無月の浜白浪ありてさびしからず 大野林火
豆選れば波の音して無月なり 猪口節子
雨の月どこともなしの薄あかり 越人
欄干によりて無月の隅田川 高浜虚子
舟底を無月の波のたたく音 木村蕉城
べうべうと汐引く川の無月かな 飯田龍太
めいめいに菓子とりまはす無月かな 龍岡 普
湖のどこか明るき無月かな 倉田紘文
笛の音の美しかりし無月かな 高野素十