果物料理と果物食品加工

ビタミン・ミネラルに果物の仄かな香りに目覚める フルーツソムリエ

仏教小話 

2011-05-27 11:49:58 | 日記・エッセイ・コラム
 

仏教小話

「あゝそうか!」

 寺の門前の商人の娘が、未婚なのに男児を産んだ。父親が怒りこれは一体この子は誰の子じゃとせっかんした。娘は白状して「白隠和尚さんの児だ」と言った。
父親は烈火のごとく怒って赤ん坊を抱いて寺に駆け込んで、「こら、狸坊主、貴さまの児じゃ、大きくせい」と生んだばかりの赤ん坊を突き出した。和尚はさっと両手をのばしただ「あゝそうか」と言ってそれを抱き取った。それから、世間のうわさが生仏のような和尚は門前の娘に児を産ませ、引き取って育てるそうな、と和尚は毎日、泣く赤ん坊の乳をもらいに門前に立つや寺は悪評の上、火が消えたように参詣者は無くなり寂しくなる。

 和尚はそんなことに一向に愚痴をこぼさず、児の為に乳を貰って村を歩き回って、罪もない児を育てるのに一生懸命だった。半年ほどばかり月日は流れて行った。

 ある夜、例の如く寝る前の乳をもらいに白隠が門前に出た。
月冴えた夜だった。焼け付くように泣くわが児の鳴き声を聞くにたまらなくなった娘は父親に「あの児は和尚さんの子でありません。お父さんは何時も和尚さんを仏さまのように敬っておられるので和尚さんの児といえば私の不貞を許してくださるかと思ったのです」と、本当の若い相手の名前を挙げてた。父親は驚き眼色なしである。
 早速お寺へ走って泣きながらお侘びをして、どうかその児を戻して下さいというと、白隠和尚は「あゝそうか」とだけ言って少しも怒ったようす無く赤ん坊を手渡したという。

作者不詳






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