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乙女高原での訪花昆虫調査 2022年7月3日 野外調査

2022-07-03 07:01:57 | 最近の論文など
乙女高原での訪花昆虫調査 2022年7月3日

 5月から始めた訪花昆虫の調査も3回目となった。7月は後半は私が予定があるので前回(6月18日)と少し間が詰まったが7月3日に行うことになった。このところ全国的に猛暑で40度を超えるところさえあり、甲府でも猛烈に暑かったようだった。塩山駅に着くとやや曇りで、雨が降ったらしく地面が少し濡れていた。いつものように植原さんが車で迎えに来てくださった。今日は井上さんと五味父子が参加してくれるということだった。道中、ヤマボウシ、ウツギ、ノイバラなど白い花が目についた。東京よりは1ヶ月ほど遅いようだ。
 10時前に乙女高原について早速3班に分かれて調査を始めることにした。

植原さんと五味父子

 ごく弱く雨がパラつく曇天だった。天気が怪しいので、最低限ここは調べようというコースを選び、他のコースは「できたらやる」ということにした。

調査コース


乙女高原

 先月多かったミツバツチグリ、キジムシロはなく、アヤメ、ニガナ、ヤマオダマキが目についた。そのほかヤマハタザオ、オオヤマフスマ、ノアザミがあるほか、レンゲツツジが少し残っていた。全体としては花は少なめだった。私としてはヤマオダマキのあの複雑で距がある花にマルハナバチが来ているところをみたいと思った。

 1本目のDコースの往路では花はある程度あったのだが、少し雨がパラパラ降ってきたせいで昆虫は見られなかったが、復路では日が射したのでキンポウゲやニガナに甲虫(細長いカミキリモドキみたい)やヒラタアブが見られるようになった。

キンポウゲと甲虫

ニガナとハムシ

 ここにはアヤメが多かったが、最初のうちは昆虫が見つからなかった。しかし明るくなったらセセリチョウが来ているのを見つけた。

アヤメにセセリチョウ

 その後でマルハナバチが花の中に潜り込むところを見て嬉しかった。小学校の時にこの説明があったのを覚えている。面白いと思って学校の近くにあったキショウブを見ていたが昆虫は来ず、そのまま見ないでいたので、それが見れて嬉しかった。

アヤメのおしべの下を潜るマルハナバチ

 アヤメの花の「綾目」はこの奥に蜜があるというシグナルそのもの(蜜標)だし、そこに昆虫が着地して潜る時に上からかぶさる花柱の下に潜り込むというのに興味を惹かれた。後で調べたら花柱の内側(天井)に花粉があって昆虫の背中に花粉がつくようになっているとのこと、観察しそこなった。

 次のFコースではヨツバヒヨドリが多くなったが、まだ蕾状態で昆虫は見なかった。

ヨツバヒヨドリ

またノアザミも目につくようになり、これにはさっきの細い甲虫と、別の短めのハムシが来ていたし、記録が終わってからマルハナバチも来ていた。

ノアザミにヒラタアブ

ノアザミにハムシ

ノアザミにマルハナバチ

Gコースも同じような感じだったが、シモツケが一株だけあって、ヒラタアブと甲虫がいた。

シモツケにヒラタアブ

全体にヤマオダマキが多かった。控えめな卵黄色できれいだった。

ヤマオダマキ。上に伸びるのが距

 この花の作りは複雑で、昆虫は花の下にぶら下がって、部屋に別れた筒状の花の奥に進んで吸蜜するといわれている。

ヤマオダマキをしたからみる

 その奥には先がカールした距があってそこに蜜があるというのだが、本当にこんな細長い距の先まで口が届くのだろうかと不思議な気がした。距の部分をとって舐めてみると確かにほんのりと甘かったので、蜜があることは確かなようだった。


 花をよく見ようとバラしてみると中にたくさんのおしべがあった。ただし明らかに2タイプがあって、内側にたくさんある黒っぽいおしべには花粉が見えたが、それとは明らかに違う黄色く扁平で大きめのおしべが外側にあった。これはどういうわけかわからない。

ヤマオダマキのおしべ

 プロットの写真を撮影してお昼前になったので、ロッジに戻ることにした。

 小雨が降ったり止んだりしていたので、ロッジの中でお弁当ということいなった。井上さんが持ってきてくださったキュウリとスモモがおいしかった。このところの暑さの話題になったので小学4年生だという五味君に話しかけた。
「あのね、私が君くらいの時、それまで知らなかったほど暑い日があったの。それで、その日のラジオを聞いたら<今日は30度になりました>というので<30度というのはすごい暑さなんだな>と思ったんだよ。その頃、イギリスで30度の日があったら人が死んだというので<白人は暑さに弱いんだ>と思ったね」
「今じゃ30度なら特に暑いとは言えないよね。これから氷山が溶けたり、地球全体が大変なことになるんじゃない」
「そうだよ、こんな時に戦争してる場合じゃないよね」
と雑談は続く。そうこうしていると雨が降ってきたので、午後できたらやろうと言っていたいくつかのコースはやめることにした。

 せっかくなので後でじっくり観察しようと主な花を採集したくて傘を持って草原を歩くことにした。C,J,Kと歩かなかった方に行ったが、比べてみると、私が歩いたD,F,Gの方が花が多かったことがわかった。
そうして歩いていると井上さんと植原さんも歩いてきたので合流した。井上さんがF, Gの方に行きたいというのでご一緒することにした。そうしたら私がこれまで見たことのない花を3種も見つけて紹介してもらった。地味な花なので調査で歩いたのに完全に見落としていた。井上さんは毎年確認しているからと謙遜しておられたが、その観察眼の凄さに舌を巻いた。貴重な花なのでここには書かないでおこう。

井上さん、高槻
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