木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

幸せの太鼓を響かせて

2011年06月15日 | 映画レビュー
幸せの太鼓を響かせて~INCLUSION」を観る。

知的障がい者によるプロの和太鼓集団「瑞宝太鼓」を追ったドキュメンタリーである。
かなり感動的な題材を扱っているのであるが、カメラはむしろ淡々とメンバーの日常を追う。
メンバーも気負いもせず、ただただ、太鼓の毎日に没頭しているように見える。
ただし、プロというからには、観客からお金を取れるような演奏をしないといけない。
プロで暮らしている太鼓集団は少ない。
果たして大丈夫だろうかと見ていたのだが、心配は杞憂だったようだ。
「瑞宝太鼓」は、プロとして活動し始めたのが、2001年からだ。10年以上の活動歴は伊達ではない。
本来の意味での独立プロではなく、就労継続機関A型事業所「瑞宝太鼓」に勤務して給与を貰っているようなのだが、プロに変わりはない。
テクニックがアマチュア並みだったら、ここまで継続できてはいない。

この映画を観て印象的だったのはメンバーの演奏時の楽しそうな表情である。
演奏も、単に生活の糧を得るため、とだけ考えたら、どれだけ詰まらないだろう。
翻って、仕事を心から楽しんでいる人たちというのは、どれだけいるのだろう。
今回の震災で、プロ野球開催の時期が議論されたとき、どこかの選手が「僕たちを観て、元気が出るようなプレーがしたい」と言っていた。元気が出るようなプレーってどんなプレーだろう。
プロの選手は一生懸命やるのは絶対条件であって、それだけでは観る人は感動しない。
「瑞宝太鼓」のメンバーが演奏時に見せる輝くような表情は、損得とか、計算などを超越している。
くしくもリーダーの岩本さんがMCで話す「僕たちは計算するとか、ものを数えるということは得意ではありませんが、太鼓を一生懸命に叩きます」と言っていたのは、その通りだと思う。
瑞宝太鼓のメンバーはプロといっても、豪邸に住めるほどの報酬を貰っているわけではない。むしろ、逆である。だけれども、幸せというのは収入の多寡だとか、地位だとか名声だとか、そんな世俗的なものに必ずしも比例しないのだということを教えられたように思う。

観終わった後に、リーダーの岩本さんだとか、副リーダーの高倉さんたちと古くからの友人であるかのような錯覚に陥った。

劇場で販売されているサントラ盤「INCLUSION」もお勧め。収録時間は短いが、時勝矢一路さんの手になる音楽はやさしく、ピアノと太鼓の音が心に沁みる。

お勧め度★★★★(★5つが満点)

「幸せの太鼓を響かせて」HP
瑞宝太鼓HP
瑞宝太鼓の演奏YOUTUBE
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