木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

戦火のナージャ

2011年06月02日 | 映画レビュー
ロシアのニキータ・ミハルコフ監督・主演の「戦火のナージャ」を観た。
冒頭の収容所の場面、巧みなカメラワークにより映画に惹き付けられる。
しかし、次のスターリンが出てくる場面になると、何が何だか分からなくなる。
このモヤモヤ感は、映画最後まで、ずっとつきまとうことになるのだが、とにかくストーリーが分かりにくい。
それもそのはずで、この映画は「太陽に灼かれて」の続編で、前編を観ていることを前提に作られているようだ。
主人公のコトフ大佐の境遇も全く説明されることなく進められていくし、ストーリーは分かりにくい、というよりも、全く分からない、といった方が近い。

配給会社は「お父さん生きていますか?」のコピーとともに、「スターリン大粛正から、第二次大戦へ。激動の時代、広大なロシアの草原を、ナージャは生き別れた父を捜す旅に出る」と案内しているが、このコピーを期待して映画を観ると、肩透かしを食う。かなり、配給会社も苦しかったのだと思う。

次々にエピソードが挿入されて、ちっともナージャが父探しの旅の場面が描かれない。
「早く探せよ。時間がなくなるぞ」と観ているこちらがハラハラするほどである。
そんな中、途中から気が付いたのであるが、この映画は父親探しという大筋を借りて、戦争中に起こる理不尽な事柄を描いているのだと思った。悲惨なエピソードも監督独自のユーモアセンスを交えて描かれる。
2時間30分の長編で、ストーリーが分からないのに、退屈せずに観られたのは、この映画がメインストーリーよりも、数々の短いエピソードから成り立っているからである。
赤十字の船に向かって戦闘機から大便を落とそうとするパイロットとか、身長180cm以上の役に立たないロシアエリート集団だとか、笑ってしまう。
ストーリーに関して言えば、実の娘を出演させるために、父親探しという粗筋を作ったに過ぎないとすら思える。

とにかく、この映画は「太陽に灼かれて」を観ていないことには、話にならない。「戦火のナージャ」は3部作の真ん中ということだが、前作が16年前。一体、映画が完結するには何年かかることやら。


オススメ度 ★★(満点は★5つ)
*前作を観ていると評価はかなり違うでしょう。



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