壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

結の精神――泉崎村

2009年06月19日 21時08分01秒 | Weblog
 梅雨とともに、農家には忙しい田植え時がやってきた。
 麦刈りがすむと、休む間もなく、田を耕し水を引いてならし、田植えが始まる。21世紀の今日でも、田植えはやはり、国民の生命がかかった大切な行事である。
 田植えは、苗代で育てた稲の苗を、田に移す作業である。大昔は、田に直接籾を蒔く直播きをしていたらしいが、奈良時代に、移植する方法がとりいれられ、平安時代には一般化し、現在に至っている。

        田を植ゑるしづかな音へ出でにけり     草田男

 梅雨どきの墨絵めいた田の中に並ぶ早乙女の笠、投げ配られる早苗の描く波紋、叱られて子供の引く田植縄など、どれ一つを取っても絵になる。植え終わったあとには、神聖なまでに正しい苗の並びの植田に、夕風が吹き渡り、数日の後にはもう緑の色が深く、青田という感じになってくる。
 しかし、水面すれすれに体を曲げて、苗を植えてゆく手植えは重労働であり、「結(ゆい)」という村の共同作業が中心であった。

  「村に住むすべての人が、お互いに助け合い手を取り合って、仲良く生活
  していけるよう、むらづくりの基本理念を『結の精神』と定め、相互扶助
  の精神で、むらづくりを進めるとともに、村に住むすべての人が健康で、
  安心して一生涯暮らしていけるよう、むらづくりの目標を『健康で心豊か
  な福祉の里いずみざき』とし、村政各分野における施策を総合的に推進し
  て参りました。
   村が分譲する『天王台ニュータウン』へ新たに住まう方々にも、村とし
  て『安心して楽しんで貰える暮らしづくり』のため様々な努力を致してお
  ります。」(『田舎暮らしの理想郷 泉崎村』より)

 「結の精神」を基本理念として、“むらづくり”を進めているのが、福島県泉崎村である。白河丘陵と須賀川盆地に挟まれた泉崎村は、福島県内でも比較的温暖な地域で、冬の積雪も少ないという。
 上記は、泉崎村が分譲する「天王台ニュータウン」の宣伝用パンフレットから、“村長あいさつ”のほんの一部分を引いたものである。
 小林日出夫村長は、「天王台ニュータウン」をPRするために、泉崎村から東京・銀座まで歩き通した方である。マスコミでも取り上げられたので、ご存じの方もおられるだろう。
 変人も“田舎暮らし”に興味があるので、小林村長とは何度かお目にかかっている。非常に精力的、かつ高潔な方で、この人が村長なら泉崎村はさぞかし、と思わせる人物である。
 “田舎暮らし”をお考えの方には、ぜひ泉崎村を!とおすすめしたい。
 泉崎村では、海外や国内からの「インターネット村民(e-村民)」を募集している。詳しくはホームページ(http://www.e-sonmin.jp/)をご覧いただき、登録してみては如何。変人ももちろん「e-村民」である。いつか泉崎村の、烏峠のよく見えるところに……。


      田を植ゑて烏峠の日暮れかな     季 己