数少ない冬の花の中でも、清楚で美しいものは、石蕗の花であろう。
「石蕗」は、「つわ」・「つわぶき」と二様の読み方がある。
石蕗は、キク科に属する常緑の多年草である。温暖な地方の海辺に近い山裾などに自生している。けれども、極めて普通に、庭園などにも植えられている。
花は、菊と同様の頭状花で、茎や葉も共に蕗に似て少し堅く、てらてらとした艶がある。
若葉は、淡い褐色の綿毛に包まれているが、生長するにしたがい、毛は抜け落ち、ちょっと腎臓形の広く滑らかな葉となる。
まだ若いうちの葉柄は、蕗と同様に食べられるし、小さな若葉を取って、熱い灰の中に埋め、柔らかくなったものを、腫れ物の上に貼りつけると、どんな難しい腫れ物でも、膿を吸い出す効果がある、と祖母によく聞かされたものだ。
さびしさの眼の行く方や石蕗の花 蓼 太
十月中旬から十一月にかけて、四、五十センチの花柄を抽き出し、鮮やかな黄色の、菊に似た花を咲かせる。
濃緑の艶やかな葉と、冬の花には似ぬ鮮やかな色彩の花とが、弱い冬の日差しの中に、くっきりと浮かび上がって、ことさらに心強い感じがする。
園芸家の中には、石蕗を、冬の七草の一つに数える人もいるという。
鉢植えとしては、あまり印象が強すぎていけないが、庭石の周りや蹲(つくばい)の脇などに植えると、この花の強さが、石の重々しさとマッチして、何ともいえぬ気品をかもし出す。
時には、黄色の円斑のついている“黄紋石蕗”もある。
だんまりの人とうとまれ石蕗の花 季 己
「石蕗」は、「つわ」・「つわぶき」と二様の読み方がある。
石蕗は、キク科に属する常緑の多年草である。温暖な地方の海辺に近い山裾などに自生している。けれども、極めて普通に、庭園などにも植えられている。
花は、菊と同様の頭状花で、茎や葉も共に蕗に似て少し堅く、てらてらとした艶がある。
若葉は、淡い褐色の綿毛に包まれているが、生長するにしたがい、毛は抜け落ち、ちょっと腎臓形の広く滑らかな葉となる。
まだ若いうちの葉柄は、蕗と同様に食べられるし、小さな若葉を取って、熱い灰の中に埋め、柔らかくなったものを、腫れ物の上に貼りつけると、どんな難しい腫れ物でも、膿を吸い出す効果がある、と祖母によく聞かされたものだ。
さびしさの眼の行く方や石蕗の花 蓼 太
十月中旬から十一月にかけて、四、五十センチの花柄を抽き出し、鮮やかな黄色の、菊に似た花を咲かせる。
濃緑の艶やかな葉と、冬の花には似ぬ鮮やかな色彩の花とが、弱い冬の日差しの中に、くっきりと浮かび上がって、ことさらに心強い感じがする。
園芸家の中には、石蕗を、冬の七草の一つに数える人もいるという。
鉢植えとしては、あまり印象が強すぎていけないが、庭石の周りや蹲(つくばい)の脇などに植えると、この花の強さが、石の重々しさとマッチして、何ともいえぬ気品をかもし出す。
時には、黄色の円斑のついている“黄紋石蕗”もある。
だんまりの人とうとまれ石蕗の花 季 己