壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

石蕗の花

2008年11月04日 21時23分47秒 | Weblog
 数少ない冬の花の中でも、清楚で美しいものは、石蕗の花であろう。
 「石蕗」は、「つわ」・「つわぶき」と二様の読み方がある。
 石蕗は、キク科に属する常緑の多年草である。温暖な地方の海辺に近い山裾などに自生している。けれども、極めて普通に、庭園などにも植えられている。
 花は、菊と同様の頭状花で、茎や葉も共に蕗に似て少し堅く、てらてらとした艶がある。
 若葉は、淡い褐色の綿毛に包まれているが、生長するにしたがい、毛は抜け落ち、ちょっと腎臓形の広く滑らかな葉となる。
 まだ若いうちの葉柄は、蕗と同様に食べられるし、小さな若葉を取って、熱い灰の中に埋め、柔らかくなったものを、腫れ物の上に貼りつけると、どんな難しい腫れ物でも、膿を吸い出す効果がある、と祖母によく聞かされたものだ。

        さびしさの眼の行く方や石蕗の花     蓼 太

 十月中旬から十一月にかけて、四、五十センチの花柄を抽き出し、鮮やかな黄色の、菊に似た花を咲かせる。
 濃緑の艶やかな葉と、冬の花には似ぬ鮮やかな色彩の花とが、弱い冬の日差しの中に、くっきりと浮かび上がって、ことさらに心強い感じがする。

 園芸家の中には、石蕗を、冬の七草の一つに数える人もいるという。
 鉢植えとしては、あまり印象が強すぎていけないが、庭石の周りや蹲(つくばい)の脇などに植えると、この花の強さが、石の重々しさとマッチして、何ともいえぬ気品をかもし出す。
 時には、黄色の円斑のついている“黄紋石蕗”もある。


      だんまりの人とうとまれ石蕗の花     季 己