すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

イスラム国映像:目には目を 歯には歯を 焼き傷には焼き傷を

2015-02-05 00:25:49 | Weblog
 イスラム国側からヨルダン人パイロットの焼殺映像が流された。これには正直驚かされた。日本では遺体を火葬にするが多くの国ではそれすら許されない。遺体を焼くのは背徳の犯罪者や謀反人あるいは宗教裁判の結果で、刑罰の一種なのだ。太平洋戦争時にキリスト教圏のフィリピンで銃殺されたゲリラの遺体を日本軍がそれなりの敬意をもって荼毘にふしたら、「焼き捨てた」と解されて終戦後戦争犯罪が問われた。
 イスラム国には幾つかのお互い融合しない要素が組み合わさっているが、その一つが伝統社会に根付いたイスラムの宗教観で(必ずしもイスラムの正統的な考え方ではない)で、処刑は「目には目を」的な復讐原理に基づいているのだと思う。だから、捕虜となったシリア兵や反乱を起こした部族に対する容赦ない残虐な対応となるのだろう。従い、銃をもって侵入すれば、あるいはそれに協力すれば、それ自体で死罪となる。そうとでも考えなければ、このようなイスラム国の残虐な刑罰の説明がつかないだろう。
 この「目には目を...」の最古形はまさにこの地にゆかりのあるハムラビ法典に見られるが、それは決して復讐を推奨しているのではなく、処罰の上限を定めたものと解釈されている。時代は下がって、旧約聖書では出エジプト記に「目には目を、歯には歯を..焼き傷には焼き傷を....」という処罰原則がでてくる。このような原則が、多様な民族のルツボ、複雑な社会構成の中で発達した、そして現代まで生きる社会ルールなのであろう。しかし、イスラム国の宗教裁判所は、有志連合の空爆による焼殺には、刑罰としての焼殺を持って償わせるとでも主張したいのだろうか?
「目には目を」で思い出されるのは1957年のフランス映画だ。主演はドイツの名優クルト・ユルゲンス、なんと彼がフランス人医師を演じた。治療を拒まれたために妻を失った男が、その医師を砂漠に誘い出し、自分の命も犠牲にして復讐を遂げる話だ。その舞台がシリアで、医師が生きる希望を見出し、そして絶対にたどり着けないのがダマスカスだ。中東・アラブ社会の不条理を説明する際によく引き合いに出される映画だけど、昔、どこか(たぶん渋谷)で見た、目の前に広がる永遠の絶望のような砂漠のシーンを思いだした。

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