半農・半Xの生活

思いついたことを思いついた時に綴ります。

水を治める者は国を治める

2015年09月11日 14時15分09秒 | 日記
まずは、今回の豪雨災害に遭われた方には心中よりお見舞いを
申し上げたい。

今回、関東地方に甚大な被害をもたらした豪雨の形態は、昨年、
広島に大規模な災害を発生させたものと同じで線状降水帯を形
成した。この線状降水帯は、ほとんど移動せずにそこに居座る
から恐ろしい。それも10分間降水量が20mmというとてつもな
い降雨強度である。たらいの水をひっくり返したような雨が延
々と続くわけだ。災害の採択基準では、時間雨量20mmを越
えるか日雨量80mmを越える場合であるから、この凄さは推
して知るべしだろう。

鬼怒川の堤防決壊は、鬼怒川に重なるように線状降水帯が居座
ったことが被害を大きくした。通常、河川の流下能力は、負担
する流域が増えるがごとく上流から下流に向けて徐々に大きく
なるように計画されているのだが、今回は、下流から上流にか
けて同じ強度の雨が何時間も降り続いたのだから、河川のもつ
能力の限界に早々に近づいてしまったことになる。

一般には、河川改修は下流から初めて徐々に上流へと進める。
上流から改修して上戸のようにしても必ず下流で溢れることに
なる。
河道の現況流下能力は一様ではなく、改修計画に基づき流下能
力の小さい、いわゆるボトルネックな箇所から改修することと
なる。今回破堤した箇所も流下能力が小さく近々、改修工事の
予定があったらしいが、限られた予算の中で進めるので改修の
進捗ははかばかしくない。

破堤のタイプには浸食、浸透、越水等があるが、破堤原因の8割
近くが越水によるものである。堤防は特殊な場合を除いて、材料
の入手のし易さや補修のし易さから土で作るのが原則である。だ
から、越水した水が堤内地側の法面を浸食し始めたら、またたく
まに破堤が起きる。なんとも脆弱な構造である。
これまでも、越水しても急激に壊れない構造の難破堤堤防につい
て研究がされているようだが、具体的な運用には至っていないよ
うだ。要は、越水しても浸食されないようにするわけで、堤防を
浸食に強いもので覆う、以前話題になったスーパー堤防と呼ばれ
る高規格堤防もそれである。ただし、莫大な金がかかるので、改
修延長が稼げないから、河道掘削や嵩上げ程度で、流下能力を増
やすのが精一杯である。

日本の治水計画は、川の規模にもよるが、例えば100年確立規模の
雨を想定し河川断面を決めて、そこに流水を封じ込めるというもの
なので、それを上回る出水があれば、計画は破綻する。だから、封
じ込めるだけではなく、余裕があれば水を遊ばせる方法として、遊
水池などは効果的だと思われる。これに似た方法に江戸時代から明
治期には、水に浸かることを許容して霞み堤を考えた。それを許容
するには、反面、水の怖さも承知していたから逃げることも治水の
重要な位置を占めていたと思う。
ところで、治水からみた場合、今回の豪雨には位置関係からみてダ
ムはほとんど意味が無かったのではないのか。

いずれにしても、川の水がひいたら、早急に破堤箇所の復旧を行い、
つぎの出水に備えると同時に、堤内地の水を排水しライフラインを
復旧し1日も早く住民の方々の平穏な生活環境を整備することが急が
れる。

そして、なにより、荒唐無稽な戦争法案にかまけ、かこつけて軍事費
の増大などせずに、防災に金をかけることが国を治める者の要諦と気
付いて欲しいものだ。
戦争は外交で回避できるが、天災は、待ってもくれないし、避けても
くれないのだ。