別れる時

まりなちゃんは長野県から引っ越ししてきて、お友達の紹介で入会しました。トトロみたいに太っていてほっぺが真っ赤な女の子でした。２年くらい続いていましたが、ある日お母さんが見えて[今月いっぱいで辞めなければならなくなりました]と言いました。また長野に帰るのだそうです。おじいちゃんおばあちゃんが待っているらしい。そうかぁお別れなのね、２年間とは思えないほど親しくなってしまったな。とうとう最後のレッスンの日、まりなちゃんは来た時から下を向いていた。外は雨、やばいぜぃ！私はまりなちゃんに用意していたプレゼントをあげた。まりなちゃんは小さい声で[ありがとう]と言ったがうつ向いたままだ。玄関のドアを開けてあげて、[元気でね、長野に行ってもピアノ続けてね]と言うと、コックリ頷いた。そしてドアを閉めてからも何度も何度も振り返って手を振ってくれたの。まりなちゃんが見えなくなって、我慢の糸が切れて涙が溢れて止まらなかった。あの別れはつらかった、もう、この仕事は向いてないからやめようと思ったくらい。今日は、あれほどではないが、やはりちょっとした別れがあったの。卒
業じゃなく退会かな。何度も辞めるといいながら続けてきたマリオ君だ。どうにもしようもない場合もあることは学習して分かってはいたが残念は残念。それなのに何故かほっとしてる私がいた。音楽を嫌いにならないうちに、終わりにした安堵感かな。なにかしら恋愛に似ている、と思ったりして…。