隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1308.連続殺人鬼カエル男

2012年12月28日 | サイコ・サスペンス
連続殺人鬼カエル男
読 了 日 2012/12/20
著  者 中山七里
出 版 社 宝島社
形  態 文庫
ページ数 411
発 行 日 2011/02/18
I S B N 978-4-7966-8089-9

 

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に読んだ「さよならドビュッシー」と一緒に買ったのではないかと思っていたが、後回しになったのはやはり、タイトルのせいか?
著者の作品だから、ましてや「このミステリーがすごい!」大賞の最終候補に「さよならドビュッシー」とともに残った作品とあれば、面白くないはずはないと思いながらも、連続殺人鬼という文字がサイコサスペンスを連想して、後回しになったのかもしれない。
サイコサスペンスは嫌いではない、それどころかこのミステリー読書を目標を立てて始めた当初は、好んでサイコサスペンス作品を探して読んだものだ。近頃は歳をとったせいか、そうした傾向の作品を少し重く感じ始めており、遠ざかっていた。 「十人十色」、「人それぞれ」、「蓼食う虫も好き好き」などなど、いろいろ言い方はあるが、人の好みなんてみな違うから、本書のタイトルを見て、「面白そうだ、読んでみよう」と、思う人もいるかもしれない。
しかし、僕はもしこれが他の作者の本だったら、書店で手にとっても見なかっただろう。僕にすれば、「このミステリーがすごい!」大賞に応募した時の「災厄の季節」というタイトルの方がずっと良いと思うが、どうだろう。ま、このタイトルにはちょっとしたミスディレクションの役目も果たしており、一概に否定的な見方もできないのかもしれないが・・・・。

 

 

この作品は、前述のごとく「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した「さよならドビュッシー」と一緒に中山氏が応募したもので、受賞作の青春音楽ミステリーとは全く傾向の違うサイコサスペンスだ。
残酷な殺人事件の現場に残されたメモから、カエル男と呼ばれるその犯人は、市民を恐怖のどん底に落とす。 曰く「吊るす」、曰く「潰す」、曰く「解剖する」、さらには「焼く」といった残酷な殺人が連続して、側には、まるで小学生が書いたような、仮名文字ばかりのメッセージが残される。
手がかりがなく容疑者を絞りきれない警察の捜査に、しびれを切らしたかのように自警団が幾つも結成されて、終いには暴徒と化して警察に押し掛ける始末となるのだ。そうした描写が、今まで読んだ作品とはまるで違う印象を持たされる。
いや、中でピアノ演奏による精神治療といった、音楽の描写は活字で音楽を表現する、という言い方ができるほど音を感じさせるのは、「さよならドビュッシー」や、「おやすみラフマニノフ」で、すでに経験済みだ。
プロの音楽家をうならせるほどの表現力を持った作者の独壇場といった感じだ。

 

 

酷な殺人現場の描写が続くものの、この作品は本格推理なのだ。
最後の最後まで読まないと、物語は終わらない。作者のことだから一筋縄のストーリーではないと、思いながら読んでいたが、やはりと思っていたことがひっくり返される。こんなにたくさんのシチュエーションを、あるいはトリック?を惜しげなく使ってしまって、この後の作品にどんな手を使ってくるのだろう、とますます作者に対する期待が高まる。
ミステリーの楽しみの一つ、いや主流か?それはひっくり返されることだ。ストーリーの中盤から終盤に至るころになると、ある程度は流れを把握できていると、思いながら読んでいる。そして、終盤で期待通りの展開を見せて、なるほどと思っていると、それがひっくり返るというわけだ、
こんな風に書いていると、それがミステリーだなどと思うかもしれないが、そこは作者の達者なところで、「やられた!」と思わされること必至なのだ。全くの新しいシチュエーションやトリックではないものの、その組み合わせが面白い。

 

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