隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1121.アイリッシュ短編集1 晩餐後の物語

2010年11月30日 | 短編集
アイリッシュ短編集1 晩餐後の物語
AFTER DINNER STORY & other stories
読了日 2011/11/24
著 者 ウイリアム・アイリッシュ
William Irish
訳 者 宇野利奏
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 355
発行日 0972/03/10
ISBN 4-488-12003-2

 

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行日は1972年(昭和47年)となっているが、この本はそれより14年もあとに出された新版で、当初のものと違ってサブタイトルも付されている。
東京創元社から発刊されたアイリッシュ短編集、6分冊の1冊で、8編の短編が収録されている。前にも書いていることだが、僕は若いころの一時期このウイリアム・アイリッシュ氏の作品にはまって、早川書房のポケット・ミステリーや、創元推理文庫などをずいぶんと買って読んだ。
サスペンスの詩人などと呼ばれる著者の作品は、独特の哀愁を帯びた作品も多く、日本人の読者のファンも多いというのもうなずける話だ。特に僕が惹かれるのは、アイリッシュ氏の時代の古き良きアメリカの雰囲気が出ている短編だ。アーリー・アメリカンなどという言い方もされる。
そういえば、また少し話がそれるが、かつてファミリー・レストランチェーンのスカイラークが展開していた店舗の一つにイエスタデイという、いかにもアーリー・アメリカンを彷彿させる外観や雰囲気をもつ店舗があった。その頃ケーヨーに在籍していた僕は今は亡き親友のK氏と、よく昼食時やティータイムに利用していた。よく行っていた千葉市の店はいつの間にか無くなっていたが、客層に合わなかったのだろうか?
アーリー・アメリカンという言葉で少し昔の思い出がよみがえった。

 

本書の作品群のなかでは、そうした雰囲気を現すのは3番目の「階下(した)で待ってて」だ。
著者の代表作「幻の女」や、その他の作品でもよく見られるシチュエーションの人探しのストーリーで、こうした短編に著者の特徴ともいえるエッセンスが凝縮されているような気がする。
ウイリアム・アイリッシュ氏の作品は、いろいろな形のミステリーを形成しているが(中には氏の作品は純粋なミステリーとは言えない、などと言う人もあるらしい)時々本格ミステリーともいうべきものもあって、面白い。この中では「盛装した死体」がそれに当たる、と僕は思っているが、どちらかと言えば倒叙ミステリーか?
表題ともなっている最初の「晩餐後の物語」などは、ヒッチコック劇場を思わせるような作品で、テレビドラマにしたら面白いかもしれない。
日本の吉原を舞台とした「ヨシワラ殺人事件」は、期待していたほどではなかったが、この時代の日本を舞台とした作品では、妙な日本観はなく抵抗なく読める。

 

 

の読書は、これといった傾向はなく乱読だから、思いついた時に未読の棚から引っ張り出して読むということで、あっちこっち飛ぶ。ちょっと前からめったに読まなくなった翻訳ものに手を出すようになって少しずつ読んでいるが、これもいつまで続くか心もとない。
これから先、読んでおかなくてはと、半ば義務感を伴ったものが古典的な名作群なのだが、頭の中では今さらという感もあって、なかなか手が出ないのが現状だ。古くから著名人によって(とくに推理作家の)挙げられている海外の探偵小説(ミステリー)ベストテンなどは、ぜひ読みたいと思っている。
一つには、若いころに憧れていたこともあって、代表的なものはいくつかその当時読んではいるのだが、せっかくこうして、記録として残せる環境にあるのだから、読んで一言でも添えておきたい。

 

収録作と原題
# タイトル 原題
1 晩餐後の物語 After Dinner Stories
2 遺贈 Bequest
3 階下で待ってて Finger of Doom(Wait for Me Downstairs)
4 金髪ごろし Blode Beauty Siain
5 射的の名手 Dead Shot
6 三文作家 Penny-a-Wonder
7 盛装した死体 The Body of a Well-Dressed Woman
8 ヨシワラ殺人事件 The Hunted