バートラム・ホテルにて AT BERTRAM'S HOTEL |
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読了日 | 2010/10/20 | |
著 者 | アガサ・クリスティ Agatha Christie |
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訳 者 | 乾信一郎 | |
出版社 | 早川書房 | |
形 態 | 新書 | |
ページ数 | 258 | |
発行日 | 1972/09/10 | |
ASIN | B000J91FIS |
は亡き英国の名女優、ジョーン・ヒクソン主演のドラマでもう何度となく見ており、今更という感じがしないでもないが、あの古き良き時代の英国といった雰囲気がよく出ているドラマの出所を確かめたくて、読み始めた。
解説によれば、本書はアガサ・クリスティ女史の71番目の作品だそうだ。読み進めて、ホテルの雰囲気などを表す表現は、老いて?からの作品という感じがするのは。そうと知ったからか?
ファンの間でもジョーン・ヒクソン女史のドラマは原作のミス・マープルにいちばん近いという評価で、ドラマそのものも原作に忠実に作られているといわれている。それでも、原作を読んでみれば、やはりドラマと原作は別作品であるというしかない。
ここでのミス・マープルはまるで脇役のような感じで、出番は少ない。
その辺がドラマとは違うところで、映画やドラマは見せることが主体で、どうしたって映像を見せなければ意味がないので、小説とは異なるのは仕方がないが、ドラマでウェクスフォード警部でおなじみのジョージ・ベイカー扮するデイビー主任警部は脇役だが、原作ではあたかも主役のような印象で、終盤で見せ場を作るミス・マープルが脇役の感がある。
古き良き時代の英国の雰囲気を維持するには、設備のメンテナンスや、人件費だけでも相当の経費がかかるだろうと思われるわりに、それほどの上客がいるとも思えないところから、主任警部はホテルの経営状態に疑問を持つ。同様にミス・マープルも子供の頃来た時とまるで同じく見えるホテルだが、どこかに不自然さを感じる。
テルの中のゆったりとした時の流れと、外の世界で起きる事件との落差の描写が良い。
全く無関係と思われる事柄が、最後になって収斂していくところは作品の見せ場?(読ませどころか)なのだが、それまでの所々に張り巡らされた伏線ともいうべきエピソードが素晴らしい。
足で捜査するスコットランドヤードの主任警部とは、対極的に安楽椅子探偵のミス・マープルの推理が明かされる終盤は見事。
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