警察庁から来た男 | ||
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読 了 日 | 2010/11/18 | |
著 者 | 佐々木譲 | |
出 版 社 | 角川春樹事務所 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 346 | |
発 行 日 | 2008/5/18 | |
ISBN | 978-4-7584-3339-6 |
月初めに読んだ「笑う警官」のシリーズだ。
僕は「笑う警官」を読んだ後、映画化されていることを知って見ようと思っていたのだが、どこかで垣間見た一映画ファンの酷評で、どうしようかと迷ってしまい、まだ見ていない。
普段は他の人の批評などあまり気にしないのだが、何故かわからないがちょっと引いてしまったのだ。
映像化されたものと原作の小説は別作品だということは、いつも感じていることなので、そのこと自体は気にしてないのだから、まあいつかDVDをレンタルしてみて見ようとは考えている。
そんなことを思いながら、たまたまいすみ市に一人暮らしをしているおふくろを訪ねた時、いつも寄る古書店で本書を見かけて、他にも気になる文庫数冊と共に買い求めた。
今回の舞台は北海道警察本部で、前作で胸のすく活躍を見せた札幌大通署の佐伯刑事や、小島百合巡査も登場する。そして、前作で事件の渦中の人であった津久井刑事もその存在を示す。
北海道の歓楽街・薄野周辺と思われる交番に二人の女性が飛び込んできた。女性人権会議ジャパン札幌事務所の酒巻純子という女性が、タイから売られて来た少女を救おうとして、暴力団員から追われて、交番に駆け付けたのだが、交番の巡査が呼んだのは少女の身元保証人だという男だった。だが、酒巻純子が見ると、男は自分たちを追ってきた暴力団員だった。
ビルの5階にあるバーの非常階段から男が落下して死亡するという事件が起こる。バーはどうやら暴力バーのようだったが、事故死ということで片づけられた。
不可解な様相を示す冒頭の二つのエピソードによって、物語の幕が切って落とされる。これらのエピソードは、後に重大な意味を持つことになるのだが…。
イトルが示すように、北海道警察本部の生活安全部に警察庁からの監察が入る。警察庁から乗り込んできたのは、キャリアの監察官・藤川警視正と、種田主査だ。
北海道警察本部で出迎えたのは本部長の奥野と秘書課長の広畑。彼らは藤川らを懐柔するために夜の接待に導くのだが、監察官・藤川が協力を要請したのは「笑う警官」で、百条委員会で裏金問題について証言した津久井刑事だった。
一方、札幌大通署の佐伯刑事たちは、ホテルでの部屋荒らし事件の捜査を進めていた。荒らされた部屋の客は、暴力バーの非常階段から落ちて死んだ男の父親だった。父親はどうしても息子の死を事故だとは思わず、殺されたのだと信じており警察に再調査を依頼に来ていたのだ。
津久井刑事の協力による藤川監察官の綿密な調査にもかかわらず、北海道警察生安部には不審な点はなにも出てこなかった。
だが、どこかがおかしい、と藤川の勘は示していた。
今回は前作の「笑う警官」の時のように、タイムリミットはないのだが、タイ国との間の国際問題にまで発展しかねない問題もあり、佐伯刑事たちの捜査と、藤川監察官の調査が次第に交錯していくさまが、スリリングに描かれて、胸を躍らせる。
よく敵役にされるキャリア警察官の権威と、一介の刑事の協力が隠された事実を明らかにしていく過程が、前作同様のカタルシスを感じさせる。本書だけで十分その面白さは伝わるのだが、北海道警を舞台にした物語はまだこの後も続くようだ。通して読むことにより面白さもより増すようだ。
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