Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

岐阜市は「路面電車」をどう議論してきたか?(その14・前編)

2005-09-04 06:55:54 | 鉄道(岐阜の路面電車と周辺情報)
「3ヶ月に一回」というパターンが定着した、このシリーズ。
今回は今年6月に開催された第3回定例会を見てみよう。
ちなみに、5月に第2回臨時会が開催されているが、ここでは路面電車云々の質疑はなかったため省略する。
路面電車が消えて3ヶ月が経過した時点の議論はどのように展開されたのだろうか。

参考:岐阜市議会議事録

<質問1>
本市の公共交通は路面電車廃止によって完全にバスに頼らざるを得ない状況であるが、「環境」、「スローライフ」をキーワードとした行政スタイルを標榜される市長として、今後新たな公共交通手段を検討され、計画をなされる予定、考えがあるのか。
 2項目め、公共交通の維持、つまり市民の足を確保するためには一定の税負担は避けて通れないものとに思うが、市長として考えられる、いや、決断できる金額だとかはどのレベルなのか。
 3項目め、市民交通会議から2005年交通行動指針として10の提案がされているが、今年度、具体的にこの中から何をチョイスされて実施するのか。
 最後に、岐阜市として総合交通政策方針を明示していただきたいと主張してきたが、その時期について今議会ではっきりと明言をしていただけないものか。

<市長答弁1>
第1点目の、「中間とりまとめ」に対する見解について、この3月にいただいた「中間とりまとめ」は、岐阜市の交通の現状認識あるいは課題整理、加えて自動車、バスなどの公共交通機関やまちづくりの方向性など、広範囲にわたっており、大変内容豊富な報告となっている。また、1日市民交通会議での意見も集約されており、現段階における市民の総意がまとめられたものである。総合交通政策を策定する際の指針として活用していく必要があると考えている。
 次に、公共交通政策について、公共交通は当面バス交通が主体的な役割を担うこととなる。今後については、現在の幹線・支線バス網に加えて、新たにバスシステムとしてのコミュニティーバスが適切に組み合わされた複合的なバスネットワークを構築したいと考えている。その中で特に幹線バスについては基幹公共交通軸として位置づけ、道路優先走行などのサービス機能を整備していくことが必要であると考えている。さらに、人口の増減、住まい方の様子、市民の公共交通に対する意識の高まりなどを見きわめながら、中・長期的には輸送密度や交通特性に合わせ、軌道系などの新しい交通システムといった高規格な公共交通軸を含めた公共交通ネットワークの可能性についても検討したいと考えている。
 次に、公共交通維持に対する税負担についての質問について、既に岐阜市では、平成14年の道路運送法の改正に伴って、需給調整の撤廃にあわせ、全国に先駆けて岐阜市独自でバス路線維持助成を実施しており、既に一定の税負担を行っているところである。
 公共交通の利用者が減少している中で、高齢者などの交通弱者を含むすべての市民のだれもが、どこへでも、自由に使いやすい、質の高い公共交通ネットワークの提供は重要な課題となっている。一方で、この運営経費が増大し、だれがそれを負担していくかというのも重要な問題である。
 税負担についてはこれらを解決する方策の1つであり、国、県ともともに一緒に考えていかなければいけないと考えている。そのレベルについては、財政運営、費用対効果などの問題もあるが、公共交通への意識の高まりと利用度、今後の都市構造の変化、さらには、税負担に対する市民の納得など、総合的に勘案をして決まっていくものではないかと考えている。
 2005年交通行動指針の取り扱いについて、提案の1つとしていただいた2005年交通行動指針は、市民一人一人が望ましい交通環境の実現を目指し、市民の間においても幅広く討議を重ね、できることから実践をし、新しい岐阜市、交通都市の実践を呼びかけたものであると理解をしている。
 10の提案について、まさに市民目線での交通施策の実践、市民協働による交通問題への取り組みを示している。今後、提案内容については十分精査を加え、市民の暮らしをサポートする交通としてのコミュニティーバスや、職員が率先して取り組むノーカーデーなど、今年度からできるものについては取り組みたいと考えている。
 最後に総合交通政策方針について、今日の公共交通の衰退などの交通問題は、急激なモータリゼーションの進展という社会的な現象によって引き起こされていると言われている。総合交通政策の策定に当たっては、モータリゼーションに至ったさまざまな要因を分析し、都市や交通に関する問題意識を深め、その上で策定作業を進めているところである。
 交通政策については、過度に依存した自動車中心の交通体系から、バスなどの公共交通が便利で使いやすく、また、自転車、歩行者を重視した交通体系が必要であると考えており、総合交通政策の方針では、新しい4本の柱である公共交通の需要創出に向けた新たな取り組みなど、公共交通機関の利用促進策の展開、公共交通の利便性向上のためのパッケージ施策の展開、公共交通高規格ネットワークの描き出し、公共交通施策と都市計画との連携策の導入を軸にして、公共交通政策を考えているところである。
 また、総合交通政策の策定に当たっては、都市のつくり方など、多面的な検討が必要であるので、全庁的な体制の中で進めるよう指示をしている。なお、総合交通政策の方針の策定、方針案については、市民交通会議とも意見交換を行いながら、ここ一両月中をめどに公表したいと考えている。

<質問2>※市長答弁1に対する再質問。
市営バスが事実上、路線移譲によって撤退、そして、路面電車がこの春に廃止という、本市の公共交通の基軸がなくなるというのに、結局、総合的な交通政策がないがために、結果としてその成り行きでずっと過ごしてきたんじゃないかという強い思いがある。
その意味でも、明確に総合交通政策を早期に示して、私どもにも議論の場を与えてくださいというふうにお願いしていたところであるが、先ほどの答弁では、一両日、一両月中か、に公表するということであるので、また9月の議会を含めて楽しみにしている。ぜひともそういう議論ができる交通政策を目の見える形で出していただきたいと思う。
 そこで、さきの質問について市長答弁の中で、新たなバスシステムを構築する際に現在の幹線や支線のバス網に加えてコミュニティーバスも複合した形でバスネットワークの構築をしたいと言っていた。これは大変理想的なことだが、このコミュニティーバスを一体どこがどういうふうにやるのか。これは先ほどの交通指針の中でコミュニティーバスもやると言われたので、そのこととあわせてですね、答弁を願いたいと思うが、いずれにしても市民の足を守るというのは税の負担というのは、これは避けて通れない。
 確かに国や県の協力を得る必要があることも事実だが、しかし、それを待っていては制度がおくれて、なかなか市民の足は結果として守れていないという実態がある。だから、まず岐阜市として、岐阜市のトップとして税負担をするという決断をできるかどうかというところだと思うが、そういう意味で、額まで先ほど言えと言ったが、これは非常に困難な話だろうが、税負担やむなし、しかし、市民の皆さんや我々にも理解を求めて、どうしても市民の足は守っていくということについて再度答弁願いたい。
 そして、さきのコミュニティーバスがいつごろからと言っていたが、あわせて交通行動指針でノーカーデーもやると言われた。
 これは前からいろいろ言われているが、これもいつなのか。正直言って、制度としてノーカーデーやるのも結構だが、今の岐阜市の公共交通のあり方で市の職員の皆さん、市民の皆さんに、車、乗るな、乗ってくるなっていうのは、ちょっと酷かなというふうに思う。
 事実、例えば、もうほとんど走ってない路線だとか1時間に1本しかないという現実の中で、じゃあ、ノーカーデーをやる、これはやっぱり理念としてはわからないでもないが、非常に混乱を招く。だから制度をある程度整えて、岐阜市はこれだけ例えば公共交通網、市長が言われたようなバスネットワークができているという話であれば、市民も協力せざるを得ないと思うし、そういう状況をつくることが必要ではないかと思う。
 高知に土佐電鉄というものがある。ある人に聞いたが、この土佐電は、相も変わらず、昔はですね、やっぱり私どもの路面電車と同じように乗降客が少なくて厳しい状況にあったそうだ。で、名前まで聞いたが、県の当時部長だったか役職をやってました大町俊夫さんという人がこの土佐電鉄の専務に入り、大変な改革をしたと。
 どういうことをしたかというと、もともと何十分に1本しか走ってなかった電車をですね、今だと5分か6分に1本ですが、乗ってもらわなくても、とにかく走らせる。 発想の逆転みないなことをし、そういう状況整備を整えて、もちろん税負担も高知市はしたそうだが、会社もそういう意味で努力をして、県の多分協力もあったと思うが、土佐電さんが努力されたことが事実としてある。今もかなり、そういう意味でいうと、これからまだ将来に向けて公共交通の基軸として頑張っていこうというところで高知もやっぱり応援しているようであるが、そんな状況を考えたときに、やっぱり無理なものを無理だって言うんじゃなくて、行政がある程度仕掛けをして、それで、市民の皆さん協力しなさいっていう話ならいいが、今の現状のまま結局協力しなさいっていうのは、この間行った社会実験を含めても結果はそうである。
 現状否認から始まって、そんなことが現実的にできるのかということであるので、ぜひとも今回出てくる総合交通政策については、その辺のところもやっぱりきちっと、一定限度、理念ではなくて、具体的なプログラムを明示をされた上で出していただきたいと思う。
例の名鉄3線の話で、マーゴの社長に、名鉄と渡りつけたってくださいよっていう話を、実は会派の懇談会のときに話が出て、早速やっていただいたのが記事に載ってるんですが、そういう行動力というのは非常に評価する。ぜひともこの問題も懸案であるので、方針どおり進むように県に働きかけていただきたいと思う。
 それから、小野崎助役、立場上は助役ですが、県の関係が多分強いと思うので、ぜひとも小野崎助役もバックアップして、高村助役一人の仕事というふうじゃなくて、2人ぜひともそろってお願いをしたいと思う。

<市長答弁2>
公共交通に関してコミュニティーバスを含むバスネットワーク構築はだれが実施するのか、どういう方法なのかという質問だった。
 コミュニティーバスの実施については、市民交通会議、あるいは1日市民交通会議でも多くの要望が出された。
 このコミュニティーバスの運営については全国各地でさまざまな方法があり、公設民営から始まりまして、NPOが主体であるとか、いろんな方法がある。これらを検討したいと思っている。
 いずれにしても、基本として、まさにコミュニティーバスであるので、地域の方々、地域の住民の方々と行政が協働して、一緒になってこの交通ネットワークをつくっていく必要があると思っている。
 それから、税の負担をするという決断についての再質問について、先ほども答弁したように、既に岐阜市では税負担について、曽我屋線など9路線についてバスの路線維持助成を行っており、税負担を既に行っている。
 今後、公共交通を取り巻く社会環境は、人口が減る少子・高齢化なども踏まえて、大変厳しい状況も出てくるのではないかと思っている。
 いずれにしましても、税負担のレベルは、今後の都市経営上の財政運営の財政問題、それから、費用対効果に加えて、公共交通の重要性への意識の高まり、また、それの実績としての利用、それから、今後の都市構造の変化、さらには、税を投入することに対する市民の方々の御理解などなどを総合的に勘案して、その税投入のレベルを決定していかなければいけないと思っている。
 ぜひ市民の方々にも週に一度は必ずバスに乗る、車を捨てて何とか公共交通を利用していこうという強い意識のもとに御協力をいただければありがたいと、こう思っている。
 それから、ノーカーデーについては、まさに指摘のとおりであり、ノーカーデーと言うのは簡単だが、それを支える公共交通システムの整備が重要である。公共交通システムの整備のためには、やっぱりこの意識、決意が必要であり、その決意を促す意味でも市の職員がとりあえず主体的にノーカーデーなど実施して市民の方々に訴えていくということも有効ではないかと思っている。

<質問3>
路面電車の再生について、先般の新聞報道の中で関市在住の民間人が進めようとしている名鉄との協議に岐阜市が関与しようとしているともとれるニュアンスの記事があった。既に路面電車については結論が出ているのであり、このようなことはないと思っているが、この点について市長に尋ねたい。
 続いて、軌道を含む全施設の撤去について、ことし3月末をもって名古屋鉄道の市内線、揖斐線、田神線及び美濃町線の4線が廃止され、今まで路面電車を利用されていた人たちは、バス、自動車、自転車への交通手段へ転換されることとなった。4月以降、名鉄は架線の撤去に着手し、新聞紙上によりますと、6月までに架線の全線撤去を、軌道を含む全施設撤去は約3年をめどに進めていきたいと聞いている。
 市民より、軌道があるため雨や雪などにより事故の可能性があるので早く撤去をしてもらいたい、交差点前後のセンターラインが右折車両のための膨らみを持たせていないため渋滞が常時起きているという話も聞いている。今後、軌道撤去に伴い、交差点の安全な交通処理、歩行者や自動車交互通行のための踏切部分の道路拡張、あるいは軌道があったために行きどまりとなっていた道路の解消など、バス、自動車、自転車及び歩行者の利便性をよくする必要があると考える。
 そこで、本市として、路面電車廃線に伴う軌道撤去について、これまで名鉄とどのように協議をされてきたのか、さらに、今後の取り組みについて基盤整備部長にお尋ねする。

<市長答弁3>
 前から申し上げているように、この路面電車の再生については、民設民営方式でやっていただきたいと、民間同士の話し合いによってこの事業を推進していただきたいというのが私どもの基本的な姿勢である。
 民間事業として確度の高い事業計画が提示をされ、また、事業の見通しが立つという状況になったら、その段階で何ができるかについて、国及び県とともども、いろいろ協議をしたいと考えている。

<岐阜市答弁1>
レール撤去等の開始時期については、さきの3月議会で市として説明したように、先延ばしすることは難しい状況にあると理解している。
 一方で、名古屋鉄道株式会社からは軌道及び架線の撤去を早急に進めたいとの意向があり、現在それを受けて県、市と名古屋鉄道株式会社で復旧計画について協議を進めているところである。具体的な撤去の手順については、現在、事業中で手戻りがなく、投資効果があらわれる箇所、大規模な交差点や交通集中による混雑が予想される箇所及び事故などの危険性の高い箇所から順次復旧計画を策定し、軌道撤去を進めていくことにしている。全体的な撤去は議員指摘のとおり、約3年で完了していくことになると考えている。

<岐阜市長答弁3及び岐阜市答弁1に対する発言>
先ほど市長が民間にやっていただければいいということを、まあ重ね重ねかもしれないが、改めてここで答弁されたわけである。新聞にも何度もこういった話があり、一時、また岐阜市が何ぞかんぞ応援するのかなあというふうに心配していたわけだが、これはこの議場の中でも再三議論を進めてきたことであるので、しっかりとした姿勢で臨んでいただきたいと思う。
 やはり今は、まあ当面として、バスの今の民間委託に頼らざるを得ない状況であるので、今の運行状況がどうか。例えば、特にここんところ、民間委託した先のバスの事業者が事故を何度かしているわけだが、(笑声)まあ、そういうのはやはりちょっと乗る方としても注意をしないといけないところであるので、指導方法というか、何か評価システムもできるといいと思う。まあ、いずれにしても、ぶれることのないように要望を申し上げたいと思う。

<中間のまとめ>
路面電車が廃止されて約3ヶ月が経過しようとしている状況で第3回定例会が開催された訳だが、議論の中でも出てきているように「サン・ストラッセ」による名鉄3線の復活計画が表に出、これに岐阜市助役が名鉄との仲介に乗り出した直後でもある。

その中で注目すべきは、岐阜市の路面電車再生に対するスタンスが明確になったということだろうか。
「民設民営」。今年3月まで名鉄が経営していた方式そのものである。結局、岐阜市としては路面電車を走らせるなら、民間で。
岐阜市として税金は出さないし、手は出したくないということで考えれば良いということか。岐阜市助役の仲介も実効が伴っていないと考えた方が良さそうだ。

ただ、既に岐阜バスに対しては公金を投入している訳であって、路面電車に税金を投入する額はバスの比ではないことを差し引いても、その見事なまでの割り切りぶりに「公共交通重視」を謳う市の姿勢と矛盾するものを感じる。
何故「岐阜バス」に税金投入ができて、「路面電車」に税金投入ができなかったのか。投入額の多寡以外に納得の行く説明はなかった。
仮に民間事業者による路面電車再生が成った場合は、どう対応するのだろうか。

また、具体的な撤去スケジュールについての質問が出たが、確かに用を成さなくなった路面電車の線路は確かに自家用車等の通行にとって危険な要素になる。
そういった意味からも線路の早期撤去要望が出るのは当然だろう。
逆に「3年」という撤去期間は長いと見るべきか、短いと見るべきか。
自動車を運転する立場であれば、前者だと思う。

それにしても、路面電車について「再三議論してきた」という言葉が出てくるが、これまで路面電車を巡る市議会議事録を見ていて、廃止を容認する発言は市議会から出ていない。しかも、「決着が着いた」としている割には路面電車復活運動に対して市の働きかけを、という意見も出ている。現状を見るにつけ、軸足が定まっていない印象を受ける。
昨年度の議論を見る限り、市長の政治判断を市議会が結果的に追認しただけ、という印象しか持っていない自分にとって、議員の「議論してきた」とする見識に強い違和感を覚えた。

後編へ続く。

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