JR尼崎脱線事故から3ヶ月が過ぎようとしている。
事故を踏まえて仕様を変更した321系の試運転も始まった。
事故に関する報道も少なくなり、表面的には「日常」が戻ってきた。
その一方で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会による事故原因の調査・分析が進められている。
例えば、こんなふうに。
「日勤教育受けた12人が配置転換、尼崎脱線事故調」(読売新聞、7/22)
記事は事故列車の運転士の同僚がオーバーランを繰り返した結果、運転士を降ろされていたということ、そうした理由で昨年度「日勤教育」を受けた運転士は162人、事故を理由として「日勤教育」を受けた12人が運転士以外の駅員や車両検査係へ異動させられていたことについて触れている。
こうした事実が事故列車の運転士への心理的なプレッシャーに繋がった可能性があると航空・鉄道事故調査委員会は見ており、JR東日本からヒューマンファクター(人的要因)専門の研究員を19日付で調査官として採用し、事故時の心理状態を更に詳細に調査するという。
まず、事故の原因となった「日勤教育」の実態、それが運転士にどのような心理的な影響を及ぼしたかについてメスが入っていることが読みとれる。
これまでの「日勤教育」に関する報道を見ていると、どう考えても「事故を防ぐ」ための再教育より「労務管理」の色彩が強いと見ていた。
もっと辛辣な表現を使えば、「(無理な条件で設定された)ダイヤを守れない運転士の排除」が目的だったのではないか、とさえ思えてくる。
例えば、「環境整備」と称して鉄道施設内の草むしりや清掃をさせた事例に至っては、それのどこが「事故を防ぐための教育」か、と言いたくなる。
自分の想像する「再教育」とは、座学による知識の確認や再習得、シミュレーターによる運転基本動作の確認といったものだが、実態はそうではなかった。
まして、ミスが一番堪えている筈の運転士に反省文を何度も書かせてみる行為のどこに、何の効果を見いだせるというのだろうか。そこには「精神論」しか見えない。
本来JR西日本がなすべきは、そうしたミスから「教訓」を引き出し、蓄積して運転士の教育体制、ダイヤ編成等に活用していく事ではなかったかと思う。
結果的には「日勤教育」が本来の目的を逸脱し、運転士を束縛する「鎖」として機能した事が事故の一因となったという共通認識が出来上がろうとしている。
そうした「日勤教育」のあり方がミスを頻発していた運転士にどのような心理的な影響を与えていたか、そしてそれを長年にわたって許容していたJR西日本の企業体質が問題になってくることは今更言うまでもない。
いつ頃から「日勤教育」の変質が始まったのかを分析することで、その時の企業トップの責任も問われてくることだろう。
そして、今回の事故の原因の一つとなったと考えられる「余裕時分を削った」ダイヤ設定はどう見られているのか。
これについては明快な答えが出ている。
「<国交省>主要鉄道対象にダイヤ総点検 「余裕」欠如も」(毎日新聞、7/22)
国土交通省がJR西日本を含めた主要鉄道事業者を対象にしたダイヤ総点検の結果を発表した。
結論は「JR西日本を除いた各社は問題なし」。
いかにJR西日本のダイヤ設定が余裕を削った異様なものだったのかが浮き彫りになった感がある。
確かに福知山線のダイヤは修正されたが、他のJR西日本各線の運転ダイヤに抜本的な見直しがなされたという話は聞かない。
「速達性」という言葉は確かに耳に心地よく聞こえる。おまけに誰にとってもわかりやすい。
しかし、我々利用者としては、その裏で何が起こっているか、それが安全性を犠牲にしたものでないか否かをよく考えた方がいいと思う。
新聞記事では概略のみ書かれているのみで、もう少し具体的な調査結果が見たいと思っているが、国土交通省のホームページにはまだデータが公表されていない。
調査を実施した官庁自らが発信する一次情報の発表がなされていないという点に、国土交通省の体質が見て取れる。
「素人が見てわかるものか」という事かもしれないが、利用者が一番知りたいのはどういった思想の元で作り出されたダイヤで電車が走っているかということではないだろうか。
追記:
「Friday」でJR西日本・山陽新幹線の高架橋の劣化問題を取り上げているが、掲載されている現場写真を見ると、在来線のみならず、新幹線の方がもっと深刻な問題を抱えているように思う。
それに言及しているマスコミが少ないのは残念、というほかはない。
アクセス解析
事故を踏まえて仕様を変更した321系の試運転も始まった。
事故に関する報道も少なくなり、表面的には「日常」が戻ってきた。
その一方で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会による事故原因の調査・分析が進められている。
例えば、こんなふうに。
「日勤教育受けた12人が配置転換、尼崎脱線事故調」(読売新聞、7/22)
記事は事故列車の運転士の同僚がオーバーランを繰り返した結果、運転士を降ろされていたということ、そうした理由で昨年度「日勤教育」を受けた運転士は162人、事故を理由として「日勤教育」を受けた12人が運転士以外の駅員や車両検査係へ異動させられていたことについて触れている。
こうした事実が事故列車の運転士への心理的なプレッシャーに繋がった可能性があると航空・鉄道事故調査委員会は見ており、JR東日本からヒューマンファクター(人的要因)専門の研究員を19日付で調査官として採用し、事故時の心理状態を更に詳細に調査するという。
まず、事故の原因となった「日勤教育」の実態、それが運転士にどのような心理的な影響を及ぼしたかについてメスが入っていることが読みとれる。
これまでの「日勤教育」に関する報道を見ていると、どう考えても「事故を防ぐ」ための再教育より「労務管理」の色彩が強いと見ていた。
もっと辛辣な表現を使えば、「(無理な条件で設定された)ダイヤを守れない運転士の排除」が目的だったのではないか、とさえ思えてくる。
例えば、「環境整備」と称して鉄道施設内の草むしりや清掃をさせた事例に至っては、それのどこが「事故を防ぐための教育」か、と言いたくなる。
自分の想像する「再教育」とは、座学による知識の確認や再習得、シミュレーターによる運転基本動作の確認といったものだが、実態はそうではなかった。
まして、ミスが一番堪えている筈の運転士に反省文を何度も書かせてみる行為のどこに、何の効果を見いだせるというのだろうか。そこには「精神論」しか見えない。
本来JR西日本がなすべきは、そうしたミスから「教訓」を引き出し、蓄積して運転士の教育体制、ダイヤ編成等に活用していく事ではなかったかと思う。
結果的には「日勤教育」が本来の目的を逸脱し、運転士を束縛する「鎖」として機能した事が事故の一因となったという共通認識が出来上がろうとしている。
そうした「日勤教育」のあり方がミスを頻発していた運転士にどのような心理的な影響を与えていたか、そしてそれを長年にわたって許容していたJR西日本の企業体質が問題になってくることは今更言うまでもない。
いつ頃から「日勤教育」の変質が始まったのかを分析することで、その時の企業トップの責任も問われてくることだろう。
そして、今回の事故の原因の一つとなったと考えられる「余裕時分を削った」ダイヤ設定はどう見られているのか。
これについては明快な答えが出ている。
「<国交省>主要鉄道対象にダイヤ総点検 「余裕」欠如も」(毎日新聞、7/22)
国土交通省がJR西日本を含めた主要鉄道事業者を対象にしたダイヤ総点検の結果を発表した。
結論は「JR西日本を除いた各社は問題なし」。
いかにJR西日本のダイヤ設定が余裕を削った異様なものだったのかが浮き彫りになった感がある。
確かに福知山線のダイヤは修正されたが、他のJR西日本各線の運転ダイヤに抜本的な見直しがなされたという話は聞かない。
「速達性」という言葉は確かに耳に心地よく聞こえる。おまけに誰にとってもわかりやすい。
しかし、我々利用者としては、その裏で何が起こっているか、それが安全性を犠牲にしたものでないか否かをよく考えた方がいいと思う。
新聞記事では概略のみ書かれているのみで、もう少し具体的な調査結果が見たいと思っているが、国土交通省のホームページにはまだデータが公表されていない。
調査を実施した官庁自らが発信する一次情報の発表がなされていないという点に、国土交通省の体質が見て取れる。
「素人が見てわかるものか」という事かもしれないが、利用者が一番知りたいのはどういった思想の元で作り出されたダイヤで電車が走っているかということではないだろうか。
追記:
「Friday」でJR西日本・山陽新幹線の高架橋の劣化問題を取り上げているが、掲載されている現場写真を見ると、在来線のみならず、新幹線の方がもっと深刻な問題を抱えているように思う。
それに言及しているマスコミが少ないのは残念、というほかはない。
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