森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

セミナーを終えて

2013年12月03日 12時56分28秒 | 日記





一昨日、今年のニューロリハビリテーションセミナーを終える形になりました。今年度では残るは「研究編」が2月にありますが、少人数でのタスク検証作業になりますので、実質上、座学による大掛かりなセミナーは今年度これで終了になります。全力で今回は質問に答えたため私自身疲労感をもっています。けれども心地よいです。心と身体に若干矛盾を感じる年になってきましたが。。。

さて、4月の頭、応募が始まったとたん、アクセス集中でサーバーが停止するという緊急事態に巻き込まれましたが、20分後復旧し、復旧したとたん、延べ1000名ほどの応募をいただきました。10分で定員に達したため、締め切る形になり、今年も受講できなかった方もおられるかもしれません。

このような期待を我々は真摯に受け止めるとともに、なんらかの情報を持ち帰っていただきたいという一心で講義を構成しています。期待が大きければ大きいほど、そのものを超えないと誤差は生まれません。また報酬予期が高すぎると、それは負にもなります。こんなことも中脳–前頭前野の関係を学ぶことができたから気づくのではないでしょうか。

「講習会やセミナーが楽しかった、わかりやすかった」という報酬は即時的な線条体によるシステムです。しかしながら、我々が期待しているのは「我慢する脳」です。報酬を先延ばし、目標を設定する脳です。すぐさまというのではなく、将来遭遇するであろう事象に対するものです。いずれ出会うであろうその現象が今回の経験によってよき方向に解釈でき、よき関係性を築くことを期待しています。また、わからない
ものこそ、読んでみろという言葉もあるように、「挑戦する脳」こそが学習過程には必須なのです。

「希望」は人間のすべての強さの基本的要素でもあります。将来の自分に期待し、希望を持つ。これこそが社会を動かす原動力になるのではないでしょうか。私の最後のスライドに欲求や役割の意味を呈示したのはそこにあります。回復の原動力を今一度考え直そうじゃありませんか。それは発達の原動力でもあります。

一方、科学は局在からコネクティビティ、そしてシングルブレインから、ソーシャルブレインに移行しています。前者は個体脳、後者は個体間脳の研究です。これらは研究方法の違いはあれども共通しているのは、システムとして捉えている点です。前者は自己の行為(過去-現在–未来)の比較でもありますが、後者は自己―他者の行為(過去–現在–未来)の比較でもあります。患者の注意障害一つとっても、その両方から捉える必要があります。個体内のネットワークの問題なのか、はたまた自分との関係性による問題なのか。後者は今までのリハビリテーションの評価にはありません。全人的アプローチといいながら、そこの視点が決定的に抜け落ちていたわけです。自己の脳を俯瞰する能力を身につける。これは医療者にとって重大なテーマであると思います。

我々も皆様から色々なご意見を頂戴し、修正すべきところは修正していくつもりです。しかしながら、我々にも心(信念)があります。そして自らの感情を含んだもっと賢い意思決定を用いて物事を捉え、修正しなくてもよいものは、そのまま放置します。どうでもよいこと(あくまでも他者のエゴ)は流れに身を任せるだけです。そこで一喜一憂してしまえば、流れを止めてしまうことになります。

その一方で、やはり歩み寄りの姿勢こそが共同注意を起こして行きます。職場環境等もソーシャルブレインの視点から一度捉え直すことこそ、リハビリテーションサービスをよきものに変化させていくと僕らは強く思っています。チームとしての挑戦する脳を求めます。そうすれば最近接領域を上手くつくることができると思います。

いずれにしても、4年目を迎えたニューロリハセミナーも大事な我々の生活の一部になってきました。この事業を基盤に次年度はさらなる事業を展開し、学術論文1本では起こすことができない「幸福感」を社会に提供できればと思っています。そのためには私たち自身の学術論文ももちろん必要になりますし、様々な演出を考え、感情(よきもあしきも)を起こすプラットフォームになればと思っています。大人は抑制する脳ですが、残念ながら感情をも抑制してしまう嫌いがあります・・・ 

来年もセミナーを含め、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターをよろしくお願いいたします。

次年度はセミナー受講経験者を対象にフォーラムを4月13日(日)に開催します。間もなく当ホームページに応募告知がされると思います。いよいよ「高次脳機能学部門」「身体運動制御学部門」「社会神経科学部門」「発達神経科学部門」から実際の症例を検討(臨床推論)していきます。

一方、セミナーは6月14日,15日(基礎編)、9月27日、28日(応用編)、12月6日、7日(臨床編)、2月21日、22日(研究編)に開催します。4月2日が応募開始となる予定です。いくつか新しい試みを考えています。皆さんのお越しを心よりお待ちしております。

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター