森岡 周のブログ

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社会脳と自己脳

2012年06月04日 23時44分31秒 | 脳講座
チームワークはもちろん大切である。
このチームワークは人間が人間たらしめるものである。
特に血縁関係でない、あかの他人とチームを形成し、
共通の問題を解決すべく、
共同注意しながら解決していく、
このプロセスは、
人間がコミュニケーション手段をみにつけた進化そのものでもあり、
そして、このプロセスがあったからこそ、
人間は大脳皮質を拡大してきた。
特に、それは内側前頭前野で大きい。
この場所は感情のコントロールにも関わり、
相手の心を理解したりするところでもある。
また、感情そのものをつくりだすきっかけをつくる扁桃体は、
自分の感情にも関わるが、
相手の感情の読み取りにも関わる場所である。
この脳の場所も、
社会集団の大きさ、あるいは、知人の社会集団の複雑さに
容積が相関する。

いずれにしても、社会性というのがキーワードに
人間の脳は進化してきたに違いない。
この進化プロセスは、
自然環境や食糧難など、
生きていくための問題が生じたとき、
それまでの手続きでは解決できないものに遭遇した際に起こったと考えられる。
つまりネガティブな感情を解決するために、
血縁関係でない人間同士が、それを共有し、
知恵を磨いてきたのである。

こうしたチームワークこそ、
社会脳の極みである。
自己の脳は他者の脳に操作され、ゆだねられるという、
脳間操作系の作動もこの関係性である。

一方、チームワークだけでなく、
ひとりで思いにふけたり、
一人でじっくり考えたり、
創造していくプロセスにおいては、
逆にチームワークばかり意識すると、
不十分になる場合がある。
人間が注意を集中し、様々な事柄を考えたりしてるときには、
外側前頭前野が働くが、
先の内側前頭前野とは抑制関係にある。
すなわち、相手ばかり意識して内側前頭前野ばかり作動させると、
外側前頭前野の働きを抑制してしまい、
自分で考えて道しるべをつくることにブレーキをかけてしまう。

つまり、社会性ばかりを意識してしまうと、
脳の働きがそれのみを優先してしまうことになる。

現代社会はネット社会で、
こうしたブログというよりは、
むしろインタラクションが大きいSMS中心になっている。
この関係性は前者が強く意識され、
こうしたパラダイム転換により、
人間がさらに進化し、
また別の脳のありようになってくると思うが、
ことに、他者の意見ばかりに左右され、
自己を見失うことがあるかもしれない。

研究も同じである。
こうしたインタラクションにより、
他施設での共同研究が進み、
大きなプロジェクトに参画し、
それに伴い世の中のために重要な知見を生み出すことになっていくだろう。
一方で他人の意見に左右される嫌いがあり、
自己でじっくり考え、一人で作業をして、
そして一人で決断し、実行していくという自己脳の働きを弱めるかもしれない。

成熟した脳をつくるためには、
社会脳と自己脳(脳内操作系)の両方が大切である。
特に、若い脳はもろく、その両方のバランスが大切なのかもしれない。

私のゼミは自分一人で論文を書くという自己脳を高めることを意識しているが、
そのプロセスは共有し、実験の協調性などは社会脳を高めることを意識している。

サッカーでいうと個人の技術、知能が高くないと、
メンバーの一員となっても機能しないからだ。
中学校の弱小チームでよければ、
はじめから社会脳を意識して、
助け合いの精神だけどたたき込めばいいかもしれないが、
バルサのようなサッカーを目指すためには個人脳を高めることによって、はじめて難問題を解決すべき社会脳を実存させていくものだと考えている。