【米国市況】株3日続落、断固たる利上げ姿勢嫌気-136円台に円反発
Vildana Hajric
2022年12月17日 6:51 JST ブルームバーグ
S&P500種、週間ベースでは9月以来の2週連続下落
円は対ドルで一時136円30銭まで買われる、G10通貨の中で最も上昇
16日の米株式相場は3日続落。利上げをあくまでも続けるという米金融当局の姿勢がリセッション(景気後退)を引き起こしかねないとの懸念が広がった。円は対ドルで反発し、ニューヨークの取引時間では1ドル=137円台前半から一時は136円台前半まで買い進まれた。
株式 終値 前営業日比 変化率
S&P500種株価指数 3852.36 -43.39 -1.1%
ダウ工業株30種平均 32920.46 -281.76 -0.8%
ナスダック総合指数 10705.41 -105.12 -1.0%
大手ハイテク銘柄中心のナスダック100指数も3日続落。株価指数の先物とオプション、個別株のオプションの取引期限が重なる四半期に一度の「トリプルウィッチング」だったことから、値動きが増幅された面もあった。S&P500種は週間ベースで2週連続の下げと、9月以来の連続下落となった。
米金融当局と欧州中央銀行(ECB)が今週それぞれ政策金利のピーク見通しを引き上げた上に、高金利状態がより長く続くとの見解を示して以降、リスク資産は打撃を受けている。
16日にはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が市場心理を一段と悪化させた。ブルームバーグテレビジョンのインタビューで総裁は、労働市場の逼迫(ひっぱく)により物価圧力は高い状態が続く公算が大きく、当面の高金利が正当化されるとの見解を示した。
NY連銀総裁、労働市場の逼迫が利上げ正当化-5.1%超える可能性も
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁も別のイベントで、「当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」と発言。「市場がインフレについて、なぜそれほど楽観的なのか私には分からない」と述べた。
デーリーSF連銀総裁、インフレ抑制への「道のりはまだ長い」
MAPシグナルズのチーフ投資ストラテジスト、アレック・ヤング氏は「短期的にはこれが株式にとっての主要な問題で、株売りを招いている理由だ。インフレのヘッドラインの数字は鈍化しているが、サービス業と賃金のインフレは長く続いており、米金融当局はまさにそこに照準を合わせている」と述べた。
ビアンコ・リサーチ創業者のジム・ビアンコ社長はブルームバーグテレビジョンで、市場は今年、米金融当局の意図を数回読み違え、予想の再調整を余儀なくされたと指摘。「市場と米金融当局の認識のずれが過去最大級となっている。そのため、2023年には誰かが折れざるを得なくなるだろう」と述べた。
米国債
米国債市場では年限が短めの債券が買われた。米金融当局者からタカ派発言が聞かれる中での短期債上昇には、世界最大の資産運用会社ブラックロックが2023年は短期債が有望との見通しを示したことも影響した可能性がある。
年限が長めの国債は下落したものの、米企業活動が6カ月連続の縮小となったことが購買担当者指数(PMI)統計で示されると、下げ幅を縮小した。
米企業活動、6カ月連続で縮小圏-2020年半ば以来の低水準に沈む
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率
米30年債利回り 3.54% 4.55 1.3%
米10年債利回り 3.48% 3.77 1.1%
米2年債利回り 4.18% -6 -1.4%
米東部時間 16時50分
外為
外国為替市場では、ドル指数が前日とほぼ同じ水準で推移した。前日は1%上昇。米金融当局者のタカ派発言を背景としたドル買いの流れが維持された。
円は対ドルで反発。G10通貨の中でドルに対して最も上昇した通貨となった。前日は1.7%安だったが、この日は一時136円30銭まで買われた。
為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1264.30 1.14 0.1%
ドル/円 ¥136.71 -¥1.07 -0.8%
ユーロ/ドル $1.0590 -$0.38 -0.4%
米東部時間 16時50分
インベスコのチーフ・グローバルマーケット・ストラテジスト、クリスティーナ・フーパー氏は米金融当局が来年1-3月(第1四半期)にも利上げを停止するといった見通しを理由に、G10通貨は来年、対ドルで上昇すると予想。特にユーロは「劇的に」上昇する可能性があるとの見方を示した。円については、特に日本経済が「中国の波に乗れば」間違いなく上昇余地はあると述べた。
ユーロはドルに対して下落。ただ週間では約0.5%上昇した。三菱UFJ銀行の為替ストラテジスト、リー・ハードマン氏は、他の中銀が政策引き締めペースを減速させる中で、ECBはかなり積極的な利上げを続ける方針のようにみえるとし、ユーロ相場は引き続き短期的に支えられるはずだと指摘。「ECBは別の道に進んでおり、それがユーロを一層魅力的にしている」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続落。世界的な景気減速懸念が重しになった。バイデン米政権は戦略石油備蓄(SPR)の補充を開始すると発表したが、相場への影響は限定的だった。
インフレとの闘いを続けるとする主要中央銀行の決意は経済をリセッション(景気後退)に傾けるとの警戒から、この日は世界的に金融市場が下げた。カナダの油田と米メキシコ湾岸の製油所を結ぶキーストーン・パイプラインの一部で稼働が再開されたことも、相場を圧迫した。
バイデン政権がSPR補充計画の一環として、まず300万バレルの原油を購入する計画を発表すると、原油は一時下げ幅を縮小したが、すぐにこれを消化した。
バイデン米政権、戦略備蓄の補充計画開始-まず300万バレル購入 (1)
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は前日比1.82ドル(2.4%)安の1バレル=74.29ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は2.17ドル下げて79.04ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発したが、週間ベースでは下落。米金融当局が14日に積極的な引き締めを継続すると示唆したことが売りを招いた。
今週は荒い動きとなり、13日には米消費者物価指数(CPI)の統計でインフレ減速が示唆されたため、金は1オンス=1800ドルを上回った。しかし、その後は同水準を割り込んだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)の予測で金利が想定以上に上昇することが示唆されたことに反応した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時6分現在、前日比0.9%上昇の1オンス=1793.31ドル。週間ベースでは0.2%下げた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比12.40ドル(0.7%)高の1800.20ドルで終了。週間では0.6%の下落。
原題:
Stocks End Jittery Week Lower as Fed Hawks Circle: Markets Wrap(抜粋)
Stocks Head for Second Weekly Loss on Rate Woes: Markets Wrap(抜粋)
Blackrock’s New View May Be Boosting Short-End of the Curve(抜粋)
Yen Outperforms as Dollar Steady Amid Stocks Losses: Inside G-10(抜粋)
Oil Falls as Recession Fears Outweigh Modest SPR Buyback Plan(抜粋)
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