人気俳優と彼の元妻、仕事仲間、使用人、ファン、崇拝者のドタバタ劇を通して俳優の愛に満ちているのか枯れているのか誰にもわからない忙しい生活を描いた話だった。
笑えるんだけど胸に刺さる。
パンフレットの松岡和子さん解説によると、主役俳優は本作作家で演出、主演もしたノエル・カワードの拡大された自画像なのだそう。
私はこのチャーミングなアンスコさん演じる俳優と彼に惹きつけられた人々の作る華やかな世界を見ながら、
大ヒットした映画「ボヘミアン・ラプソディ」で有名になった大勢に愛されながらも寂しかったフレディ・マーキュリーの生活と取り巻きたちの世界もこんな感じだったんだろうな、彼が愛したのはスターじゃないフレディと出会ったメアリーやジムだったし・・・と思いながら、
その昔、私がファッション業界で働いていた時の、デザイナーの周りもこんな感じだったな・・・と思い出に浸った。
才能ある売れっ子というのは、仕事相手に通常のビジネス以上のものを求める。求めるから結果も出る。周りで働く方も精神的に大変だけど、スターにはやはり個人的な魅力もあるし近い人達に実は感謝もしていて気も使っている。個人的な感情と仕事という境目もだんだん曖昧になってくる。仕事仲間がファミリーみたいになっていくのはそういうことだ。
それともう一つ、この作品で刺さるのは、ファンの存在を俳優側から見るとどんなに愛されても一方通行すぎて滑稽ということ。まさしく自分がファン以外の何物でもないし、仕事を愛しても個人を愛しても勘違いにしか見られない。かといってそういうファンがいるからスターが存在するのだから、不可欠にして永久にパラレルワールドって、こっちもまたスター個人の悲哀と同じだなあ。