ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

さらば愛しき怪物

2013-05-08 19:19:48 | Weblog
今からもう20年前になる
ルーキー松井秀喜の衝撃を見たのは
とてつもない勢いでライトスタンドに突き刺さった打球を見たのは

その翌日、ライオンズの清原和博がバックスクリーンに2発、運んだ
美しい弾道だった
松井のそれとは違い、品があった

しかし、この瞬間、清原ファンの僕にはいやな確信が宿った
そう、思ったというより感じたのだ
清原が松井に抜かれる日が来ることを

ルーキー松井は2軍落ちが決まった時に言い放った
「そのように判断した人間を必ず後悔させてやる」と

松井ほど優しい男はめったにいない
だが松井は決して穏やかな人間でもない
激しく荒ぶる魂を壮大な理性で押さえ込んでいたのだ
そしてあらゆる感情は汗も枯れるほどの努力へと転化された

「これで勝利要因が増えたな」
渡辺オーナーが巨人入団以降、不振続きの清原が負傷で戦列を離れた時に浴びせた言葉だ
言ってはいけない言葉だった

松井の内面は激しく燃え盛る
それがライオンズを幾度も日本一に導いてきた男にかける言葉なのかと
自分の成績はどうだっていい
チームの勝利を何よりも優先させる松井の不信感はその後も消えることはなかった

「命がけでプレーします」
松井が巨人を離れ、海を渡るときに発した言葉だ
そして命がけの10年が終わった
松井は静かにバットを置いた

松井と長嶋さんの国民栄誉賞が決まり、「松井君の引退セレモニーをかねて東京ドームで盛大にお祝いしたい」と巨人側が提案した
しかし、松井は首を縦に振らない
球団への不信感はいまだに持ち続けていた
長嶋の説得に「監督と一緒なら」の条件で5月5日、松井は東京ドームに帰ってきた
すべては恩人である長嶋の顔を立てるために

最後の最後まで自分より他人を優先した美しき、そして愛しき松井よ、さらば

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