ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

微笑み

2021-06-28 11:35:54 | Weblog

梅雨の晴れ間の帰り道

青空の余白に浮かぶ雲は、すでに立体を示していた

初老の男性が声を掛ける

「お姉さん、何か落としたよ」と

少し前には女性の後ろ姿

男性が何度か呼び掛けると

女性は足を緩め、疑うように振り返った

その顔には少しずつ秋が忍び寄っていた

 

女性は引き返し、小走りに男性に近づいた

彼女は礼を言って微笑んだ

それは決して愛想笑いではなく

心からのものだと伝わった

落としても音もしない小物を拾ってもらった嬉しさなのか

それとも、別に理由があるのかは知らない

ただ僕は、微笑ましい光景というよりも

どういう訳か、悲しかった

彼女の微笑みが悲しかった

 

 

コメント
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