★Etudes
(演奏:横山 幸雄)
1.ショパン:12の練習曲 作品10
2.ショパン:12の練習曲 作品25
3.ショパン:3つの新しい練習曲
(2000年)
外国人編に続き邦人編です。いゃ~凄いですね、この顔ぶれ。。。
入賞者の半数近くを邦人で占める勢い。日本人のレベルが高いのか、純粋にエントリーしている人の割合を反映しているだけなのか・・・?
この大会はご承知のように高橋多佳子さんも入賞されていますが、別記事でいっぱい出ていただいているので(ディスク紹介はサインをもらったものしかしていないので、実はまだ少ないのですが順次出てくると思います。)今回はお休みいただいています。
まずは、さるかたにお詫びを。。。
及川さ~ん、すいません。
写真が3つまでしかアップできなかったんで、あなただけあぶれてしまいましたぁ。
入賞3名の男性の中であなたが一番男前だったんで、私のやっかみがはいったんですよぉ~~。
もちろんおじさんの純情なキモチとして、女性の田部さんをはずすわけにいかないしぃ~。
だから許してつかーさい。
それにしても、多佳子さんに先のケナーやサジュマンも含めて、この面々にどうやって順位をつけろっていうんでしょうかね。審査員のかたがた、ホントよくやりましたよね。
どこのなにが決めてだったんだろう???
しかしこれらのみなさんがたは、多佳子さんを始めとして家族(かみさんや子供を含めて)に実演でもディスクでも感銘を与えてくれた人たちばかりなので、私は感謝するばかりでございます。
やはりトップはこのかたに切っていただくのがスジだと思いますので、横山幸雄さんのショパンのエチュードから。
このディスクはタイトルにショパンの名前がないモンで、曲名のところに全部ショパンと入れなくちゃいけなくなってしまったではないか!
・・・などとこちらの事情の勝手ないいがかりをつけてと・・・。
以前リストの超絶技巧練習曲集での文字通り鮮やかな超絶技巧を絶賛させていただきましたが、ここでも凄いモンです。
普通の人の技巧レベルを16ビットのCDだとすると、何倍のオーバーサンプリングという比較ではなく、DSDのSACDフォーマットにヴァージョン・アップされてますっていうぐらい凄い。
よくここまで弾けるモンですねえ。「唖然として言葉を失うばかりかわけもわからず笑っちゃう」と仰る方を知っていますが、私もそのとおりですねえ。とにかく凄いことをしているのに聴き手には全くストレスがない。演奏なさっている横山さんにストレスがあるかどうかは別問題ですけど。
この“ストレスがない”という点については、ポリーニよりもボレットよりも凄いと思います。
まだ若い学生さんにはこの演奏を聴かせてあげたら、指の運動・ペダルの効果などおよそピアノの音を出すことに関するゴールイメージが極めて鮮明に沸くんじゃないですか?
いや聴いた瞬間に、諦めて挫折しちゃう人が出るかもしれないからやめたほうがいいかな。
事実、横山さんは調律・整音にも通じていて、コンサート時の音の調整時など響板の角度などまでスタッフと一緒に意見交換してらっしゃって、その見識の確かなことにはその道のプロも一目置いているとか。
やっぱり若い人のお手本ですね。
でも私のホンネはここまで突き抜けてうまくなくていいから、なんかこんなことで苦労しましたっていう痕跡が残っていてもいいのではないかと思っちゃうんですよね。それが味わいってものになるとも思うので・・・。
でも革命や作品25-2など運動性能を求められる曲での演奏は、人類のひとつの到達点でしょうね。
さてこのディスクには横山さんのサインがあるとおり、子供も入ることが出来るコンサートに家族で行ってそのときにいただいてきました。主語は「かみさん」ですが。実際かみさんは横山さんのファンで彼の他のショパンのCDも持ってるし、矢部さんとのデュオのCDも持ってます。彼女だけでコンサートに行ってサインをもらってるくらいだし・・・。
私が多佳子さんに入れ込む以前に、彼女は着実に行動してましたね。私ほど入れ込むヒマはもちろん取れないでしょうが、純粋に彼の音楽を聴いて心地よくなっている。確かにかみさんが望む効能は、横山さんの演奏に良くも悪くもすべてあるから・・・。否、横山さんの演奏にしかないといいなおした方がいいかもしれません。
ところで子供も聴けるコンサート、両親は一生懸命聞いたんですが、子供はまだ小さかったので途中で寝ちゃったんですね。それほどまでに心地よい演奏だったのでしょう。
家で私がピアノをひくと、サイレントモードにしていても階が違うところで寝ている娘が「カタカタがうるさい」と文句を言うぐらいですから、音が出ていて安眠できるというのは凄いことです。
え、プロなら当たり前ですって!?
サインをいただく際(かみさんは子供を抱っこしてたので、私がもらって来いと言いつけられた)に素晴らしい演奏への謝辞を申し上げたところ「またお運びください」だって・・・。
凄くものごしがやわらかくて、ここでもストレスを感じさせない方でした。
小市民とは住んでる世界が違うのかもね。
後にご紹介する有森さんも子供向けのコンサートをなさっているし、同世代の世界的に名のある演奏家の方がそういう努力をしていただいていることに子供を持つ親として感謝ですねぇ。
★メンデルスゾーン:無言歌集
(演奏:田部 京子)
◇メンデルスゾーン:無言歌集より25曲抜粋
(1993年録音)
田部京子さんが多佳子さんと同じコンクールに入賞されていたことは、よくコメントでいろいろご教示下さる“アル中のトスカ兄さん”さんに、それこそコメントで引用いただいたサイトを見て初めて知りました。
“アル中のトスカ兄さん”さん、ありがとうございました。
実はこのディスクやシューベルトのD.960のディスクが発表されたころは、今高橋多佳子ファンでいるのに近いぐらいの状態で田部京子さんを聴いていました。
もちろん今でも発表される盤はちゃんとチェックしています。ただその感想のもち方がちょっと変わってきてしまってまして、前にも書きましたが、どんな曲であってもその内容よりも「田部京子とはこんなにも弾ける人なんだ」ということに注意が行ってしまいがちなのです。
「それで何の文句があるのか?」というご意見が出そうですが、ニュアンスとしてご理解いただきにくいと思うので敢えて突飛な例えをさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
田部さんの昨今のシューベルト(シベリウスやドビュッシーよりも傾向が顕著なので)は『鉄面皮』であるような気がするのです。ガンダムのモビルスーツを着てるみたいといったほうがいいのかも知れません。
どっちもわかりにくいですか・・・?
要するに完全成型で私の感覚が入り込む余地がないというイメージなのです。
その下に田部さんご本人のようなステキな心象があるに相違ないんだけど、透明度100%の硬質アクリルケースで覆われていて手にとることができないといった風情。
伝わっていますでしょうか?
それがこのディスクのころは演奏のレベルの高さを備えながら、「この曲のよさを私なりに表現してみましたがいかがでしょうか、お気に召しますでしょうか?」といった感じで楚々として非常に好感度が高いのです。
それと比較すると現在は「この曲の“私の演奏”はいかがでしょうか?」という感じになる。それがまったく隙なく凄いもので心情としては敬していながら、ちょっと遠くに感じられてしまっているということです。
むしろ私が引いちゃっているのかも知れません。
とはいえここまでさまざまな楽曲を手の内に入れられるのは容易なことではありません。やっぱり素晴らしいピアニストだと思います。
ところでこのディスクはそんな楽曲の詩情を、全世界共通語を使いながら日本人にも判りやすい形で自然と引き出していることにかけては随一のものであるといえましょう。
メンデルスゾーンの無言歌集のうちでは最も聴きやすい盤だと思います。今聴きなおしながら書いてるんですけど、本当になんという温度感!!
田部さんはそこでも凛と立ってるんですが、思わず近寄って声をかけたくなってしまう親しさが感じられるような気がする・・・。おじさんになってからは、なおさらそれを強く感じる!!
先般でたザラフィアンツの盤などは、彼の持っている世界観とピアノの玲瓏な音色で勝負しているまったく違ったアプローチによるもの。
そういった好対照なディスクを含めてさまざまなアプローチがあるなか、曲本来の良さをフルに生かしたという点で王道を行く作品は、いつまでもこの曲の代表盤たりえると私は信じています。
★プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第3・6&8番
(演奏:有森 博)
1.グリンカ=バラキレフ:ひばり
2.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番 変ロ長調 作品84
3.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第3番 イ短調 作品28
4.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 作品82
5.プロコフィエフ:悪魔的暗示 作品4-4
6.グルック=ケンプ:精霊の踊り
(2002年録音)
この方の演奏も横山さんとは違った意味で鮮やかですね。
もちろんテクニックも凄いんだけど、出てきた音の響きにこそより意が注がれているという感じでしょうか。
ディスクに関してはすごく素晴らしい演奏だと思うのですが、肝心の私がプロコが実は苦手なもので・・・。それを覆すわけにはいきませんでしたね。でも、着実に私の中に経験値として蓄積されているので、いつか開眼する日がくるでしょう。
なにしろ私にとってプロコは多佳子さんやソコロフの聴くだに凄い演奏とわかる7番の演奏を聴いても、その中身はまだ摑みきれないというぐらい次元の違う作風の作曲家ですから・・・。相当なパラダイムの転換が必要なように思います。
ですから最初の感想は、ポゴレリチの演奏によってわずかに私にレセプターがある第6番、作品82の戦争ソナタの最初の曲から感じた印象です。一応注釈を・・・と。
それよりも最初と最後に置かれた小品における響きが繊細で・・・、なんと“感覚”に訴えてくることよ。私はこれだけで大満足です。
有森さんの子供向けコンサートにも行きましたけれど、その際覚えていることが3つ。
ブルグミュラー25練習曲から5曲弾かれて“つばめ”がもの凄かったです。当たり前ですが超スムーズで、同じ曲がこうも表情豊かになるものだと感じ入りました。
なにしろこれらの曲は家での私の主要レパートリーなもので。。。
私がこの道のプロなら店じまいだな!(比較するなと殴られそうですな)
後半最後に戦争ソナタ(7番か8番かは忘れました)を弾くと会場に告げて「ちょっと難しい曲で30分ぐらいかかる」と正直に告白され「“えーっ”とか言わないで我慢して聴いてね」と嘆願されたにもかかわらず会場は“えーっ”となったこと。
演奏は大熱演(全部の曲が大熱演だったような気もする)で素晴らしいものでした。
ディスクだと「なんだこりゃ」となる曲でも、実演だと目を見開かされてしまうことがありますがまさにこれは典型ですね。ただし私にとってですが・・・。
最後にアンコール。
“主よ人の望みの喜びよ”に始まってシューベルトの歌曲のトランスクリプション、ショパンの作品25と作品28の終曲など、何回もカーテンコールから出てくるたびに弾いてくださって、大人の私も嬉しかったし子供達もむしろ喜んでいたように思います。
5曲以上弾かれたんじゃなかったかな。「調子に乗りすぎました」と仰っていましたが、そんなところにこそ私はむしろ惹かれたりします。
堅苦しいコンサートもいいですが、子供向けということを抜きにして、アカデミーの権化みたいな因習を礼賛するような風潮はご再考願いたいと思っております。
どんなギョーカイにもそういうのってありがちですけどね。
(演奏:横山 幸雄)
1.ショパン:12の練習曲 作品10
2.ショパン:12の練習曲 作品25
3.ショパン:3つの新しい練習曲
(2000年)
外国人編に続き邦人編です。いゃ~凄いですね、この顔ぶれ。。。
入賞者の半数近くを邦人で占める勢い。日本人のレベルが高いのか、純粋にエントリーしている人の割合を反映しているだけなのか・・・?
この大会はご承知のように高橋多佳子さんも入賞されていますが、別記事でいっぱい出ていただいているので(ディスク紹介はサインをもらったものしかしていないので、実はまだ少ないのですが順次出てくると思います。)今回はお休みいただいています。
まずは、さるかたにお詫びを。。。
及川さ~ん、すいません。
写真が3つまでしかアップできなかったんで、あなただけあぶれてしまいましたぁ。
入賞3名の男性の中であなたが一番男前だったんで、私のやっかみがはいったんですよぉ~~。
もちろんおじさんの純情なキモチとして、女性の田部さんをはずすわけにいかないしぃ~。
だから許してつかーさい。
それにしても、多佳子さんに先のケナーやサジュマンも含めて、この面々にどうやって順位をつけろっていうんでしょうかね。審査員のかたがた、ホントよくやりましたよね。
どこのなにが決めてだったんだろう???
しかしこれらのみなさんがたは、多佳子さんを始めとして家族(かみさんや子供を含めて)に実演でもディスクでも感銘を与えてくれた人たちばかりなので、私は感謝するばかりでございます。
やはりトップはこのかたに切っていただくのがスジだと思いますので、横山幸雄さんのショパンのエチュードから。
このディスクはタイトルにショパンの名前がないモンで、曲名のところに全部ショパンと入れなくちゃいけなくなってしまったではないか!
・・・などとこちらの事情の勝手ないいがかりをつけてと・・・。
以前リストの超絶技巧練習曲集での文字通り鮮やかな超絶技巧を絶賛させていただきましたが、ここでも凄いモンです。
普通の人の技巧レベルを16ビットのCDだとすると、何倍のオーバーサンプリングという比較ではなく、DSDのSACDフォーマットにヴァージョン・アップされてますっていうぐらい凄い。
よくここまで弾けるモンですねえ。「唖然として言葉を失うばかりかわけもわからず笑っちゃう」と仰る方を知っていますが、私もそのとおりですねえ。とにかく凄いことをしているのに聴き手には全くストレスがない。演奏なさっている横山さんにストレスがあるかどうかは別問題ですけど。
この“ストレスがない”という点については、ポリーニよりもボレットよりも凄いと思います。
まだ若い学生さんにはこの演奏を聴かせてあげたら、指の運動・ペダルの効果などおよそピアノの音を出すことに関するゴールイメージが極めて鮮明に沸くんじゃないですか?
いや聴いた瞬間に、諦めて挫折しちゃう人が出るかもしれないからやめたほうがいいかな。
事実、横山さんは調律・整音にも通じていて、コンサート時の音の調整時など響板の角度などまでスタッフと一緒に意見交換してらっしゃって、その見識の確かなことにはその道のプロも一目置いているとか。
やっぱり若い人のお手本ですね。
でも私のホンネはここまで突き抜けてうまくなくていいから、なんかこんなことで苦労しましたっていう痕跡が残っていてもいいのではないかと思っちゃうんですよね。それが味わいってものになるとも思うので・・・。
でも革命や作品25-2など運動性能を求められる曲での演奏は、人類のひとつの到達点でしょうね。
さてこのディスクには横山さんのサインがあるとおり、子供も入ることが出来るコンサートに家族で行ってそのときにいただいてきました。主語は「かみさん」ですが。実際かみさんは横山さんのファンで彼の他のショパンのCDも持ってるし、矢部さんとのデュオのCDも持ってます。彼女だけでコンサートに行ってサインをもらってるくらいだし・・・。
私が多佳子さんに入れ込む以前に、彼女は着実に行動してましたね。私ほど入れ込むヒマはもちろん取れないでしょうが、純粋に彼の音楽を聴いて心地よくなっている。確かにかみさんが望む効能は、横山さんの演奏に良くも悪くもすべてあるから・・・。否、横山さんの演奏にしかないといいなおした方がいいかもしれません。
ところで子供も聴けるコンサート、両親は一生懸命聞いたんですが、子供はまだ小さかったので途中で寝ちゃったんですね。それほどまでに心地よい演奏だったのでしょう。
家で私がピアノをひくと、サイレントモードにしていても階が違うところで寝ている娘が「カタカタがうるさい」と文句を言うぐらいですから、音が出ていて安眠できるというのは凄いことです。
え、プロなら当たり前ですって!?
サインをいただく際(かみさんは子供を抱っこしてたので、私がもらって来いと言いつけられた)に素晴らしい演奏への謝辞を申し上げたところ「またお運びください」だって・・・。
凄くものごしがやわらかくて、ここでもストレスを感じさせない方でした。
小市民とは住んでる世界が違うのかもね。
後にご紹介する有森さんも子供向けのコンサートをなさっているし、同世代の世界的に名のある演奏家の方がそういう努力をしていただいていることに子供を持つ親として感謝ですねぇ。
★メンデルスゾーン:無言歌集
(演奏:田部 京子)
◇メンデルスゾーン:無言歌集より25曲抜粋
(1993年録音)
田部京子さんが多佳子さんと同じコンクールに入賞されていたことは、よくコメントでいろいろご教示下さる“アル中のトスカ兄さん”さんに、それこそコメントで引用いただいたサイトを見て初めて知りました。
“アル中のトスカ兄さん”さん、ありがとうございました。
実はこのディスクやシューベルトのD.960のディスクが発表されたころは、今高橋多佳子ファンでいるのに近いぐらいの状態で田部京子さんを聴いていました。
もちろん今でも発表される盤はちゃんとチェックしています。ただその感想のもち方がちょっと変わってきてしまってまして、前にも書きましたが、どんな曲であってもその内容よりも「田部京子とはこんなにも弾ける人なんだ」ということに注意が行ってしまいがちなのです。
「それで何の文句があるのか?」というご意見が出そうですが、ニュアンスとしてご理解いただきにくいと思うので敢えて突飛な例えをさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
田部さんの昨今のシューベルト(シベリウスやドビュッシーよりも傾向が顕著なので)は『鉄面皮』であるような気がするのです。ガンダムのモビルスーツを着てるみたいといったほうがいいのかも知れません。
どっちもわかりにくいですか・・・?
要するに完全成型で私の感覚が入り込む余地がないというイメージなのです。
その下に田部さんご本人のようなステキな心象があるに相違ないんだけど、透明度100%の硬質アクリルケースで覆われていて手にとることができないといった風情。
伝わっていますでしょうか?
それがこのディスクのころは演奏のレベルの高さを備えながら、「この曲のよさを私なりに表現してみましたがいかがでしょうか、お気に召しますでしょうか?」といった感じで楚々として非常に好感度が高いのです。
それと比較すると現在は「この曲の“私の演奏”はいかがでしょうか?」という感じになる。それがまったく隙なく凄いもので心情としては敬していながら、ちょっと遠くに感じられてしまっているということです。
むしろ私が引いちゃっているのかも知れません。
とはいえここまでさまざまな楽曲を手の内に入れられるのは容易なことではありません。やっぱり素晴らしいピアニストだと思います。
ところでこのディスクはそんな楽曲の詩情を、全世界共通語を使いながら日本人にも判りやすい形で自然と引き出していることにかけては随一のものであるといえましょう。
メンデルスゾーンの無言歌集のうちでは最も聴きやすい盤だと思います。今聴きなおしながら書いてるんですけど、本当になんという温度感!!
田部さんはそこでも凛と立ってるんですが、思わず近寄って声をかけたくなってしまう親しさが感じられるような気がする・・・。おじさんになってからは、なおさらそれを強く感じる!!
先般でたザラフィアンツの盤などは、彼の持っている世界観とピアノの玲瓏な音色で勝負しているまったく違ったアプローチによるもの。
そういった好対照なディスクを含めてさまざまなアプローチがあるなか、曲本来の良さをフルに生かしたという点で王道を行く作品は、いつまでもこの曲の代表盤たりえると私は信じています。
★プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第3・6&8番
(演奏:有森 博)
1.グリンカ=バラキレフ:ひばり
2.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番 変ロ長調 作品84
3.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第3番 イ短調 作品28
4.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 作品82
5.プロコフィエフ:悪魔的暗示 作品4-4
6.グルック=ケンプ:精霊の踊り
(2002年録音)
この方の演奏も横山さんとは違った意味で鮮やかですね。
もちろんテクニックも凄いんだけど、出てきた音の響きにこそより意が注がれているという感じでしょうか。
ディスクに関してはすごく素晴らしい演奏だと思うのですが、肝心の私がプロコが実は苦手なもので・・・。それを覆すわけにはいきませんでしたね。でも、着実に私の中に経験値として蓄積されているので、いつか開眼する日がくるでしょう。
なにしろ私にとってプロコは多佳子さんやソコロフの聴くだに凄い演奏とわかる7番の演奏を聴いても、その中身はまだ摑みきれないというぐらい次元の違う作風の作曲家ですから・・・。相当なパラダイムの転換が必要なように思います。
ですから最初の感想は、ポゴレリチの演奏によってわずかに私にレセプターがある第6番、作品82の戦争ソナタの最初の曲から感じた印象です。一応注釈を・・・と。
それよりも最初と最後に置かれた小品における響きが繊細で・・・、なんと“感覚”に訴えてくることよ。私はこれだけで大満足です。
有森さんの子供向けコンサートにも行きましたけれど、その際覚えていることが3つ。
ブルグミュラー25練習曲から5曲弾かれて“つばめ”がもの凄かったです。当たり前ですが超スムーズで、同じ曲がこうも表情豊かになるものだと感じ入りました。
なにしろこれらの曲は家での私の主要レパートリーなもので。。。
私がこの道のプロなら店じまいだな!(比較するなと殴られそうですな)
後半最後に戦争ソナタ(7番か8番かは忘れました)を弾くと会場に告げて「ちょっと難しい曲で30分ぐらいかかる」と正直に告白され「“えーっ”とか言わないで我慢して聴いてね」と嘆願されたにもかかわらず会場は“えーっ”となったこと。
演奏は大熱演(全部の曲が大熱演だったような気もする)で素晴らしいものでした。
ディスクだと「なんだこりゃ」となる曲でも、実演だと目を見開かされてしまうことがありますがまさにこれは典型ですね。ただし私にとってですが・・・。
最後にアンコール。
“主よ人の望みの喜びよ”に始まってシューベルトの歌曲のトランスクリプション、ショパンの作品25と作品28の終曲など、何回もカーテンコールから出てくるたびに弾いてくださって、大人の私も嬉しかったし子供達もむしろ喜んでいたように思います。
5曲以上弾かれたんじゃなかったかな。「調子に乗りすぎました」と仰っていましたが、そんなところにこそ私はむしろ惹かれたりします。
堅苦しいコンサートもいいですが、子供向けということを抜きにして、アカデミーの権化みたいな因習を礼賛するような風潮はご再考願いたいと思っております。
どんなギョーカイにもそういうのってありがちですけどね。