昔々お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川に洗濯に行っていた。
今日は、お婆さんは家でテレビを見ているので、お爺さんはコイン精米にお米をつきに行きましたとさ、になった。
大体一回に10Kgを精米する。
10Kgだと100円で済むし、それ以上精米しても搗き立ての鮮度が失われそうな気がするからである。

精米機の横には、米糠は持ち帰り自由との表示がなされている。
糠漬けなどに利用する人には好都合なのだろう。
我が家では、そんな特技も熱意もないので、いつもふ~んと見つめるだけである。
以前扉を開けてみたら、持ち帰らないと保管に支障が出そうなくらい溜まっていたことがあった。
一旦家に引き上げて、大きなビニール袋を持ってきて持ち帰ったが処置に困った挙句、菜園の肥料にしたことを思い出した。
あれ以来、米糠の扉は開けたことがない。
米がつきあがるまでは、ぼ~っと付近の景色などを見ながら出来上がりを待つ。

道路の向かい側は神社で、鎮守の森というにはあまりに貧弱になってしまった木立がみえる。
道路の拡張工事などでは、商店や一般の住宅などは立ち退きや補償などややこしい問題が発生しがちだが、公共の空間ともいうべき神社などは直ぐカモにされる。
神社用地は、道路の拡張形状に合わせてスパッとカットされて段々直線的に狭くなっていく。
カットされた土地の法面は、建設ブロックで補強され、新しく石の玉垣を造ることになる。
そこで、氏子一同による寄進が行われる。

で、寄進の額によるものか、はたまた氏子総代以下の役職によるものか知らないが、正面鳥居の付近からぐるりと玉垣に氏名が彫り込まれた。
私も町内のことゆえ、ささやかながら寄進した。
ところが、なんと私の名前を刻んだ石が鳥居の横の、アメリカで言うなら国務長官、中国なら首相、日本なら副総理か官房長官くらいの場所に鎮座していた。
「凄いですね。相当な金額を頑張りましたねえ」等と数名の友人知人に言われて、見に行ったら確かに私の名前がで~んと建っていた。
そこでふと思い至った。
この町に引っ越しをした頃に郵便物がよく間違われ、果ては銀行までが事務処理を誤ったことのある全くの同姓同名が、同じ町内に居ることを。
違いは、先方は不動産関係の資産家で、当方は貧乏人というところ。
わざわざ感心してくれた人には悪いので、説明を加えて納得してもらっていたが段々おっくうになってきた。
あれから何年も経って、ボ~っと鳥居などを眺めても、あの位置にある筈の名前のことは気にもならなくなった。
やがて米が搗き上がった旨の電子音が聞こえてきた。
搗き上がった白米を袋に入れて引っ張り出し、表に出た。
「有難うございました。またのご利用をお待ちいたします」と丁寧な言葉使いで機械がお礼を言っているのが後ろで聞こえた。
機械はまじめだなと、ちょっと見直した。
にほんブログ村
今日は、お婆さんは家でテレビを見ているので、お爺さんはコイン精米にお米をつきに行きましたとさ、になった。
大体一回に10Kgを精米する。
10Kgだと100円で済むし、それ以上精米しても搗き立ての鮮度が失われそうな気がするからである。

精米機の横には、米糠は持ち帰り自由との表示がなされている。
糠漬けなどに利用する人には好都合なのだろう。
我が家では、そんな特技も熱意もないので、いつもふ~んと見つめるだけである。
以前扉を開けてみたら、持ち帰らないと保管に支障が出そうなくらい溜まっていたことがあった。
一旦家に引き上げて、大きなビニール袋を持ってきて持ち帰ったが処置に困った挙句、菜園の肥料にしたことを思い出した。
あれ以来、米糠の扉は開けたことがない。
米がつきあがるまでは、ぼ~っと付近の景色などを見ながら出来上がりを待つ。

道路の向かい側は神社で、鎮守の森というにはあまりに貧弱になってしまった木立がみえる。
道路の拡張工事などでは、商店や一般の住宅などは立ち退きや補償などややこしい問題が発生しがちだが、公共の空間ともいうべき神社などは直ぐカモにされる。
神社用地は、道路の拡張形状に合わせてスパッとカットされて段々直線的に狭くなっていく。
カットされた土地の法面は、建設ブロックで補強され、新しく石の玉垣を造ることになる。
そこで、氏子一同による寄進が行われる。

で、寄進の額によるものか、はたまた氏子総代以下の役職によるものか知らないが、正面鳥居の付近からぐるりと玉垣に氏名が彫り込まれた。
私も町内のことゆえ、ささやかながら寄進した。
ところが、なんと私の名前を刻んだ石が鳥居の横の、アメリカで言うなら国務長官、中国なら首相、日本なら副総理か官房長官くらいの場所に鎮座していた。
「凄いですね。相当な金額を頑張りましたねえ」等と数名の友人知人に言われて、見に行ったら確かに私の名前がで~んと建っていた。
そこでふと思い至った。
この町に引っ越しをした頃に郵便物がよく間違われ、果ては銀行までが事務処理を誤ったことのある全くの同姓同名が、同じ町内に居ることを。
違いは、先方は不動産関係の資産家で、当方は貧乏人というところ。
わざわざ感心してくれた人には悪いので、説明を加えて納得してもらっていたが段々おっくうになってきた。
あれから何年も経って、ボ~っと鳥居などを眺めても、あの位置にある筈の名前のことは気にもならなくなった。
やがて米が搗き上がった旨の電子音が聞こえてきた。
搗き上がった白米を袋に入れて引っ張り出し、表に出た。
「有難うございました。またのご利用をお待ちいたします」と丁寧な言葉使いで機械がお礼を言っているのが後ろで聞こえた。
機械はまじめだなと、ちょっと見直した。
