気分がすぐれない。またややこしい本に遭遇してしまった。
我々の世代で解決出来る問題でもなさそうな気になってしまう。
内容は、竹島(韓国名独島)の領有権を巡る問題を、両国の学者が研究者の立場で述べている。
資料は同じでも解釈が違ったり、お互いの国で文書として残っているものの誤解や風聞がそのまま記述されていたり、相手国での対応と国内向けの対応が違うところなどは、昔も今も変わらないと思えるような部分もあるし・・・・。
お互い問題があるぞというので、遠慮して近寄らなかった時期もあったり、地方の方から幕府にお伺いを立てても、はっきりした決着を付ける態度は幕府の中枢からは得られなかったり、ややこしい問題の交渉事を一藩に命じたりと・・・まったく日本の政治は今も徳川時代もさほど変わらないようだ。
何とも複雑な気分になる本が・・・。
「竹島・独島・・史的検証」(日)内藤正中(韓)金柄列による共著(岩波書店)2007年4月刊行。
大統領が渡って話題を振りまいた今年より遡ること5年前に発刊されている。
これ程島の名前が変わったりした地域も珍しいのではないかと思われる。
韓国名、日本名、イギリス・フランス・ロシアなどなどまあまあ勝手に命名して勝手に適当な地図を作って・・・挙げ句の果てはあそこの国でこう呼んでいる島は、この島のことらしいと云った類の話が時代と共に進んでいく。
決定的なのは明治時代後期の竹島編入とサンフランシスコ講和条約・そしてマッカーサーラインに引き続く李承晩ラインあたりらしい。
お互いが固有の領土というからには、お互いにそれなりの理由があるはずなのである。
排他的経済水域などの考え方が出る前と以降では、小さな島や岩礁などの持つ意味が異なってきた。
この本の中ではお互い自国の国益を考慮しながらの自説の展開がなされているが興味深い部分もある。
国際司法裁判所での裁定を仰ごうという日本の態度に、固有の領土であって実効支配もしているのでその必要はないと突っぱねているのが韓国の現状である。
しかし、将来信頼にたる厳格な国際司法裁判が出来るのであれば、そこでの裁定も考え方としては、あり得ると韓国の研究者も述べている。(ただし2007年現在の本の話だが・・・)
この際、決定的なポイントとなる係争の時点の問題が何処になるかで話が変わってくると云う。
いずれにしても固有の領土の大合唱と、実効支配の一点張りでは話は進まない。
北方領土、竹島、尖閣諸島・・・いずれも国境問題だが様相は微妙にことなる。
国内政治が影響して緊張が高まりメディアが煽り、武力が乗っかるとなると、先の戦争の教訓はまったく活かされていないことになる。
昔ながらのノリで愛国心騒ぎをやっていると、グローバル化した経済が立ちゆかなく成ることも十分考える必要がある。
日本にももっと長期な国家戦略とそれを可能にする情報の収集分析能力の向上が必要だと痛切に感じる。
民主党が国家戦略を練る部署を作ると選挙で云ったときは、やっと必要性が判ったのかと喜んでいたら・・・・何のことはない、明日の経済はどうする等というおよそ戦略などという字句を当てはめるにも恥ずかしい内容だったし、それすらも立ち消えになって久しい。
関係国や国際機関の中でどの様な働きかけや、真の国益に基づいた日常活動が出来るかがどうやら国の行く末や、隣国との関係にも必要不可欠だと判っていてもやってこなかったのがニッポンらしいと気づかされる。
読んで気分の晴れない本ではあるが、相手の言い分を聞く耳は持ちたい。