前回は、
Kenji Nakaiさんのレコーディング、ミキシングワークショップの話でした。
今回は、消費財メーカーで新商品開発一筋、叩き上げのブランドマーケター
山本康博氏を取り上げます(と言いましても、私のほとんど私のことですけど・・)。
リアルゴールドの缶パッケージは山本氏の企画でしたし、代表的な商品企画はJTの缶コーヒー「ルーツ」や「桃の天然水」です。
JTの飲料はサントリーになっちゃいましたけどね。
山本氏とは2010年でしたか、ある企画関係の勉強会でお世話になりました。
もちろん、講師は山本氏で私は受講者でした。
企画書やマーケティングレポートを書くとき、いきなりパワポを操作するのは馬鹿。
山本氏の会社では当然、厳禁。手書きを完成させてから初めてパワポに向かう。よくわかります。
まず、「ペーパーに手書き」が基本です。
この写真は、もう何年前になるでしょうか? 私が書いた調査レポートの手書きラフスケッチです。
さすがに今はもっとラフに書いてますが、調査スタート前、仮説からストーリーを展開しながら構成を考えます。
現在、ほとんどのネット系調査会社では、このような手書きでストーリーを展開する、なんてことは予算・スケジュール上、求められはしないでしょう。
限られた予算とスケジュールの中で、いきなりパワポというケースは普通かと思います。
現代のビジネスシーンでスピード感は大切です。
仕事にもレイヤーがありまして、山本氏のようなブランドマーケターの仕事と、ネット系調査会社の仕事を同一に考えるのは無理があるでしょう。
レポートにしても、ネット系調査会社の場合、定量の Fact Findingレベルのレポートはコメント作成などが自動化されるのも、そう遠い日のことではないでしょう。
マクロミルやクロス・マーケティングなど「人材消耗型ビジネスモデル」の企業では、社員の入れ替わりが激しいことから、企画書もレポートも汎用性のある定型化されたフォーマットを使う=テンプレート化、というのも知恵だと考えます。
私も現在、パートナー企業さんの中に複数の調査会社さんがありますが、スケジュールがタイトなとき、企画書を「いきなりパワポ」というケースはありますよ。
それはスピード感を重視する現実的な仕事スタイルだと思ってます。
それでもレポートのサマリーについては、私も手書きで(ときにはPost-itを使って)デザインします。
サマリーやインプリケーションは、その1~2枚を見ただけで全ての内容を理解していただく最重要のページです(特に時間のないエグゼクティブに対して)。
サマリーは箇条書き形式が一般的ですが、私の場合、構造化して図表形式にする習慣があります(過去数年間で、手抜きしちゃったこともありましたが、、ゴメンなさい!)。
こちらのの写真はボカしてありますが、やはり手で書くことで思考を深め、ヌケ・モレ・ダブリがあるか確認をします。
レポート作成で最も時間をかけて熟考するのがサマリーとインプリケーションですね。
音楽制作でも今は Pro Tools を使うことのほうが一般的です。
が、問題なのは、Pro Tools しか使うことができないエンジニアが、アナログの良質な音作りができるの? できないでしょ? ということです。
最初から、迅速化のため「いきなりパワポ」で育ってきた人が、調査会社より上のレイヤーの企業で手書きを求められても書けない。
「伝承」ということを考えると問題があるように感じられるんですよね。
手で紙に絵を書く、という行為はイコール「思考」することなんです。これが大事!
私サラリーマン時代、昨年夏まで所属していた
ユーティルという会社が
クロス・マーケティングに「救済」されて、私もクロスに出向させられてたんですが、そこでこんな光景を見ました。
グループ会社の
R&Dからもベテランリサーチャーが来てましたが、彼等はクロスの若いリサーチャーから頼まれて手書きで見事な企画案を渡すわけです。
「しめた!」とでも思ったんでしょうね、彼等はそれをそのままパワポに落とす。
「自分で絵を書く=思考する」ということをしない。
案件関与額とやらに縛られて(ま、私は確信犯的に無視してましたが-笑)、インスタントに案件をこなさなければならないので、もし「思考」しようと思っても出来ない。
自分のスキルを高めるより、工数の縛りの中で案件をこなすため、何ごともショートカットの解決策を求める。
だから、若いリサーチャーのスキルが伸びることはないんですよね。
こういう人達のことを「思考停止の馬鹿」といいます。
マネージャー職の連中は、この傾向がさらに著しかったのは当然でした。
これは間違いなく企業体質です。経営者の性格・資質がイコール会社全体、社員一人一人の性格・資質なのです(転職で多くの企業を体験してきた私が自信を持って言える経験則です)。
良心的な仕事をする(あんたの会社にはもったいないぐらいの優秀な)リサーチャーに、リクルートから天下りしてきた馬鹿役員が、残業時間が長いとイチャモンをつけてきた話も聞きました。その馬鹿役員、システム系の社員の徹夜とかは自慢してたくせにね。。
私の場合、とことんクロスとは相性が悪かったですね(笑)。
あっ! 経営幹部以外では、個人的には嫌いな人は(ほとんど)いませんよ。サラリーマンには向いていない私の資質ゆえ、というのもありますしね。
ま、問題と深刻に考えることもないでしょうね。
スキルアップは誰にでも必須なわけじゃありませんし。
ご自分に合った「水」の中で居心地の良さを求めることを否定はしません。
また、マーケティングリテラシーの高いナショナルブランド企業では、調査会社のレポートに「サマリ・コメント不要」というケースもあります。
これもメーカーサイドのマーケターの能力が高ければ、調査会社に「そこまで」は求めない、という傾向が高まるんじゃないかな? という予測の根拠の1つでもあります。
私は、たとえ予算の少ないプロジェクトでも納品までの時間の余裕があれば、手書きを心掛けています。
そうしないと自分の能力が「劣化」しますから。
フリーランス、個人事業主ですとそれも可能なんですね。
自分の時間をねん出すればいいだけの話なので。
音楽制作でも、80年代から吉田拓郎のような Bigアーティストはコンピュータを使った作曲・アレンジとかを進めておられたはずです。
しかし、ライブではきちんと生のミュージシャンで素晴らしいステージが再現できるのです。
ツールも使い方次第なんでしょうね。
若い音楽人でもスキルアップというより、「いい音」を希求する人達は少なくないと信じてます。
最後になりましたが、山本氏のプロフィールに「失敗例」が100あると書かれてましたが、これは「勲章」でもあるんですね。
失敗例という裾野をピラミッドとして、頂点に大ヒットがあるわけですから。
音楽でもどの世界でも同じだと思います。
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