【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

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上木彩矢 天性の Female Rocker

2007年07月12日 | 女性アーティストブランド価値評価・構造
 こんにちわ! マーケティング・アナリスト 井上秀二です。

 今回は3月以来の「女性アーティストブランド価値評価・構造」です。
 このシリーズ、お久しブリトニー、というわけですね。。。

 前職での調査から早1年が過ぎました。
 1年も経てば、特に新人アーティストの場合、
 メディア露出やリリースを重ねましたから、
 認知度や好感度のデータも変化していることでしょう。
 本当は1年位のタームや、リリースのタイミングでデータを取得し、
 時系列での変化を見るというのが理想的なんですけどね。
 続編ということで50人もの女性アーティストのデータを取る予定はございません。
 数百万円かかってしまいますので・・・。
 ちなみに男性アーティストの調査も計画しておったのですが、
 いかんせん、実施する前に会社閉鎖が決まりましたものでして。。。
 しかし、女性アーティストだけでも調査をさせて頂けたことは
 感謝しても感謝しすぎるということはありません。

 そんな事情の下でも、
 女性アーティストの価値構造・ブランド価値評価のパターンは確立しております。
 次のフェーズといたしましては「認知度」を掛け合わせた総合評価でしょうか。
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 タイトル写真は、上木彩矢のマキシ『ミセカケの I Love you』です。

 この方の曲の初めて聴いたのは、配信サイトでB'zのカバー曲「ピエロ」を購入した時でした。
 その時は、歌唱力やFemale Rock特有のテーストよりも、
 あらためてB'z稲葉氏の“オリジナリティ”を再認識したものでした。
 つまり、この曲も別のアーティストが歌うと“普通のロック”であり、
 稲葉氏が歌うと、“稲葉節ロック”になるんだなぁ~と。

 なんだかんだそんな感じで日々が過ぎ、
 前職での調査で上木彩矢のデータを見たところ、大いに気になりだして、
 このマキシ(↓)を購入してみたり。

 
 マキシ『眠っていた気持ち 眠っていたココロ』

 2006年3月デビューの彼女、
 1年前の調査での認知度は全50アーティスト中48位と低かったのですが、
 デビュー前から積極的にインディーズで活動。
 ファッション誌からも大いに注目され、
 コア層のブランド・イメージのコアは形成されていたようです。

 よって母数は少ないものの、相当強いファンのロイヤリティを形成。
 彼女を「好き」な層のCD購入比率は高かったです。
 性別では男性、年代別では「20代」。
 認知度・好感度とも当然「10代」が高かったですね。
 (好感度は「40歳以上」でも高くなっていましたが)

 インディーズ出身のロック系アーティストではよくあるパターンです。
 (ヒップホップ系でも同傾向が見られますが。つまり「尖度」でしょうね)

 昨年、「Mステ」に出演していた彼女を数秒だけ観て思いました。
 ロックアーティストに必要な、いい意味での「ふてぶてしさ」があり、
 生得的なロックテーストを持っているのではないかと。
 プロモーションで「お願いします!」的な番組に出演しても、独特のオーラがあった。
 最近は、女性ヴォーカリストにギターを持たせてロック色を添加させようとする傾向が強いんですが、ピンはおろか、4ピース、5ピースの女性ロックバンドのメンバーが束になってかかっても上木彩矢一人には敵わない、という感じではないでしょうか?

■価値構造

 彼女の価値構造を簡潔に言えば、

  ファッションセンスの良さと新鮮さが魅力度・好感度に貢献し、
  時代性のある存在感がカッコいい。

 ロックのフォーマット自体は決して新しくはないのですが、
 長きに渡り、ドメスティックではFemale Rockerが存在しなかったのですから、
 若年層にとっては「時代遅れ」ではないのでしょうね。

 By the way,
 以前、このシリーズについて、音楽マーケターの知人から、

  「ブログでここまで書いちゃっていいの?」

 と問われたことがありました。
 このブログでの記述は、私の「アーティスト・ブランド論」のご紹介であり、
 私が販売委託を請け負っている前職時作成マーケティングレポートの営業的な意味合いもあるのですが、数字は出しておりません。
 勿論、守秘義務契約を結んだクライアント企業様のデータを流出させているわけでもありません。

 さらに「価値構造」(これは2007年になって算出を始めました)で記述している内容は、
 「全体」の傾向だけです。

 でも、たまにはネタをお見せします。。。
 以下は特定のお客様だけにお渡しするサンプル(無料)です。
 今回だけですし、ここでは詳細は記述しませんが。

 実は価値構造は男女で結構違ったりします。

 

 一目見ただけで、男性のほうが価値構造が強いことがわかります。
 「歌唱力」「声質」のようにアーティスト自身に備わった素養と、
 「楽曲との整合性」や「時代性」の間に強い相関関係が見られます。
 (「相関関係」から「因果関係」を推測し仮説を構築するのは経験則です)

 対して女性は、「ルックス」「ファッションセンス」「時代性」という感覚価値以外、
 魅力度・好感度と相関の強い基本価値は見当たりません。

 今度は(↓)、魅力度・好感度など観念価値を高める基本価値、感覚価値の評価項目は何?
ということを性別に構造化したグラフィックです。

 

 男女で違いますね。
 男女計の数値と、男性・女性各々の数値の差を見て、
 観念価値への影響度の違いをざっくりと見たのが下図(↓)です。



 さらに、観念価値を高める評価項目を、
 「好き」「まあ好き」の回答者ごとに構造化したのが下表(↓)です。



 ファンのロイヤリティをさらに高める評価項目は何?
 グレーゾーンの層にファンになってもらうため強化すべき評価項目は何?

といった仮説を導き出します。

 なお、「あまり好きではない」「嫌い」との回答者の構造図もあるんですが、
 こちらは「強化すべき項目」というよりは、ネックになっている項目ということになります。。。

 「で、何から作るの?」ということですが、こういう表(↓)から作るのです。

 
 これを作るのも結構大変なんですが、わたしゃ慣れてますんで大丈夫です。
 ライセンス料年間数百万円の統計ソフトは使っていませんし、
 ましてやアルバイトさんを雇う余裕などございませんので。。。
 ただし、私が体を酷使するだけで、お安くご提供できるというメリットはあります(笑)。

 今までの記事では、上記のような構造図を使わず、ざっくりと上のような表を見て記述しました。
 一青窈と元ちとせの価値構造の酷似というのもありましたね(笑)。
 melody.と倖田來未の比較というのもありました。

■ブランド価値評価

  ①デビュー直後(1年前)のファンなのでまだ“濃い”こと、
  ②認知度が低いこと

 もあり、ファン層の拡大による変化は当然想定されますが、
 それでも1年前の調査では驚異的な結果でした。

 感覚価値、観念価値ともに50アーティスト中1位。
 「ルックスの良さ」「時代遅れではない」(ともに感覚価値)、「魅力的」(観念価値)ともに1位。

 しかも、観念価値の項目を見ると、
 「魅力的」のポイントが「好感が持てる」を上回り、
 口コミ誘発項目である「人に自慢したい」が「自分に必要」を上回っていました。
 (なかなか見当たらないパターンです)

 結構、驚異的でした。

 
 これ(↑)は販売用レポートとは別に、
 全50アーティストの平均値を50%として重みづけを行なった結果です。
 左下の「感覚価値」のレーダーチャートの大きさが驚異的です。


■CD購入のキードライバー

 「CD購入のキードライバー」は、観念価値全般と、
 「声質」「曲の洗練さ」「曲の構成の良さ」(基本価値)、
 「ファッションセンス」「ルックス」「楽曲との整合性」(感覚価値)
 といったところでしょう。

 ただし、感覚価値では、無料(違法)配信で楽曲を入手した回答者(10代男性の比率が高い)の評価が相対的に高いのが目立ちます。

 ついでといっては何ですが、
 「CD購入のキードライバー」のグラフも(↓)。
 
 小さくて何が何だかわからないでしょうけど、こんなのを使っていますということで。
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7月25日にはニューマキシ『明日のために』がリリースされるようです。
 いずれ、Female Rockerとしての“不動のポジション”を確立してほしいものです。
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