【ML251 (Marketing Lab 251)】文化マーケティング・トレンド分析

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絢香のリアリティ

2006年10月24日 | 女性アーティストブランド価値評価・構造
 10月15日(日曜日)深夜、日本テレビの『Music Lovers』を観ました。絢香さんとコブクロのお二人とのコラボレーションで、デビュー曲『I believe』を歌ったのは圧巻でした。もちろん私も『I believe』のCDは持ってます。
 翌日、mixiの友人(プロのMUSIC LIFE PLANNER。リアル知り合った方です)の日記で、この番組の感想を目にしました。彼が感じたことは以下の2点です。

 ①コブクロのお二人の熱唱のほうが『I believe』という唄のリアリティが感じられた
 ②彼女の詞は、果たして18歳の女性の「等身大」の世界なのだろうか?

 これはとても示唆に富んだ感想です。
 社会人経験、ストリートでの活動、5年前のデビューから今に至る道筋。一時は2~3万枚の売上に苦しみながらも、最新ベストアルバム『ALL SINGLES BEST』が発売3週でミリオンを達成したコブクロさん。
 地獄を見たこともあるかもしれません。そんな彼らが唄ってリアリティが伝わってくる唄なんでしょう、『I believe』という唄は。

 次に、「等身大な詞」という彼女のコンセプトについてです。
 中学生で音楽の世界へ志向、高校一年生で活動を開始した絢香さんは、福岡へ音楽理論の勉強に行くという極めて強い目的意識と行動力を持ち合わせた女性です。

 おそらく世間一般の「18歳」より進んだ経験と価値観を持ち合わせているのではないかと思います。
(「おそらく」というのは、①私が男性であること、②私の友人で18歳の女性がいないこと、③18歳の女性対象の調査データを持ち合わせていないからです)

 厳密な意味での「等身大」ではないかもしれません。しかし、10代の女性の経験から生まれて来た唄であることに変わりはありません。多くの人達に感動を届けるミッションを担っているアーティストという「立ち位置」での「等身大」なのです。

 酸いも甘いも経験した年長の人達が唄っても伝わるリアリティ。
 デビューというタイミングで、そんなリアリティのある唄を創ってしまったのは、ある意味大変なことかもしれません。

 リアリティのある唄とは?

 昨夜、NHKで9月につま恋で31年ぶりに開催された吉田拓郎さんとかぐや姫のコンサートの特集を観ました。絢香さんのレビューで取り上げるのもどうかな?と思いますが(笑)、たまたま観たので。

 吉田拓郎さんの『今日までそして明日から』という曲があります。この曲は拓郎さんが24歳のときにリリースされましたが、60歳になられた拓郎さんが今歌っても「リアリティ」があります。

 60歳は極端かもしれませんが、絢香さんの『I believe』、彼女が30歳になっても40歳、50歳になって唄ってもリアリティが色褪せることがない、そんな名曲ではないでしょうか?

 と言うことは、これから先、良いことも悪いことも体験されるであろう彼女が、どんなことがあっても「リアリティ」のある唄を私たちに伝え続けなければならない重責を負ってしまった、ということでもあるのです。デビューしたその時から。

 ちなみに、女性アーティストのデータを統計的に処理した結果をみると、彼女の場合、同世代、つまり10代の女性よりも20代の女性に好かれる傾向がみられます。男性の場合は20代とともに30代。
 「認知度」は10代で最も高いので、単純な「好感度」は10代で最も高いのは当然なんですが、彼女には幅広い層に受け入れられる素地があるということです。
 もちろんイメージターゲットは彼女の同世代であるべきなんですけどね。
*************************************************************************** 9月27日、4枚目のシングル『三日月』がリリースされました。
 au by KDDI 「LISMO!」のCM、NHK「つながるテレビ@ヒューマン」テーマソングとのタイアップ効果もあり、オリコン初登場1位でしたね。2、3週目も3万枚超(ともに2位)。

 遠距離恋愛をテーマにしたこの唄、デビュー前から唄われていたそうですが、ファンの間では思い入れの強かった曲のようです。デビュー前から配信されていたので尚更でしょう。mixiにはもちろん絢香さんのコミュニティがいくつかありますが(最大の「絢香 ayaka」は現在4千2百人超)、「三日月」がらみのコミュも二つ存在します(うち一つは1千7百人超)。

  太陽ではなく月。
  満月ではなく三日月。

 これがシックリくるんですね。

 『I believe』で示された世界は「黒」。

   ♪偽りの中でウソの微笑み浮かべて 生きる人を
     幼き自分と重ねて見て
     ため息つく

     どんな色にも染まらない「黒」になろうと誓った

 その基調が引き継がれた『三日月』に「青」が加わったように思います。
 「黒」「灰色」そして「青」
 「青」のチャクラ・チャートは、「喉」:コミュニケーション(意志や情報の伝達)です。

 当面、この世界観を大切にしていくしかないのでしょう。
 いつの日かブランド・リニューアルの日が来るのかもしれませんね。
 「三日月」が「半月」「満月」になったり。さすがに「太陽」は??? でしょうけど。(笑)

 まだ今のところ、他の「色」では厳しいのかもしれません。
 バラードではなくアップテンポなナンバーの『Real voice』は、「月9」のテーマだったのにもかかわらず、「もっといってほしかった!」という数字だったようです。

 アップテンポなナンバーでも彼女の世界観が伝わるようになってほしいものです。
 その時こそ、彼女のブランド価値は不動のものとなるでしょう。

 それでも彼女のコア・バリューは歌詞の世界観のようです。

 女性アーティストのブランド価値評価でも、「歌詞」の評価は50アーティスト中、トップでした。
 「歌唱力」や「声質」などを加えた「基本価値」では、非の打ち所がありません。

 「パッケージ購入のキーは何?」ということを調べるため、データをあちゃこちゃこねながらグラフを作ってみたのですが、「基本価値」のグラフは、同じレコード会社の先輩、小柳ゆきさんのグラフと似ていることがわかりました。

 で、最も大切な「観念価値」のグラフでは、絢香さんより1学年上でデビューも1年早かったYUIさんと相似形。YUIさんは「タイヨウ」ですけど。(笑)
 「観念価値」を見る限り、ほとんどの評価項目で「タイヨウ」が「月」を上回っていますが、そう大きな差はありません。お二人ともこれからです。ブランド価値で最も重要な「観念価値」が、リスナー・ユーザーの心の中で高まっていくには時間がかかります(上木彩矢さんのような例外はありますが)。

 とにかくそれまではコンセプトをブレされることなく頑張って欲しいと思います。

 長々となりましたが(^_^;)、11月1日リリース予定のアルバム『First Message』、楽しみです。
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