南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

国境のある風景

2006-09-03 10:52:36 | アジア
深センの国境の風景です。右の建物は鉄道の深センの駅、そして正面
突き当たりの建物は、国境検問所です。その向こうは香港。左のほう
にかすかに見えている緑の山は香港です。香港は、1997年に中国に
返還されたのですが、特別行政区となっている香港と中国の間には
いまだに国境が存在しています。

15年以上前に、仕事で、陸路、香港から深センに入ったことがありま
した。そのときの検問所は、ぼろぼろの建物でした。中国に入国した
とき、そこは土埃の荒野が広がっていました。それから数年間で、こ
の国境の町は急激に発展を遂げます。このあたりでは昔の面影は全く
ありません。

その時(15年以上前)は中国側の国境にはいかめしい職員がいて、
カメラなどの所持品を申告しなければなりませんでした。持ち込む
機材に関して、中国側が持ち込み禁止、一時預かりとなったものが
ありました。照明用の電源とかでしたが、これは出国の時無事に
戻ってきて安心しました。

この上の写真の国境は鉄道でしか越えられませんが、車で国境を越え
る場合は、何カ所かある検問所を通過しなければなりません。深セン
と香港特別行政区の国境は、くねくねと流れる深セン河に沿って設定
されています。この駅のあたりだけ、河が香港側に突き出した形で
蛇行しています。

この写真の検問所の左のほうにはバスターミナルがあるのですが、
そっちのほうまで歩いていくと、香港側の風景が丸見えです。こちら
側の深センが、国境ぎりぎりまで大都会になっているのに、国境の
向こう側の香港は緑の野山です。国境のフェンスも見えています。
不思議な光景です。

今まで、陸路で国境を越えた経験は、シンガポール=マレーシアの
国境を越えたことは何度かあります。マレーシアから国境を越えて
仕事をしにきている人も多いですし、シンガポールからマレーシアに
買い物に行く人も多いです。ですので、シンガポールとマレーシアの
国境は日常的な国境です。

シンガポールとマレーシアの国境は日帰りで往来する人も多いですが、
深センと香港の国境も日帰りで往来している人も多いのでしょう。
国境を越えると、通貨も異なり、物価も異なります。そういうところ
で、ビジネスチャンスを得ている人たちも多いのでしょうね。

国境というのは何とも感慨の深い場所です。最近では気楽に国境を
行き来している人は多いですが、異なる国がそこで接しているのです。
国境の向こうとこちら側で別れ別れになっている家族もいるのでしょ
う。かつては自由を求めて命がけで国境を越えた人たちもずいぶん
います。国境にはいろんなドラマが秘められています。

北朝鮮と中国の国境では、不法出国する人たちが後をたたないと言わ
れています。中国の文化大革命の頃、海を泳いで香港に密入国した人
たちも多かったとか。今は昔です。

深センでは、人々の身なりは香港とかと変わらない気がしましたが、
ときどき、汚い身なりの女性を目にしました。日本でも、ぼろぼろの
身なりをしたホームレスの人たちはいるので、深センにいても不思議
ではないのですが、まだお洒落にすればいけそうなくらいの女性が、
うす汚れた服で歩いている姿はショックでした。急速な都市化の歪み
なのでしょうか。

私と妻の下町娘の間には国境よりも、遠い距離という名前
の国境が横たわっています。やがて下町娘はシンガポール
に来る予定なのですが、まだしばらくの間は離ればなれの生活です。
国境の向こうとこちらで、心を通じ合わせる。そこで愛が純度を増す
のでしょう。でも早く国境がなくなるといいですね。