
石蕗の花は10月から12月ごろに咲くキク科。黄色が鮮やかで50㎝から1m近くも花軸を伸ばして咲く。花の種類や色が寂しくなったころにすっと姿勢よく咲く姿が目をひく。株は群生するようにまとまっている。花弁と花弁の間は隙間があり、肉厚の葉が透けて見える。このために石蕗の花の印象に「くらさ」を見る人もあり、好まない人も多いという。
★咲くべくもおもはであるを石蕗の花 与謝蕪村
★さびしさの眼の行く方や石蕗の花 大島寥太
★母の目の裡にわが居り石蕗の花 石田波郷
★つはぶきはだんまりの花嫌ひな花 三橋鷹女
★石蕗くらし易断にさへ人すがる 加藤楸邨
★つはぶきの終日陰を出でずして 山口誓子
★一人来て一人去る島石蕗明り 中嶋秀子
★地軸より咲きし色なり石蕗の花 原石鼎
★石蕗の花島の電話のよく聞え 細川加賀
蕪村の句、石蕗の花は咲いてからその存在に気付くということがある。その一瞬の驚きは同感。
寥太の句、現代的な感覚に驚いた。これも石蕗の花の「くらさ」に着目している。