ただの備忘記録

忘れないように記録を残します。忘れるから記録に残してます。そして、その記録が役立つといいかな。

本「容疑者Xの献身」

2008年07月02日 | 日記

ガリレオの映画版の原作となるシリーズ3作目を読んだ。さすがに短編集よりも時間がかかったが、一気に読んでしまった。
この本では犯人を主人公として描いている。数学者の恋と、物理学者の友情の物語だ。
数学者は恋に自分を犠牲にし、物理学者は二人の友人の狭間で揺れ動く。

今回は数学者である石神が、好きな女性のためにトリックを考え実行する。
トリックは何重にも用意されており、警察も読者も最も重要なことにだまされる。
数学の難しい問題がトリックになっている訳ではない。数学的な発想、文中の表現を使うと「幾何の問題と思わせて、関数の問題になっている」のだという。それくらい発想の転換をしないと解けない難問なのだ。

しかし、こうも言われている。「天才のやることはシンプルだ」と。
きっと、トリックの真相に誰もがなんだそんなことかと思うだろう。それは完璧であるトリックとも言えるし、誰も想像しえなかったものだ。と、同時に涙が溢れる。湯川が「石神の愛情の深さが分かる」と言った通りで、最初から全てを見越してそこまで考えてあったのかと驚かせる。
ラストは感動的だ。

ページの大半がアリバイを崩そうとする警察の動きが描かれている。その速度が遅々として進まず、全体的に地味な印象がある。
著者の文章も大仰な表現をしない。しかし、ちゃんと伏線が隠されていて、最後に全てが結実する。それはまるで石神が仕組んだ通りの物だろう。
映画ではこれをどのように表現するのか楽しみだ。最終シーンまでに、観客を飽きさせない様々な演出が必要だろう。ラストシーンを感動的に描けないと成功とは言えない。

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