ただの備忘記録

忘れないように記録を残します。忘れるから記録に残してます。そして、その記録が役立つといいかな。

漫画の制作スタッフ

2019年11月22日 | コラム

先月まで5年間、漫画の制作スタジオでスタッフとして働いていました。
経理事務として入社し、作業マニュアルの作成、仕上げの手伝い、作画データの管理をしていました。
作品の内容については書けませんが、漫画の現場でどんな作業が行われているのか、書き記しておきたいと思います。


私のいた現場は、ネームはアナログ制作で、それをスキャナで取り込んで、以降の作業をデジタル化していました。
まずは、全体的な作業の流れを確認してみます。

【漫画制作の全体の作業の流れ】

①ネームの作成
 漫画家がストーリーを考えてネームを作成します。
 ネームは簡略化された絵でストーリーの進行や構成を確認するために作られます。段階を踏んでストーリー、演出、コマ割り、台詞が決まっていきます。
 出版社の編集者との打ち合わせにもネームが使われています。

②デジタル化
 ネームをスキャナで取り込んで、パソコン上でデジタル作業をするための準備をします。
 コマ割りもパソコン上で作業して、各コマにネームを割り付けます。

③作画作業
 ネームの絵はかなりラフに描かれていますので、下書きや清書が行われます。
 下書きは、どこに何を描くかを決めたり、スタッフへの作業指示として描かれることもあります。
 各コマの絵を清書して完成させていきますが、デジタル作業では背景、人物、書き文字を別に描いて重ねます。

④仕上作業
 清書が終わった絵の線のはみ出しを修正したり、トーンの貼り付けなどを行います。
 絵を重ね合わせているので、マスキングをしたり正しく重ね合わせが見えるように補正をします。

⑤入稿作業
 漫画の作業をしたデータを入稿用のデータに出力します。
 デジタルデータはメールで送信して、入稿が完了します。


ざっと全体の流れを確認しました。
作業は漫画家とスタッフの連携作業になっています。
その中でスタッフに任される作業がいくつかあります。

【スタッフの作業】

①作画作業
 漫画家が下書きをしたものをスタッフが清書をする場合、逆にスタッフが下書きをして漫画家が清書をする場合があります。
 例えば、人物のポーズを漫画家が下書きとして描き、スタッフが服を清書したり、また、背景や小物をスタッフが描いて、漫画家が演出を加えてコラージュしたりということがあります。
 作画スタッフは、アナログとデジタルの両方の作業があると思っていいでしょう。
 デジタル作業の現場では、原稿用紙に直接絵を描くことはありませんが、絵の構成要素を別々に描いて組み合わせることができるので、作画スタッフは背景だけ、小物だけを描くことがあります。
 漫画家が描いた線をなぞって清書の線で描き直すということもあります。

②仕上作業
 作画ができないスタッフでも、仕上げならできるということがあります。
 ゴミ取り:スキャンしたときに埃や汚れが画面に表示されるので、それらをクリーンナップします。
 素材の貼付:パーツで分けられた絵は、素材として残されているので、使い回しができます。それらを貼り合わせます。
 作画の補正:線のはみ出しを直します。絵の重ね合わせの修正やマスキングをします。
 ベタ入れとトーン:影の部分にベタやトーンを入れたり、服装や背景にトーンを入れます。

③3Dモデルの製作
 漫画の小物や背景を3Dモデルで作成したり、構図に合わせて配置する作業があります。
 小物や背景を3Dモデルで用意するメリットはかなり大きく、角度を自由に変更できるので、同じ場面でも背景を描き直さずに構図を変更することができます。
 3Dモデルの作成に時間がかかったり、レンダリングで綺麗に漫画用の線が表現できないことがあるので、下書きとして簡便に利用することもあります。

④管理作業
 デジタル作業では、誰がどの作業をしているのか、また作業とデータを段階的に管理する必要があります。
 素材管理:デジタル作業では過去に作成した絵のパーツを素材として残して置くことで、何度でも使い回しが可能です。素材を整理して、検索しやすくしておくのも重要な作業です。
 スタッフの管理:スタッフが増えると事務的な作業も増えます。
 作業マニュアル:スタッフの作業の知識や質を揃えるため、また作業の流れを把握するためにもマニュアルは重要です。

このほか、私のいたスタジオでは、昼食と夕食を作ってくれる調理スタッフがいました。
私自身は上記の仕上作業の簡便なところと、管理作業をしながら、経理と人事の業務をしていました。

デジタル作業の中でも3Dモデルは特殊だと思いますが、非常に便利な機能でありながら、時間も手間もかかる作業であり、締め切りのある連載作品だとコストが折り合わない部分でもあります。
漫画専用の3Dデータもありますので、データの製作は行わず、データを購入してレイアウトする作業になるかもしれません。

管理作業は専任スタッフを置くよりも、誰かが兼任するケースが多いのではないかと思います。


アニメの現場もスタッフの作業が細かく分かれていますが、漫画の場合、製作期間が短いためあまり役割分担が多くありません。
それでも、作画だけがスタッフの仕事ではないため、特にデジタル作業の現場であれば経験のない人が参加することも可能だと思います。


ハローワーク(認定日)

2019年11月20日 | 日記

今日、初めて失業手当の認定日に行ってきました。

雇用保険の失業手当をいただくには、認定日が重要になります。
必ず決められた日にハローワークへ行って、認定のための書類を提出します。

退職してから失業の認定までの流れを確認してみると以下の①〜④のようになります。

①退職した企業から離職票を受け取る。
 受け取りが遅れると手続きが遅れるので、支給開始が遅くなるので注意。

②離職票をハローワークへ提出する。
 ハローワークカード、雇用保険の失業給付受給資格者のしおりをもらう。

③雇用保険説明会
 雇用保険受給者資格証、失業認定申告書、受講証明書をもらう。

④最初の認定日
 以後、4週ごとに認定日が設定される。

認定日までに、失業者は求職活動を行わなければなりません。
そして、認定日には、活動の証明書を提出したり、就労の申告など行います。

認定が終わってすぐに、求職相談をお願いしました。現況の確認ということで、あまり希望の職種については話が進みませんでしたが、高齢者向け求職セミナーを紹介していただきました。
ハローワークに設置された求人情報の端末を使って、いくつか求人情報を選んで、資料をもらって帰りました。条件が合いそうであれば、ハローワークで紹介状を出してもらい、面接を受けることになります。
自宅でもハローワークの求人情報をインターネットで検索できるのですが、ハローワークの端末でのみ開示されている情報もあるそうです。

現時点では、滋賀に帰ることを前提に仕事を探しています。
埼玉を中心にして交通や生活の利便性のある地域にも魅力があるので、仕事と生活面での両立ができるように考えたいと思っています。


漫画の原稿と原価計算

2019年11月05日 | 日記

先月で、漫画のスタジオを退職し、日々簿記の試験に向けて勉強中です。

改めて原価計算の複雑さを実感しているのですが、以前から漫画の原稿はどうやって利益を計算すると良いのか考えていました。

基本的には、直接原価計算の考え方で、貢献利益を算出します。これは各原稿ごとの利益ともいえます。
最終的に費用の見積額から逆算して、利益を出すための印税額と発行部数を計算してみます。

利益を計算する場合、まず収益と費用を集計して、その差額を利益(損失)として算出します。

①収益になるもの(売上)

収益は原稿料だけなので、一見単純そうに見えます。
よく言われるように、原稿料の赤字を単行本の印税で賄うという状態の場合、印税収入も勘案する必要があるのですが、何話分が本になって、幾らで、何冊発行されるのか、予測するしかありません。

例:原稿料 10,000円×24ページ

  印税:単行本800円、1万部、8話掲載(192ページ) 印税率10%

  1話あたりの収益は、原稿料24ページ分と単行本1話あたりの印税で計算します。

  原稿料 240,000円+印税100,000円=340,000円

こうして計算例を見ると予測の部分である印税の占める割合が大きいことが分かります。また、発行部数に比例して金額が変わるので、いかに正確に予測をするかが重要なポイントになります。(金額に幅を持たせる必要があるかも)

②費用になるもの(売上原価、売上変動費)

費用というのは、材料費、労務費、経費を計上するのですが、原則的に直接的な費用だけを考えます。
というのも、スタジオの家賃や光熱費、諸々の税金など原稿の執筆に直接影響しない費用もあるからです。これらは間接費と言って、会社の様々な活動に大して割り当てるべき経費となります。貢献利益の計算では考えません。

漫画の原稿製作では、材料費はかなり少ないので計算から除外した方がいいでしょう。
アナログ作画の場合、鉛筆、インク、紙を消費しますが、鉛筆の芯やインクをどれだけ消費したか測るのは現実難しいのです。消費量が多くて確実に計算できるなら入れるべきですが、原稿1話分では大きな費用にはなりません。
デジタル作画の場合、パソコンやソフトウェアを使っていますが、これも原稿1話分という区切りはできません。将来に渡って長く使用するからです。例えば、確実に10年で買い換えるものなら、1年分はすぐに計算できます。さらに、1年の間に完成する原稿が何話分あるかによって、1話分に相当する原価が変わります。これも間接的費用なので、計算には入れません。

そうなると何が費用になるのか。その大部分は労務費です。いわゆる人件費となります。
原稿の完成までの時間と人数と時給が分かれば、それらを掛け合わせることで計算することができます。
ただし、これも難しいところがあります。
スタッフの多くは時給で仕事をしているので、時給×作業時間をスタッフの人数分計算できます。

  スタッフの1話分の労務費は、時給×作業時間×人数(時給や作業時間が異なる場合は、一人ずつ個別に計算する)

問題は漫画家自身の時給と作業時間です。
漫画の原稿を描く時間は把握しやすいのですが、アイデアを構想する時間があります。いわゆるネームが完成するまでの作業は、スタッフにはできない作業なので漫画家が一人で、場合によってはどこかに籠もって黙々と作業します。それらの作業時間を確認する必要があります。
次に漫画家自身の時給ですが、事業主である漫画家は時給で働いていません。そこで一月、または一年分の給与額から、同じ期間で完成する原稿の話数の時給を算定します。

  漫画家の1話分の労務費は、月給÷一月の完成原稿話数

例:漫画家の月給与が50万円で、月に原稿2話を完成させる場合、25万円を1話分の直接費用とします。

  スタッフは3人で、全員時給は1,000円、32時間作業したとすると、96,000円となります。

  原稿1話分の原価 漫画家 250,000円+スタッフ 96,000円=346,000円

③利益の計算(貢献利益)

収益と費用の差額を計算します。

例:①340,000円-②346,000円=▲6,000円(▲はマイナスの表記)

今回の例では、6,000円の赤字となります。

もし、印税収入がなかったらどうなるでしょうか。

例:①240,000円-②346,000円=▲106,000円

大幅な赤字となってしまいます。

では、スタッフを無くしてみるとどうなるでしょうか。

例:①240,000円-②250,000円=▲10,000円

原稿料は出版社によって異なりますし、掲載の媒体によって作画するページ数も変わってきます。
貢献利益は、それらを直接的に比較して、どの仕事が利益を出せるか比較するのに向いていると思います。
間接的費用は、どの仕事をする場合でも、月々かかる経費なのでそもそも比較計算に入れる必要がありません。

④貢献利益と損益分岐点

計算例では収支が黒字にはなりませんでしたが、例示でしかないので細工はしていません。実際にはもっと経費がかかることかと思います。
実際には、差額が黒字になるように考えて仕事を増やしたり人件費を減らしたりすることになります。

貢献利益が黒字になったとしても、安心はできません。そこから間接的費用が出ていくからです。
①のように収益に印税まで含めるということは、ほとんどの収益が入っているということです。
②の費用には直接的費用だけを計上しているので、その他の間接的費用を貢献利益で賄わないといけません。

貢献利益額と間接的費用が同じ金額になる場合、それを損益分岐点といいます。
貢献利益が間接的費用より大きくなると総利益は黒字となり、下回ると赤字となるので収支の分岐点となります。

例:月間の間接的費用が30万円の場合、月に原稿2話分が完成する予定なので、1話あたり15万円を間接的費用と考えます。
  そうすると貢献利益も15万円必要になります。

  ②の直接的費用は変わらない場合、必要な収入は346,000円+150,000円=496,000円です。

  ①において原稿収入が変わらないとすると、印税で256,000円必要となります。

  1冊あたりの印税は 800円×10%=80円、1話分だと10円です。

  発行部数を逆算すると25600部となります。単行本がそれ以上発刊されれば黒字になるという計算です。

例示では1話分で計算しましたが、これを月単位、年間単位でやるのが通常の経理で行う作業になります。
ただし、試算表では入金や出金のタイムラグがあるので、原稿1話分を軸に経費を算出する方が分かりやすいと思います。