あるアパートに隣接した駐車場の方から、よく野良猫が餌や保護をアピールするかの様な「ウヤァワャーー」みたいな長ーい鳴き声が聞こえてくる。
駐車場には車が3台、この車かと地面に頬をつける様にして下を覗きこむ、が、猫の姿は見当たらない。
しばらくは辺りをキョロキョロさせていると、何か視線を感じて振り返る、アパートの一階の一番奥の部屋のベランダの窓が少し開いていて、痩せ気味の三毛猫がじっとこちらを見ていた、おそらく鳴き声が聞こえてからのこちらの動きをずっと見ていた。
(飼い猫だったのか)
チャリンと扉が開いた。
「山田くーん久しぶり!元気だったぁー。あっ、すみません、アイスコーヒー下さい。いやーほんと久しぶりー、それでさーあのいつだか山田くんにもいろいろ聞いてもらってたんだけど、ずっと彼の気持ちがわからなくて、もう駄目かなーとも思ったんだけど、でも山田くんが言ってくれた様に私の気持ちを全部ストレートに言ってみたのね、そしたらそれで彼の方も同じ様な気持ちがあったみたいで、結局彼氏と仲直りしてさー、今ちょー好きなんだけど、なんか私ばっかり好きすぎて、彼氏あんま反応してくれないんだよね、一方的でなんかムカつくーでも好きだからしょーがないんだけどねー。山田くんてさーいい人だよねーいろいろ相談にのってくれるしー。
さっきここに来る前にさーコンビニのレジで並んでたらさー、私は列の2番目なのに隣のレジが空いたタイミングでさっと並んでもいない人が会計しててさー店員も何も言わないんだよねーこっちはさっきから並んでんのにさーたまにない?そういうの」
「あるね」
「だよねー、そういえばこの間温泉に行ってさー」「お待たせしましたアイスコーヒーです」「あっありがとうございます!」「それでさー湯船に長めに浸かってたらさー湯あたりしたのかちょっとめまいがしてさー洗い場の椅子に座って目を閉じたらさーなんかこう洞窟の遠くの方に出口があって光が見えるみたいなものが見えてさーあれそういうのなんていうんだっけー」
「ん、丹光のことか、、」
「そうそれー第三の目とかってやつー、それが見えたんだよねーなんか私もってるのかなぁーって」
「丹光って、瞑想とか心が落ち着いてる時にみえるんじゃないの?湯あたりの状態ってけっこう心が不安定だよね、その後いつも見えるの?」
「あ、そーなの、だからかー、それっきり見えなくなったんだよね」
「ハハハ」
「っていうか最近仕事忙しくてさー、私仕事のために生きてんのかなーって思ったらさーそういうの嫌だなーなんかどっか遠くへ行きたいなーって」
「遠く?」
「んーヨーロッパとか」
「住みたい?」
「いやただ、旅したいなーって」
「彼誘って行ったらいいじゃん」
「あーでも彼氏どっちかっていうとインドア系なんだよねー」
「そうなんだ」
「まぁいろいろ国内旅行には誘ってるんだけど」
「行くの?」
「うん、以外と楽しそう」
「ならいいじゃん」
「うん、やっぱり1つでもおんなじ趣味とかあったほうがいいよね」
「そうだね」
「彼氏さー、本とか読むの好きでさー、それもあって私最近辻村深月とか読んでてさーそれがけっこう面白いんだよねー、知ってる?」
「あー名前はね、、」
「山田くんも本好きだったよね、最近どんなの読んでるの?」
「んー何だろう、フアン・ルルフォとか」
「誰それ?」
「ラテンアメリカ文学の人だよ、ガルシア・マルケスとか、」
「面白いの?」
「どうかな、面白さは人によって違うからね」
「まぁそうだよねー、」
「こないだテレビでさー空中を滑るバイクっていうのやっててさー今はスマホで何でもできたり、人工知能なんかもどんどん発達してきてるでしょー、なんか私達って凄い時代に生まれたなーって、思わない?」
「んー、きっと200年後の人々も同じ事言ってるんじゃないの、技術の進歩は止まらないだろうから」
「火星にいたりして」
「ハハハ、」
「いやー平成ももう終わるんだねー、私まだギリギリ平成生まれですからーって自慢げに言ってたのが懐かしいなー」
「そうやって繰り返すんだよ」
「そうねー、、、、、っていうか山田くん何か気付かない?」
「んっ、何に?」
「ほらー私の顔見ててさーこの辺とか」
(首のあたりを手のひらで擦りながら)
「ん、何?」
「鈍いなー、前よりしゅっとしてない、しゅっと」
「痩せたの?」
「そうなのよー2キロもよー、やったね」
「2キロ、、、」
「でもやっぱさームカつくー」
「んっ何が?」
「私ばっかり好きみたいで」
「あー」
「なんかさー彼氏ってさ、何か似てるんだよねパパと、私さーパパっ子だったから、今でもパパ好きだし、そういうのと彼を何処かで重ねてるのかもねー」
「山田くんのパパってどんな人なの?」
「あ、んー普段はあんまりしゃべんないんだけど、たまにさ、、、「チャンチャカスチャッチャッ♪♪」「あっごめんなさい、彼氏から電話、ちょっと待ってて」あ、うん。」
「ごめんねー!今日はありがとうー今彼氏からで駅に着いたってー、私もう行くねー。あっいくら?」
「いや、ここはいーよ、俺もうしばらくいるから」
「まじ、ありがとうーごちそうさまーじゃあまたねー」
「うん、また、、ね、、」
「うーん、またねー!」
彼がチャリンとドアを鳴らして出ていった彼女が小走りに青点滅中の横断歩道を渡って行く後ろ姿をぼんやり眺めていた事で彼女が実在し、そしてそれをまた私が眺めていた事で彼が実在し、その私を店員が観ている事でたしかに私は実在していた。
駐車場には車が3台、この車かと地面に頬をつける様にして下を覗きこむ、が、猫の姿は見当たらない。
しばらくは辺りをキョロキョロさせていると、何か視線を感じて振り返る、アパートの一階の一番奥の部屋のベランダの窓が少し開いていて、痩せ気味の三毛猫がじっとこちらを見ていた、おそらく鳴き声が聞こえてからのこちらの動きをずっと見ていた。
(飼い猫だったのか)
チャリンと扉が開いた。
「山田くーん久しぶり!元気だったぁー。あっ、すみません、アイスコーヒー下さい。いやーほんと久しぶりー、それでさーあのいつだか山田くんにもいろいろ聞いてもらってたんだけど、ずっと彼の気持ちがわからなくて、もう駄目かなーとも思ったんだけど、でも山田くんが言ってくれた様に私の気持ちを全部ストレートに言ってみたのね、そしたらそれで彼の方も同じ様な気持ちがあったみたいで、結局彼氏と仲直りしてさー、今ちょー好きなんだけど、なんか私ばっかり好きすぎて、彼氏あんま反応してくれないんだよね、一方的でなんかムカつくーでも好きだからしょーがないんだけどねー。山田くんてさーいい人だよねーいろいろ相談にのってくれるしー。
さっきここに来る前にさーコンビニのレジで並んでたらさー、私は列の2番目なのに隣のレジが空いたタイミングでさっと並んでもいない人が会計しててさー店員も何も言わないんだよねーこっちはさっきから並んでんのにさーたまにない?そういうの」
「あるね」
「だよねー、そういえばこの間温泉に行ってさー」「お待たせしましたアイスコーヒーです」「あっありがとうございます!」「それでさー湯船に長めに浸かってたらさー湯あたりしたのかちょっとめまいがしてさー洗い場の椅子に座って目を閉じたらさーなんかこう洞窟の遠くの方に出口があって光が見えるみたいなものが見えてさーあれそういうのなんていうんだっけー」
「ん、丹光のことか、、」
「そうそれー第三の目とかってやつー、それが見えたんだよねーなんか私もってるのかなぁーって」
「丹光って、瞑想とか心が落ち着いてる時にみえるんじゃないの?湯あたりの状態ってけっこう心が不安定だよね、その後いつも見えるの?」
「あ、そーなの、だからかー、それっきり見えなくなったんだよね」
「ハハハ」
「っていうか最近仕事忙しくてさー、私仕事のために生きてんのかなーって思ったらさーそういうの嫌だなーなんかどっか遠くへ行きたいなーって」
「遠く?」
「んーヨーロッパとか」
「住みたい?」
「いやただ、旅したいなーって」
「彼誘って行ったらいいじゃん」
「あーでも彼氏どっちかっていうとインドア系なんだよねー」
「そうなんだ」
「まぁいろいろ国内旅行には誘ってるんだけど」
「行くの?」
「うん、以外と楽しそう」
「ならいいじゃん」
「うん、やっぱり1つでもおんなじ趣味とかあったほうがいいよね」
「そうだね」
「彼氏さー、本とか読むの好きでさー、それもあって私最近辻村深月とか読んでてさーそれがけっこう面白いんだよねー、知ってる?」
「あー名前はね、、」
「山田くんも本好きだったよね、最近どんなの読んでるの?」
「んー何だろう、フアン・ルルフォとか」
「誰それ?」
「ラテンアメリカ文学の人だよ、ガルシア・マルケスとか、」
「面白いの?」
「どうかな、面白さは人によって違うからね」
「まぁそうだよねー、」
「こないだテレビでさー空中を滑るバイクっていうのやっててさー今はスマホで何でもできたり、人工知能なんかもどんどん発達してきてるでしょー、なんか私達って凄い時代に生まれたなーって、思わない?」
「んー、きっと200年後の人々も同じ事言ってるんじゃないの、技術の進歩は止まらないだろうから」
「火星にいたりして」
「ハハハ、」
「いやー平成ももう終わるんだねー、私まだギリギリ平成生まれですからーって自慢げに言ってたのが懐かしいなー」
「そうやって繰り返すんだよ」
「そうねー、、、、、っていうか山田くん何か気付かない?」
「んっ、何に?」
「ほらー私の顔見ててさーこの辺とか」
(首のあたりを手のひらで擦りながら)
「ん、何?」
「鈍いなー、前よりしゅっとしてない、しゅっと」
「痩せたの?」
「そうなのよー2キロもよー、やったね」
「2キロ、、、」
「でもやっぱさームカつくー」
「んっ何が?」
「私ばっかり好きみたいで」
「あー」
「なんかさー彼氏ってさ、何か似てるんだよねパパと、私さーパパっ子だったから、今でもパパ好きだし、そういうのと彼を何処かで重ねてるのかもねー」
「山田くんのパパってどんな人なの?」
「あ、んー普段はあんまりしゃべんないんだけど、たまにさ、、、「チャンチャカスチャッチャッ♪♪」「あっごめんなさい、彼氏から電話、ちょっと待ってて」あ、うん。」
「ごめんねー!今日はありがとうー今彼氏からで駅に着いたってー、私もう行くねー。あっいくら?」
「いや、ここはいーよ、俺もうしばらくいるから」
「まじ、ありがとうーごちそうさまーじゃあまたねー」
「うん、また、、ね、、」
「うーん、またねー!」
彼がチャリンとドアを鳴らして出ていった彼女が小走りに青点滅中の横断歩道を渡って行く後ろ姿をぼんやり眺めていた事で彼女が実在し、そしてそれをまた私が眺めていた事で彼が実在し、その私を店員が観ている事でたしかに私は実在していた。
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