夢は何を反映させるのか

私は深い海の底で木造の船を直している。
辺りには金や銀のきらびやかな魚達が泳いでいる。
私は頭上の水面から先の世界を知らない。
ここから見えるゆらゆら揺れている光の正体を知らない。

突然緩やかに泳いでいた魚達が一斉に集まり渦を巻いて騒ぎ始めた。
するとそこへ魚の渦をかき乱す様に
そのゆらゆら揺れている光をさえぎる様に玉虫色の鱗を纏った人魚が表れた。
しなやかにくねりながら泳ぎ、纏った鱗をハラハラと落として行った。
人魚と認識しているのは過去に一度私の頭上にそれが表れたことがあったからだ。

足元に落ちたその鱗をよく見ると金の小銭になっているではないか！

そこで私はその鱗の銭を拾い集めて、地上への道を知るという人物に会いに行こうと地底の坂道を降りて行った。

その途中、地底から坂道を登ってくるかまを持った死神が表れて「おまえはまだここに来るべきではない」と申すので「それでは私はどう生きるべきか」と訪ねと、手元の銭と引き替えに古び壊れた船を渡された。

私は海の底で船を直している。
すくなくとも次にまた人魚が表れるまでは。
私はその昔、水夫であった気がしている。


「ピンポーン！」チャイムが鳴った。