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伊東良徳の超乱読読書日記

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図説世界史を変えた50の機械

2013-10-23 21:29:40 | 自然科学・工学系
 1801年以降に実用化・商品化された機械で世界史に大きな影響を与えたと著者が考える機械50点をリストアップして製品写真と図版をつけてその製造・製品化と構造・機能について解説した本。
 「世界史を変えた発明」ではなく「世界史を変えた機械」とされたタイトルにあるように、最初の発見・発明・アイディアよりも、商品化されて広く使用されたものを優先的に取り上げるという姿勢を打ち出していますが、先行した商品と後続でそれを打ち負かした商品のどちらを取り上げるかの選択は後半では先行して敗北した商品の方に寄っているきらいもあり、必ずしも一貫していないように見えます。そういう点も含め、取り上げている機械の選択には、著者の好みがかなり反映されている印象です。私が読んでいて受けた印象としては、イギリスとアメリカが競合する場面ではイギリス側に選択が偏っていたり、アメリカ製品でも設計者がアメリカ人でないものが選択されているような感じがしました。発明よりも商品化・世間へのアピールがうまかったと解されるエディソンは、この本の最初の方で見られるコンセプトでは取り上げられやすいようにも思えるのですが、1つも取り上げられていません。競合者としては4回も名前を挙げた上に、ヘンリー・フォードを紹介する際に「本書の読者にとってはもうおなじみの有名人、トマス・エディソン(1847-1931)のもとで働くことになる」(106ページ)などと必要性もないと思われるところで皮肉っぽく言及しています。著者がよほどエディソンが嫌いらしいということはよくわかります。
 説明にはその機械の写真かイラストがついていて、一部構造図もあり見やすいのですが、もう少し仕組みの説明としっかりした図面が欲しいなという欲求不満も残ります。本の紙面(特に四辺付近)を薄くセピア色付けし写真もモノクロ・セピア色系を多用してレトロな印象を与える作りになっています。そういうグラフィック面での志向を貫くならば、一部の機械の紹介で用いられている背景に薄く配した図面をもっと多用した方がいいと思いますが。
 記述には偏りを感じますが、工業製品や日用品に愛着を感じる人が流し見てノスタルジーに浸るにはいい本かなと思いました。


原題:Fifty Machines that changed the course of History
エリック・シャリーン 訳:柴田譲治
原書房 2013年9月30日発行 (原書は2012年)
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