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伊東良徳の超乱読読書日記

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それを愛とまちがえるから

2013-10-12 20:36:32 | 小説
 結婚15年目のセックスレス夫婦袴田匡42歳と袴田伽耶41歳が、それぞれの愛人鍼灸師28歳の逢坂朱音、売れない漫画家43歳の星野誠一郎の存在を明らかにしながら日常生活を続け、伽耶の発案で4人でキャンプに行くという中年夫婦不倫回春小説。
 夫を愛していると思いながら自分を女として求めない夫に苛立ち夫とセックスレスになった3年前にさっそく昔の男とよりを戻し不倫にまるで罪悪感を感じない伽耶、かつて18歳の伽耶とつきあうが飽きて放置したのに伽耶に男ができるとその男(匡)をあざ笑うようなマンガを書き38歳の伽耶と不倫の関係になるが単にプロを買い続ける経済力がなく新しい女を作るのもめんどうだからキープしている誠一郎、1年前に鍼治療を受けに行って一回り若い鍼灸師に夢中になり不倫の関係を結ぶが妻に罪悪感を持ち続ける匡、不倫という意識もあまりなく一回り年上の匡の一生懸命さに一定の満足を覚えつつときおり若い男を求めてしまう酒乱気味の朱音という組み合わせを、読者はどう読むのでしょう。50代妻帯者の私としては、どうしても匡の目から読んでしまうけれども、私の感覚では、匡が一番ふつうで、次いで朱音、誠一郎は性格悪すぎというかたぶんよくいるタイプなのだろうけどどうしても好意的には見ることができず、伽耶に至っては理解できません。でも「婦人公論」連載の小説ですから、基本的に中高年女性を読者として想定しているはずで、そうすると中心的読者層は伽耶の視点で読んでいくことになるのでしょう。今どきの中高年女性は、不倫に全然罪悪感がなく、それでも自分は夫を愛してると主観的には思えるという伽耶に共感できるのでしょうか。
 そして、この小説では、伽耶が、夫に自分の愛人と夫の愛人をあわせた4人でキャンプに行こうと言い出し、実行してしまうというど外れたというか突き抜けたというか異様なアイディアがポイントになっています。う~ん、この4人の立ち位置からすれば、他の3人にとっては迷惑というか行きたいはずもないことが明らかなのに、なんでこの人はこういうことをやり出すんだろと思います。それで、愛人同士でテントに入りながら、結局は妻が夫を取り戻すという、要するに中高年妻がわがまま勝手なことをしながらそれが自分に都合のいい結果を招くストーリー展開は、読んでいて、ああこれが「婦人公論」連載なんだよねと思ってしまいました。


井上荒野 中央公論新社 2013年1月25日発行
「婦人公論」2011年4月22日号~2012年4月7日号連載
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