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伊東良徳の超乱読読書日記

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ダブルアクセス

2010-05-23 23:47:54 | 物語・ファンタジー・SF
 借金を抱えて父が失踪し生活と借金返済のために体感型ヴァーチャルRPGのテストプレイヤーとしてアルバイトを続ける高校2年生桃井巧と共に暮らす兄に夢中の美少女桃井ヒナ、同じような境遇の下テストプレイヤーとして現れた同級生の美少女立花栞、ゲーム会社のオペレーターの美女日下部小町らが繰り広げるアクションゲームファンタジー・ラブコメ。
 基本的には主人公が、妹、同級生にして隣人、アルバイト先の上司の3人の美少女に囲まれて、いじられながら一喜一憂を繰り返す「萌え」系の小説です。それに体感型ゲームで精神がヴァーチャルワールドのアバターに同調してアバターを動かすという、映画の「アバター」とほぼ同じ発想のゲームを設定し、そのヴァーチャルワールドでの負傷が現実世界に戻っても影響するという要素を加えて展開を図ったというところです。
 RPGの「呪いのアイテム」で自分の体や手にしたものを分裂させられるという能力を身につけたという設定が「ダブルアクセス」というタイトルになっています。
 ゲーム部分の要素が大きいので、その部分で乗れるかどうかですね。単純なラブコメとして読むには、設定の無理が目につきすぎますので。
 ラストはいかにも「続く」って感じで続編が書かれることが宣言されています。


樋口司 MF文庫(メディアファクトリー) 2010年1月31日発行
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謀略法廷(上下)

2010-05-23 19:40:01 | 小説
 有害化学物質を不法投棄し続けて水道を汚染し多数の住民を発癌させたクレイン化学が、1人の遺族が訴えた裁判で4100万ドルの賠償を命じられ、上訴での逆転を目指して、ミシシッピ州最高裁判所裁判官選挙に保守派の裁判官を当選させることをフィクサーグループに依頼し、危機感を持った法廷弁護士たちとの間で激しい選挙戦が戦われるという「リーガル・サスペンス」小説。
 裁判の内容や展開は「シビル・アクション」とほぼ同じで、法廷での正式事実審理の場面は省略していきなり1審の評決から始まって、その上訴を裁判手続によってではなく裁判官選挙で決着を付けようとするものです。裁判ものとして読むならば「シビル・アクション」の方がずっと読みでがあります。被害者側の弁護士の姿勢としては「シビル・アクション」よりはこの作品のメアリ・グレイスに惹かれますけど。
 グリシャムにありがちですが、リーガルサスペンスと分類され、かつこの作品では裁判を扱ってはいるのですが、法廷でのシーンはごくわずかで法廷外の話が大半を占めています。まぁ法廷から離れて20年近いグリシャムに法廷シーンを書くことを期待するのがもう無理なのかもしれませんが。
 序盤以外のほとんどを占める裁判官選挙の話が、いまひとつ展開の切れを欠き冗長な感じがします。グリシャム作品を読んで、途中で飽きてくる感じを持つようになったのはいつからでしょうか。しかもこの作品は、だれ気味に読み続けた挙げ句にラストも爽快感も驚きもありません。作品としてのレベルが低いとは思いませんし、(近年の)グリシャムらしさは味わえますが、感動したり人に勧めたくなるという感じはしません。
 裁判官のすげ替えで裁判の行方を変える謀略というテーマは、1960年代後半から1970年代にかけて公務員の争議権をめぐる最高裁の判決を最高裁の裁判官の入れ替えだけで労働者側勝訴から国側勝訴に変更させたという歴史的経験を持つわが国にとっては、とても他人事とは思えません。選挙の結果などすぐに忘れてしまうこの作品でのミシシッピ州住民と同様、わが国でもそういった歴史を記憶している人がどれだけいるかは心許ないところですが。


原題:THE APPEAL
ジョン・グリシャム 訳:白石朗
新潮文庫 2009年7月1日発行 (原書は2008年)
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