伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

裁かれる者 沖田痴漢冤罪事件の10年

2010-05-21 22:02:56 | ノンフィクション
 満員でもない電車で女性の腰に股間を押し付けたとして電車を降りて改札を出た後に突然警官から呼び止められて「現行犯逮捕」され、結局「嫌疑不十分」で不起訴となり、国と女性に損害賠償請求訴訟を起こしたら1審・2審では痴漢をしたと認定されて敗訴、最高裁で女性との関係では上告受理逆転判決(ただし差し戻し控訴審で再び敗訴して上告中)という劇的な展開の痴漢冤罪事件について、本人が語る本。
 労働者教育団体で勉強中だったという本人の信念・執念があっての10年の闘いかなと思います。
 刑事事件の不起訴までの経緯を書いた第1章と損害賠償請求訴訟の顛末を書いた第2章が、当事者の経験として読みどころです。主張を書いた第3章は、ちょっと理屈っぽくて、しかしスッキリと読めず、読後感は今ひとつ。その点ではむしろ最後に付けられている妻の文章がりりしくて読みやすく思えました。
 当事者の経験部分で、逮捕当日の夕方に弁護士が面会に来ている(23ページ)にもかかわらず、「警察官の取調で調書ができたし、これで何とか帰れると思った」(25ページ)とか、供述調書に署名押印を拒否していいとは知らなかった(83~84ページ)って、あんまりだと思います。最初に面会した弁護士の事務所名やその後弁護人となった弁護士の名前も書かれ、しっかりした事務所だとか書かれているのに、逮捕後の手続の流れや内容が納得できない調書への署名押印は拒否するようにという説明をしないとはとても考えられないのですが。被疑者弁護で最初に面会に行ったときにそれを説明するのは「いろは」に属する話だと思います。説明してなかったら問題でしょうし、説明したのに10年前の話だから本人が忘れてて今頃こんなふうに本に書かれてるなら弁護士がかわいそうですし・・・


沖田光男 かもがわ出版 2010年4月12日発行
コメント
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