白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

乙女たちはピンク色

2012-03-02 | 画廊の様子
お雛様の緋毛氈のだんだんにはもう何日も前からぼんぼりやら
ひなあられ、お白酒、菱餅、桃の花がそれぞれのお役目をしっかりと
守ってお節句のその日を待っています。
中国では古代から桃の木は邪気を祓う仙木として信仰され、その霊力を尊ばれて
三月には桃の花の流れる水を飲んで穢れを祓う行事があったということです。
これが日本に伝わり古くには桃の実の力で鬼退治をしたというような神話が
残っているそうです。
桃の実は多くの病の薬とされ、桃湯や桃花酒としてまた葉っぱは薬茶として
今も大切に使われています。

桃はその花の美しさ故に中国の古書には嫁ぎゆく娘の姿に例えて「桃の
灼灼たる、灼灼たるその華」と讃えられているそうです。

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出でたつ少女  家持

桃の花の匂い立つ華やかな春の庭に佇む少女は紅に染まっていっそう輝いて見えると
まるで絵筆を持って描かれているような歌です。

女の子の行く末に幸せが限りなく待っていてくれるように祈るのは今も昔も
親心は同じですね。

明日はそのひな祭り、供えられた菱餅は人が生きていくための神様からの最高の贈り物、
「心」の形に型どられた心臓…ハートです。
これも娘の長命を願う親心の現れでしょう。

ピンク色の乙女たちのためにそして我が子にも永遠に桃の花びらのような香りとその頬と唇に
紅の色を湛えた女性であってほしいと願いを込めて雛の膳を調えようと思います。

襲の色目 「桃」 表 薄紅(ピンク)匂う桃の花  裏 萌黄 新芽
                                s・y

今日の一枚    「ひなまつり」 竹久夢二   リトグラフ