白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

椿の想いつらつらに

2014-03-13 | 画廊の様子
二月の雪の上に三月の雪がすっぽりと降り積もって雪かきに汗を流して
います。
北国の春の歩みはあまりにもゆっくりです。
それでも心は自由に春の野辺へと飛んで行きます。
海辺の水仙や木陰の菫、草原を一面黄色に染めるタンポポたち、花の友達に
はやく逢いたい。
三月弥生は木草弥生い茂る月…きくさいやおいしげる月,心の中もそう、
ありたいものです。

暖かな地方では今、白梅、紅梅が見頃、ほんのひと時の花どきを逃すまいと
梅見物の人々で賑わっていることでしょう。
花には花どき、人にも花どきがあると美しくも哀しく胸を打つ言葉があります。
花どきとは瞬く間ということでしょう。この時を大切にしなさいと云う
天からの声でもありましょう。

椿は初冬から咲き始め晩春まで咲き続ける長い花時を持った花木です。
咲いては落ち咲いては落ちる花びらは「ゆつ真椿」と古事記には仁徳天皇妃
磐姫の恋の炎として描かれています。真紅の椿は今が花どき。

万葉集には椿の歌がたくさん収められています。
…河のへのつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は…
椿の葉はつるつる、幹も滑らか、実も固くて光っているので
ルは元はラ、ツルツルはツラツラだったのか、つらつらは耳にも
くちびるにも心地よい響きがあります。

椿にまつわる伝説はたくさんあります。花の帽子をかぶり手に白玉椿の
小枝を持った八百比丘尼がその種を植えて回った話や卯杖の祝とされて
霊力を持つ神木として今に伝わる祭りに使われたりしています。

椿の持つつややかな葉の列なり、葉陰から見え隠れする神秘的な白珠のような
白玉椿の花首、あるいは情熱そのものの紅椿の魅力は多くの芸術家の魂を
虜にしました。家持、夢二、そしてココ シャネルなど。

今日の一枚の絵 「椿の髪飾り」 竹久夢二 リトグラフ
  夢二は恋人の髪に椿の花を挿し、そのくちびるを花びらで飾りました。

   かさねの色目      表 蘇芳   裏 赤




寒い!も一度、旧のおひな様をお祝いしましょうか・・・  s・y