白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

ささやくのは誰かしら

2012-10-23 | 画廊の様子
夜中の雨音がしゅうしゅうと絶え間なく明け方まで続きます。
雨冷えの朝は体の中を冷気が通り抜けて行きます。
あの熱い空気、大きな空、光る緑はどこへ行ってしまったの。
いつの間にか消え去った景色はほんのひと月前のものなのに…
ひどく懐かしくさえ感じます。
巡り来る季節を操るのは雨です。
いまごろの雨を薬雨と言って冬眠に入る虫たちがこれを飲んで
冬ごもりの備えをする恵の雨なのだそう。
雨の音がふと途切れると優しい虫の音が聞こえてきます。
秋は夕暮れ、心惹かれるその佇まいはとりわけもののあはれを
感じさせ心を落ち着かせしみじみとした思いに人々を浸らせて
その情感を豊かに満たしてくれます。

日本にはコオロギの仲間は40種くらい分布しているそうです。
私たちがよく知っているのはエンマコオロギ~コロコロりー、
つづれさせコオロギ~リーリーリー、カマドコオロギ~
チリチリチリ、カネタタキ~ちんちんちん、クサヒバリ~
フイリリ、キンヒバリ~りイーりイーりいーと鳴き方が違います。
              昆虫図鑑より

この小さな虫たちの美しい音色もかすかなささやきになって
来たようです。
夕焼け、虫の音、赤や黄色に染められた木の葉、ゆく秋の
恵は豊かです。その美しさを惜しみながら楽しみながら
過ごしたいと思います。 s・y

   茨野や夜はうつくしき虫の声  蕪村

今日の一枚の絵  「こおろぎ」 鏑木清方 明治39年
                    木版