しずしずとお出ましの龍田姫がその美しい袖を振って野山を染める
夢からふと我に返ると姫さまはいつの間にか足早に歩みを進めています。
「お待ちになって。」とその艶やかな裳裾を思わず引いて
お名残を惜しみたくなるこの秋は幻だったのでしょうか。
ちはやぶる神世も聞かずたつたがはから紅にみづくくるとは
業平
都の西、生駒の龍田山とふもとに流れる龍田川は
今も紅葉の名所です。
木々の紅葉に目を奪われても、川面に流れ行く落ち葉にはよりいっそう
魅かれるのは日本人が持っている美しさへの独特の憧れでしょうか。
立田姫手向くる神のあればこそ秋の木の葉の幣(ぬさ)と散るらめ
古今集 かねみのおおきみ
平安時代の貴族の衣裳、襲*かさね*の色目は表と裏の色で
様々な配色の妙を楽しむ優美な工夫がありました。
自然に対する畏敬と憧れの思いを込めたものであったのでしょう。
紅葉がさねの色目にはたくさんの濃き、薄きの紅の組み合わせが
創られ、その色の範疇はとめどもなく広げられていきました。
赤、紅は平安の人々にとっては特別な神秘的な色であったのでしょう。
枕草子には清少納言がお仕えする中宮定子さまの紅に染められたお姿を
その美しさ、可憐さ、清らかさを指先の紅から白い頬、流れ落ちる黒髪、
紅の唐衣などを記しながらあふれるような尊敬の眼差しで讃えています。
小さな小さな一枚の紅い葉っぱが寄り集まって野山を錦に飾り、川を染め
人々の情を動かし紅という色に魂が宿り、自然と人とが一つになって
計り知れない深い美の世界を創りだしてきた日本の歴史に限りはありません。
s・y
今日の一枚 「松姫」 宮下壽紀 肉筆
松姫は武田信玄の四番目のお姫さまです。美しく心優しい方ですって。
夢からふと我に返ると姫さまはいつの間にか足早に歩みを進めています。
「お待ちになって。」とその艶やかな裳裾を思わず引いて
お名残を惜しみたくなるこの秋は幻だったのでしょうか。
ちはやぶる神世も聞かずたつたがはから紅にみづくくるとは
業平
都の西、生駒の龍田山とふもとに流れる龍田川は
今も紅葉の名所です。
木々の紅葉に目を奪われても、川面に流れ行く落ち葉にはよりいっそう
魅かれるのは日本人が持っている美しさへの独特の憧れでしょうか。
立田姫手向くる神のあればこそ秋の木の葉の幣(ぬさ)と散るらめ
古今集 かねみのおおきみ
平安時代の貴族の衣裳、襲*かさね*の色目は表と裏の色で
様々な配色の妙を楽しむ優美な工夫がありました。
自然に対する畏敬と憧れの思いを込めたものであったのでしょう。
紅葉がさねの色目にはたくさんの濃き、薄きの紅の組み合わせが
創られ、その色の範疇はとめどもなく広げられていきました。
赤、紅は平安の人々にとっては特別な神秘的な色であったのでしょう。
枕草子には清少納言がお仕えする中宮定子さまの紅に染められたお姿を
その美しさ、可憐さ、清らかさを指先の紅から白い頬、流れ落ちる黒髪、
紅の唐衣などを記しながらあふれるような尊敬の眼差しで讃えています。
小さな小さな一枚の紅い葉っぱが寄り集まって野山を錦に飾り、川を染め
人々の情を動かし紅という色に魂が宿り、自然と人とが一つになって
計り知れない深い美の世界を創りだしてきた日本の歴史に限りはありません。
s・y
今日の一枚 「松姫」 宮下壽紀 肉筆
松姫は武田信玄の四番目のお姫さまです。美しく心優しい方ですって。