石畳の坂道を登って、街並みや港が見渡せる高台。
寮はそんな所にあった。
僕らは多感な時期をそこで六ヵ年過ごした。
やっと手に入れたウォークマンで音楽を聞き流しながら、僕は図書館室で本をあさる休日をすごしている。
当時、僕の愛読書は多岐にわたった。ルドルフ・シュタイナーやコリン・ウィルソンの「アウトサイダー」を読み、坂口安吾をつまみに金子光春に泥酔した。
ウィリム・バロウズのサイバーパンクが最先端で、SF小説で知ったシュミッツやアン・マキャフリーで想像力を膨らます。
夏目漱石や鴎外の娘、森茉里が好きだった。懐に「イリュージョン」を持ち歩く。
そうして、コナン・ドイル。
ああ、「シャーロック・ホームズの冒険」
誰もいない事を確認しつつ、窓際で煙草に灯をつける。
一服している僕は、中庭の木陰で動く友人の影にきずいた。
「獣医になりたいんだ」
少年だった彼は動物が大好きだった。
昆虫の採集に余念がなかった彼は、暑い日差しの中、今日も宝物を探して地面を掘り返していた。声をかけると、本ばっかり読んでんじゃないぞ~、と軽く手を振った。
ジャコ・パストリアスのカセットテープを聴いていた僕を彼がどついた。
大物だ!見ろよ
友人の指先は土がついた蝉の抜け殻を自慢げに掲げていた。
それ、どうすんの?
おまえ、文字で遊んでどうするんだ?
まあ、彼の云う通りだ。
蝉の抜け殻を探すのも、本で夢を見るのも同じことだ。
時間をつぶすのに丁度いい。
意味なんか無かった。思春期のていたらく。
久しぶりにかって少年だった彼と飲んだ。
髭をはやして長髪だった。
仕事場で大丈夫か?と尋ねると、誰も文句いわないんだ、と云った。
彼は獣医にはならなかった。
彼の横には婚約者だという、素敵な女性が笑顔で微笑んでいた。
蝉の抜け殻、って覚えてるか?
おぼえているさ、今は取らないけど。
変わらない。
意味なんてない。今も。
ただ好きなだけ
蝉の抜け殻
石畳の坂の上
それ、どうすんの?
かつて呟いた自分自身の言葉がやけに痛い
寮はそんな所にあった。
僕らは多感な時期をそこで六ヵ年過ごした。
やっと手に入れたウォークマンで音楽を聞き流しながら、僕は図書館室で本をあさる休日をすごしている。
当時、僕の愛読書は多岐にわたった。ルドルフ・シュタイナーやコリン・ウィルソンの「アウトサイダー」を読み、坂口安吾をつまみに金子光春に泥酔した。
ウィリム・バロウズのサイバーパンクが最先端で、SF小説で知ったシュミッツやアン・マキャフリーで想像力を膨らます。
夏目漱石や鴎外の娘、森茉里が好きだった。懐に「イリュージョン」を持ち歩く。
そうして、コナン・ドイル。
ああ、「シャーロック・ホームズの冒険」
誰もいない事を確認しつつ、窓際で煙草に灯をつける。
一服している僕は、中庭の木陰で動く友人の影にきずいた。
「獣医になりたいんだ」
少年だった彼は動物が大好きだった。
昆虫の採集に余念がなかった彼は、暑い日差しの中、今日も宝物を探して地面を掘り返していた。声をかけると、本ばっかり読んでんじゃないぞ~、と軽く手を振った。
ジャコ・パストリアスのカセットテープを聴いていた僕を彼がどついた。
大物だ!見ろよ
友人の指先は土がついた蝉の抜け殻を自慢げに掲げていた。
それ、どうすんの?
おまえ、文字で遊んでどうするんだ?
まあ、彼の云う通りだ。
蝉の抜け殻を探すのも、本で夢を見るのも同じことだ。
時間をつぶすのに丁度いい。
意味なんか無かった。思春期のていたらく。
久しぶりにかって少年だった彼と飲んだ。
髭をはやして長髪だった。
仕事場で大丈夫か?と尋ねると、誰も文句いわないんだ、と云った。
彼は獣医にはならなかった。
彼の横には婚約者だという、素敵な女性が笑顔で微笑んでいた。
蝉の抜け殻、って覚えてるか?
おぼえているさ、今は取らないけど。
変わらない。
意味なんてない。今も。
ただ好きなだけ
蝉の抜け殻
石畳の坂の上
それ、どうすんの?
かつて呟いた自分自身の言葉がやけに痛い
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます