眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

雨の日

2024-04-02 | 
君の昔を知らない
 薄明の朝缶ビールを片手に庭の草木に水をまいた
  水をまき終えるとワインの瓶を引っ張り出してきて
   縁側でお日様の陽光を浴びながら飲酒した
    朝ご飯に何が適当なのか今日一日をどう過ごそうか
     答えがなかなか見つからないのでワインで酩酊した朝の時刻
      僕はそっと煙草に火を点けた
       白い煙が消えゆく記憶の様に空に消失してゆく
        たまらなく時間だけが残された

        少女は煙草をくわえてバーボンを舐めている
         煙草を吸いながらウイスキーを飲むと精神が解放されるの
          彼女はそう独り言の様に呟いた
           ポンチョに落ちた白い灰をぱたぱたと叩いて落とし
            グラスに残ったウイスキーを一息で飲み干した
             それから立ち上がってギターケースの中から楽器を取り出した
              緑色のソファーに座り丁寧に調弦にいそしんだ
               僕はワインの残りを舐めながら
                調弦する少女と楽器のペグをぼんやり眺めていた
                 飽きもせず眺めていた              

                  調弦が安定すると少女は僕を見つめ不思議そうに尋ねた

                   どうしてあなたは楽器を出さないの?

                    あまり楽器を弾く気になれないんだ。なんだかね。

                     ね、あなた音楽好き?

                      もちろん。

                       それじゃあ今日は私が弾いてあげる。
    
                        そう云って少女は「シンプリシタス」を弾いた
                         僕は黙って彼女の演奏に耳を傾けていた
                          ワインの酔いと少女のギターで少しだけ気持ちよくなれた

                           街は高い城壁で囲まれ
                            街の外の世界と遮断され一体何年の月日が流れただろう
                             僕らは朝起きると珈琲を沸かし
                              お気に入りのレコードを古臭いプレーヤーで一日中流した
                               昔気質のレコードショップの様に古臭い音楽が飽和した
        
                               ジョンダウランド、バッハ、ショパン、アランホールズワース&ソフトマシーン、ジャコパストリアス
                                ジョーパス。ジャンゴラインハルト。そんな感じだ

                                 そらから僕等は珈琲を沸かし酔い覚ましに飲んだ

                                  クッキーを齧りながら少女は語り始めた

                                   魂はいまだ旅の途中なの

                                    その中には嬉しいこと悲しいこと

                                     望むこと望まざることがあるのよ

                                     私たちは生まれる前からこの旅を続けているの

                                    だから心配しないで

                                    過去も未来もすべてがこの瞬間に起因しているの

                                  だから

                                 心配しないで

                                ご飯をしっかり食べてぐっすり寝て朝きちんと起きるのよ

                               自分が大切にしている者にもう一度向き合うの

                              毎日を丁寧に生きるの

                             それが暮らしよ。

                            僕等はカーボーイジャンキーズのアルバムを流した

                           窓の外では雨が降り出した

                          しとしと

                         しとしと

                        誰かの涙の様に
















 

  
       
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