眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

前髪

2013-06-20 | 
僕はいつか僕を繰り返すだろう
 動かないラジオで音楽と戯れ
  深夜2時に夢を見るのだ
   夢の中で
    君は君で
     僕は僕で
      音楽は甘美で優しかった
       まるで水面に降る霧雨の様に

       僕等は忘れてしまった


       いや


        僕だけが忘れてしまったのだ
         時間の流れが速すぎる
        あの一瞬が記憶になってゆく

       微熱が続いているようだね
      先生が聴診器をかたずけながら忠告する

     個室の部屋で白いシーツに包まり
    ただラジオを流した
   愚らないおしゃべりと
  食べ残しのショートケーキの様な音楽が垂れ流された
 紙袋から解熱剤を出して
隠して置いたワインで飲み干した

頭痛が止まない
 眠れない夜と戯れた
  浅い眠りの明け方に君は訪れる
   あの時のままだ
    憐れむ様な視線で僕を眺め
     長い前髪に隠れた表情は
      たぶん哀しげだった様に想う
       君の視線はいつも前髪に隠れて
        何を見つめていたのか分からなかった
         今の僕を見て
          君はどんな表情をするのだろ
       
          ね

         ごめんね

        君はどうして此処にいないの

       君の不在が君の存在を優しく包み込む

      頭痛が止まない
     氷を齧った
    長すぎる前髪
   僕は僕を繰り返す
  君を探し続ける
 緑の草原をただ歩き続ける

  行こう
   
   黒猫のハルシオンが呟く

    全ては
     全ての事象は
      ひと時であり久遠なんだ
       その一瞬を忘れないで
      永遠の概念に惑わされないで

         行こう
        旅を続けるんだ

         だから僕は眠る
          消え去ってしまった
           君と僕の記憶の断片をプレパラートに乗せ
            理科室の顕微鏡で観察し続ける夏休み 
             永遠の夏休み
              セミの鳴き声が止まない

              たくさん汗をかいて
             飛び起きて
            やっぱり僕は泣いていた
           お日さまの下で眠る僕
          遮光したカーテンの向こう側で
         世界が今日を厳かに始める
        地球が自転し公転する
        
      チャールズ・ラトゥジ・ドジソンが
     池の真中のボートの中で
    アリス・リデルにお話を聴かせる
   チャシャ猫が微笑み光の加減で
  水面が鏡のように現存在を写し出す

 切り取られた君の写真 

  長すぎる前髪

   記憶の残渣


    永遠の夏休み


     前髪の記憶




















       

          
コメント (4)
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