赤い靴
2011-06-04 | 詩
あとどれくらい寒さに耐えられるのだろう?
広い公園の水の無い噴水
サンドウィッチをかじり
白い鳩にパン屑をまいた
朝早い空気は白い息をくれた
遠い国を想う
赤い靴を履いた少女が辿り着いた地平は
案外とこんな場所かもしれない
異人さんに連れられて
横浜の波止場から船に乗ったのだ
スパニッシュ系の女性が僕に一瞥をくれ
浮浪者の煙突工を見る
19世紀の意識で嘲笑する
侮蔑になれることは
しがない旅行者の必須事項
紙袋の安ワインを煽った
公園のベンチの行き場の無い哀しさ
それすらも自身で選び取った人生
ふと灰色の空を眺めていると
かすれた歌声が流れた
振り向くと噴水の反対側で女の子が
その体よりも大きなギターを抱えて口ずさんでいた
華奢な体とショートカットの茶色い髪は
彼女の年齢を不思議なくらいわからなくした
アルペジオでそうっとギターを弾き
訳のわからない即興のフランス語で言葉を紡ぐ
人気のほとんどない公園の朝
女性は歌い続け僕はワインを胃袋に流し込んだ
酔いどれの僕は口笛を吹いてメロデイーをつけた
彼女がきずいて微笑んだ
僕らは飽きもせず音楽を紡いだ
アナタは何処から来たの?
知らない。でもいまは此処にいる。
チャイニーズ?
さあ?
教えたくない事情は誰にでもあるわ、国を捨てたの?
わからない。ただ此処にいる、ただそれだけ。
彼女は煙草を僕にすすめ
自分も一本吸い込んだ
ね、あなたの国の歌を歌ってよ。
忘れないうちに。
僕はギターを抱えてひとしきり考えた
そうしてこう歌い始めた
「赤い靴
履いてた女の子
異人さんに連れられて行っちゃった」
本当は赤い靴の少女は異国へは渡らなかった
彼女は敬虔なクリスチャンに育てられ
そうして病の為に若くして亡くなったのが真相だ
それでも
少女は異人さんにつれられていったのだ
僕は夢見夢想する
この公園でギターを抱えた少女は
赤い靴の女の子ではなかったのだろうか?
茶色の瞳が僕を見つめる
あなたは国を忘れたの?
やがて朝日が昇るだろう
すこしだけ暖かくなる筈だ
そうして
そうして少女の幻影も
まるで朝霧の如くに消え去るのだ
まるで何もかもが始めから存在ばどしていなかったような
公園の水の無い噴水の哀しみに向けて
広い公園の水の無い噴水
サンドウィッチをかじり
白い鳩にパン屑をまいた
朝早い空気は白い息をくれた
遠い国を想う
赤い靴を履いた少女が辿り着いた地平は
案外とこんな場所かもしれない
異人さんに連れられて
横浜の波止場から船に乗ったのだ
スパニッシュ系の女性が僕に一瞥をくれ
浮浪者の煙突工を見る
19世紀の意識で嘲笑する
侮蔑になれることは
しがない旅行者の必須事項
紙袋の安ワインを煽った
公園のベンチの行き場の無い哀しさ
それすらも自身で選び取った人生
ふと灰色の空を眺めていると
かすれた歌声が流れた
振り向くと噴水の反対側で女の子が
その体よりも大きなギターを抱えて口ずさんでいた
華奢な体とショートカットの茶色い髪は
彼女の年齢を不思議なくらいわからなくした
アルペジオでそうっとギターを弾き
訳のわからない即興のフランス語で言葉を紡ぐ
人気のほとんどない公園の朝
女性は歌い続け僕はワインを胃袋に流し込んだ
酔いどれの僕は口笛を吹いてメロデイーをつけた
彼女がきずいて微笑んだ
僕らは飽きもせず音楽を紡いだ
アナタは何処から来たの?
知らない。でもいまは此処にいる。
チャイニーズ?
さあ?
教えたくない事情は誰にでもあるわ、国を捨てたの?
わからない。ただ此処にいる、ただそれだけ。
彼女は煙草を僕にすすめ
自分も一本吸い込んだ
ね、あなたの国の歌を歌ってよ。
忘れないうちに。
僕はギターを抱えてひとしきり考えた
そうしてこう歌い始めた
「赤い靴
履いてた女の子
異人さんに連れられて行っちゃった」
本当は赤い靴の少女は異国へは渡らなかった
彼女は敬虔なクリスチャンに育てられ
そうして病の為に若くして亡くなったのが真相だ
それでも
少女は異人さんにつれられていったのだ
僕は夢見夢想する
この公園でギターを抱えた少女は
赤い靴の女の子ではなかったのだろうか?
茶色の瞳が僕を見つめる
あなたは国を忘れたの?
やがて朝日が昇るだろう
すこしだけ暖かくなる筈だ
そうして
そうして少女の幻影も
まるで朝霧の如くに消え去るのだ
まるで何もかもが始めから存在ばどしていなかったような
公園の水の無い噴水の哀しみに向けて