眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

背景

2008-06-21 | 
君の背景を誰に尋ねよう?
 昔馴染みの友人達か
  あるいは
   ジャグリングの得意なあの大道芸人に
    コンクリートの灰色の単色の風景で
     言葉を模索する
      彼が空中に投げる物は世界そのものだ
       呼吸する瞬間さえはばかれる 
        子供達が噴水の前に集まってきた
         まるで笛を奏でて子供達を連れ去った
          あの異国の伝説のように

          事象は壊れやすいガラス細工のように
         記憶の階層の積み重ね
        甘い苦手なミルフィーユのように
       食べるたびにぽろぽろとこぼれた
      食べ終わると
     食べ残した記憶の欠片が残った
    影も形も無い
   案外そんなものだろう
  記憶は曖昧だ
 あの学校の図書室の匂いだけを憶えている

    
          運動会
           修学旅行
            あの喧騒の学園祭
             グランドに伸びる夕映え
              図書室の窓から風景をデッサンした
               みんな遠い夢のようだ


レオナール・フジタの描く白い裸体像
 筆使いの繊細さときたら
  余りに繊細で
   僕は美術館の常設室で飽きもせず絵に見とれた
    きっかり1時間絵の前でたたずみ
     気に入りの珈琲屋で
      暖かな珈琲を飲んだ
       バッハしか流さない店の薄暗い照明で
        シャコンヌを聴いていた

         背景を失ったこの街で
          永遠に削除された風景を想う
           街並みは変わった

            昼間から酔いどれて

             昼寝したベンチも消えてなくなった

              僕の背景も消えてゆく

               背景の無い事象は
                なんだか不安定な卵の様だ

                コロンブスじゃない僕は永遠に卵を机の上に立てることが出来ない

            そうしていつものように煙草を咥えて
             この難題に四苦八苦するのだ

              背景の消失

             図書室の窓の風景もやがて





 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする