４ 新型ロボットソムリエ １４０ページ目

【１４０ページ】


博士　　　　久美、３人でこのワインを飲もう。

　　　　　　このワインを抜栓し、３つのグラスに注いでください。

久美　　　　はい、博士。


新型ロボットソムリエは、まるで人間のソムリエのように鮮やかにワインを開け、グラス

に注いだ。


博士　　　　　久美、このワインをテイスティングして、ワイン名を当ててください。

久美　　　　　はい、博士。

　　　　　　　このワインは、サンシャンのほんまにおいしい酸化防止剤無添加白ワイン

　　　　　　　だと思います。

専属ソムリエ　断定できないの？

博士　　　　　久美、どうして断定できないの？

久美　　　　　このように酸化が進み品質の劣化したワインを飲んだことがありません。

　　　　　　　以前飲んだことのあるほんまにおいしい酸化防止剤無添加白ワインが、

　　　　　　　酸化したらこのようなワインになるのではと推測したのです。

　　　　　　　正解の確率は９９％です。

博士　　　　　久美の答えで正解だ。

　　　　　　　久美の推理はすばらしいよ。

久美　　　　　ありがとうございます。

専属ソムリエ　博士、驚きましたよ。

博士　　　　　それでは、もう一本テイスティングさせよう。



　※サンシャンのほんまにおいしい酸化防止剤無添加白ワインは実在しません。


　　　　　　　　

　　　　　　
　　　　

４ 新型ロボットソムリエ １３９ページ目

【１３９ページ目】　


専属ソムリエ　　　おまけの性能で気になるのですが？

博士　　　　　　　何だね？

専属ソムリエ　　　いえ、それはいいです。

博士　　　　　　　気になることをはっきり言いなさいよ。

専属ソムリエ　　　ボディはどのようになっているのですか？

博士　　　　　　　外見上は、女性の体といっしょだよ。

専属ソムリエ　　　もし痴漢や変質者が女性と見間違えて、体を触ろうとしたら？

博士　　　　　　　相手の手から避けるようにインプットされている。

専属ソムリエ　　　それでも体を触られたり、抱きつかれた時は？

博士　　　　　　　一定時間を経過すると、変身するようになっている。

　　　　　　　　　たぶん相手は、腰を抜かすだろう。

専属ソムリエ　　　余計な質問をしてすいません。

博士　　　　　　　いや。

　　　　　　　　　さて、新型ロボットソムリエの推測能力を試してみよう。

　　　　　　　　　これは、製造から一年経った酸化防止剤無添加ワインだ。

　　　　　　　　　一年前のデータはインプットされている。

専属ソムリエ　　　酸化したワインに対してどのような反応をするか試すのですね？

博士　　　　　　　そうだ。

　　　　　　　　　実験では、推理がうまくいっている。

　　　　　　　　　しかし新型ロボットソムリエの完成品としては、初の試みだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　

４ 新型ロボットソムリエ １３８ページ目

【１３８ページ】


博士　　　　　　　新型ロボットソムリエが完成したよ。

専属ソムリエ　　　美人の方だったので、誰かなと思っていたのですよ。

博士　　　　　　　今回の改良点は、ワインのデータを入力すると、ワインの時間の経過

　　　　　　　　　によって、データ数値の変化を推測する能力を持つようにしたことだ。

専属ソムリエ　　　プライベートワイン会で、和音さんに指摘された部分ですね？

博士　　　　　　　そうだ。

　　　　　　　　　いくら膨大なワインのデータを持っていても、ワインは熟成によって

　　　　　　　　　変化するのですぐ役に立たなくなると言われたのだ。

専属ソムリエ　　　それと同じ食べものや飲み物でも状況によって感じ方が違うと言って

　　　　　　　　　ましたね？

博士　　　　　　　その点ももちろん改良したよ。

　　　　　　　　　天候、気温、場所、人、行事、料理等とワインの感じ方の関連性の

　　　　　　　　　データを新たに入力したよ。

専属ソムリエ　　　私なんか、とても太刀打ちできませんな？

博士　　　　　　　それに、ソムリエとしての会話能力とサービスの能力を持たせたの

　　　　　　　　　です。

専属ソムリエ　　　さらに外見は人とそっくりだ。

博士　　　　　　　人型ロボット用の人工皮膚が開発されたからね。

専属ソムリエ　　　そしてモデル顔負けの容姿ですね？

博士　　　　　　　美貌は、おまけの機能だよ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　

４ イタリアワインの勉強 ⑥ １３７ページ目

【１３７ページ】


　レオヴィル公爵の広大なシャトーから分かれたレオヴィルの名前がつくワインは三つあ

る。

　彼らは、シャトー・レオヴィル・バルトンの後、シャトー・レオヴィル・ポアフェレを

飲み、最後にシャトー・レオヴィル・ラス・カーズを飲んだ。


良子　　　レオヴィル３兄弟を飲み比べられて幸せ！

　　　　　明日、仕事お休みなの！

和音　　　それじゃ、イタリアワインでもう少し飲もうか？

良子　　　家でくつろぎながら飲みたいわ！　

和音　　　マスター、バローロとバルバレスコのボトル持ち帰りします。

４ イタリアワインの勉強 ⑥ １３６ページ目

【１３６ページ】


良子　　　　　濃縮した果実味に、酸とタンニンのバランスの良いワインだわ！

マスター　　　ワインはこれです。

良子　　　　　サイのラベルだわ！　

　　　　　　　ワイン名は、カ・ディ・ピアン・バルベーラ・ダスティ２００５年。

　　　　　　　マスターありがとう！勉強になったわ！

和音　　　　　マスター、動物のラベルのフランスワインを田辺さんに！


マスターは、フランスワインを抜栓し、グラスに注いだ。


和音　　　　　良子さん、ワイン名を当ててみて！

良子　　　　　ヒントは動物のラベルのワインね？

　　　　　　　カベルネ・ソーヴィニヨンの力強い味わいだわ！

　　　　　　　ボルドーのメドック地区のワインだと思うわ！

和音　　　　　ワイン名判った？

良子　　　　　メドック地区サンジュリアン村のシャトー・レオヴィル・ラス・カーズ

　　　　　　　のラベルにはライオンが描かれているわ！

　　　　　　　このワインだと思う。

和音　　　　　マスター、ワインを田辺さんに見せてあげて！　　

良子　　　　　あっ、シャトー・レオヴィル・バルトンだわ！

　　　　　　　マスター、動物のラベルのワインじゃないわ！

マスター　　　和さんから、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズを田辺さんに飲ませて

　　　　　　　あげてと頼まれていたのですが、ちょっといたずら心からレオヴィル公爵

　　　　　　　がもっていた広大なシャトーから分かれたバルトンを出したのです。